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2019年 本屋大賞決定!大賞・ノミネート作品をまるごと紹介!


更新日:2019/4/10

【2019年 本屋大賞】ノミネート10作品をまるごと紹介!

2004年にはじまった本屋大賞。全国の書店員の投票によって、ノミネート作品、大賞作品が選ばれます。

2019年4月9日に、本屋大賞が発表されました!
大賞は瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』。おめでとうございます!

日々本に触れる機会の多い書店員が選んだ作品はどんな作品なのか? 大賞、ノミネート10作品を一挙にご紹介します。

 

2019年 本屋大賞!!
『そして、バトンは渡された』

『そして、バトンは渡された』表紙

そして、バトンは渡された
瀬尾まいこ(著)、文藝春秋

幼いころに母親を亡くした17歳の優子。大人の事情で3人の父親と2人の母親を持ち、名字も何度も変わっているが、優子はどの親のことも愛していた。
そんな優子と、それぞれの家族の交流を描く温かな物語。

 

人は置かれた状況だけを見て、勝手に判断してしまうことも少なくありません。
しかしこの物語の主人公である優子は、何度親が変わろうとも、自分を「不幸」と思ったことはありません。どの親とも真摯に向き合い、ともに過ごしてきたからです。

血縁だけではない、人との深い絆を感じられる1冊。家族とは、血の繋がりとは、と考えさせられることでしょう。

 

美しい日々を紡ぐ物語
『愛なき世界』

『愛なき世界』表紙

愛なき世界
三浦しをん(著)、中央公論新社

とある洋食屋で働く見習いの藤丸は、店の利用客で植物学研究者の本村に恋をした。ところがこの彼女、人間よりシロイヌナズナの研究の方が好きだった!
恋のライバルはまさかの植物。果たして藤丸の恋の行方は……?

 

感情を持たない“植物”に愛を捧げ、研究者を目指す本村。そしてそんな彼女に恋をした藤丸の物語です。

タイトルだけ見ると冷たい印象を受けるかもしれません。しかし一度読めば、美しくも痛快な内容にギャップを感じ、作者の作品に対する愛情も感じられるでしょう。

乾いた心を潤したいときにおすすめの作品です。

 

愛した男は誰だったのか……
『ある男』

『ある男』表紙

ある男
平野啓一郎(著)、文藝春秋

過去に依頼者だった女性から、「ある男」についての奇妙な相談を持ち掛けられた弁護士の城戸。
依頼者の里枝は再婚して幸せな家庭を築いていたが、あるとき突然夫が亡くなった。さらにそれをきっかけに、実は夫の名前や過去が別人のものだったと知ったのだと言う。

 

「愛していた夫が、実は別人だった」という、とんでもない相談から物語は始まります。
なぜ夫は過去を変えて生きたのか、どのようにして過去を変えたのか? そして「ある男」とは一体何者なのか……。

物語をひも解く楽しさと、死生観、愛について掘り下げられた深いテーマを持った作品です。

 

生きた証は生き続ける
『さざなみのよる』

『さざなみのよる』表紙

さざなみのよる
木皿泉(著)、河出書房新社

43歳で亡くなった小国ナスミ。彼女の人生と、彼女の人生に関わった人々の奇跡を描く連作短編集。

 

人が無意識に避けてしまう「死」についての作品です。

この作品がただの死生観を語った物語と違うのは、死後の世界を温かく、そして美しく描いているところ。

将来の自分の在り方、亡くなった人のこと、身近な死について触れるのは怖いと思っている人にこそ読んでほしいと思います。
本当に大事なもの、本当に大事なことを見つけられるかもしれません。

 

幻の本の先には……
『熱帯』

『熱帯』表紙

熱帯
森見登美彦(著)、文藝春秋

「汝にかかわりなきことを語るなかれ――。」
そんな警句ではじまる幻の本『熱帯』に惹かれた森見登美彦氏。

彼は作品を追及するうちに、沈黙読書会という場所である女性に出会う。『熱帯』を知る彼女は、この本を最後まで読んだ人はいないと言うのだった……。

 

小説の中で、タイトルにもなっている本を探し求めるという一風変わった作品。
著者自身も「怪作だ」というこの物語は、不思議な雰囲気を漂わせています。現実と虚構の区別を、あなたはできるでしょうか?

本の中の世界に迷い込んだような感覚を味わえますよ。

 

人生とはなんと豊かなものだろう
『ひと』

『ひと』表紙

ひと
小野寺史宜(著)、祥伝社

高校2年生のときに、猫を避けたがために自損事故で父を亡くした僕は、大学生になったときに母も亡くした。
1人ぼっちになり、ひたすらぼんやりトボトボ外を歩き続ける。ある日、空腹のため買おうとしたコロッケを、知らないおばあさんに譲るが……。

 

動き出せずにいた日々のなか、ぼーっと歩いていたときに偶然出会ったコロッケ屋。そのコロッケ屋によって、「僕」の人生は大きく変わっていきます。

人生の中には、抜け出せないと錯覚するほどの辛いできごとが多くあるものです。
しかし、人生は苦しいことだけではない、歩いていると光も見えてくる、そんな人生の一幕が詰まった感動の作品です。一歩踏み出す勇気をくれることでしょう。

 

社会で生きることの意味とは
『ひとつむぎの手』

『ひとつむぎの手』表紙

ひとつむぎの手
知念実希人(著)、新潮社

医療現場での激務をこなしている医師の平良。

あるとき平良は、研修医3人を指導し、うち2人を心臓外科に引き込むよう医局の権力者である赤石に指示される。一方で、赤石の論文データねつ造に関する告発文の犯人探しも任されて……。

 

自身も医師であり、ミステリー作家としてデビューした著者が描くのは、等身大の医療現場。過酷な現場の様子を赤裸々に語っています。
さらに医師の話だけに収まらず、人が抱える葛藤や悩み、そして人間関係がうまく描写されたヒューマンストーリーになっています。

不正を許さず、患者を第一に考える平良の行動に、きっと胸をうたれるはず。

 

実際にあったかのような怖い話
『火のないところに煙は』

『火のないところに煙は』表紙

火のないところに煙は
芦沢央(著)、新潮社

短編の怪談を書いてみないかと依頼された著者。
神楽坂が舞台だったことに不思議な運命を感じた著者は、一度は断ろうとしたその依頼に向き合うことを決める。

 

まるで実際の体験談のように語られていくことから、著者がリアルに体験したことなのでは? と話題にもなった本書。

本作は、神楽坂を舞台に日常に潜む5つの恐怖の物語が収録されています。
最後の章を読み終えたあとの、連続性への気づきが面白いところです。ぜひ、暑い夏の日に読んでみてくださいね。

 

2人で2つの人生
『フーガはユーガ』

『フーガはユーガ』表紙

フーガはユーガ
伊坂幸太郎(著)、実業之日本社

あの男に殴られる、5歳のもう1人の僕。
「代わってあげたい」そんな思いが叶ったのか不思議なことが起きた。

 

父親から虐待されてきた、双子の風雅と優雅。彼らは誕生日の1日だけ、2時間ごとに瞬間移動で互いに入れ替われる特殊能力を持っていることに気付きます。
そんな2人が、父親をはじめとする「悪」と戦う物語です。

双子の置かれていたあまりに悲惨な境遇からシリアスな内容も多いですが、軽妙な文章で最後まで読み切れると思います。まさかの展開と結末に驚愕すること間違いなしです。

 

直木賞候補作にもなった作品
『ベルリンは晴れているか』

『ベルリンは晴れているか』表紙

ベルリンは晴れているか
深緑野分(著)、筑摩書房

舞台は、第二次大戦後のドイツのベルリン、ソビエト連邦とアメリカやイギリスをはじめとする国々が対立する時代。

そんな中で、ソ連のエリアでアメリカ製の歯磨き粉を使った男が不審死する。彼を恩人とするドイツ人の少女・アウグステは、疑われながらも食堂で働いていたが……。

 

恩人の突然の死から、その死を伝えるべく彼の甥っ子を探すことになったアウグステ。当時の時代背景とともに、過酷な旅が描かれます。

恩人はなぜ死んでしまったのか? ミステリー要素と主人公の回想が交錯した、巧みなストーリー展開に目が離せませんよ。

 

本屋大賞ノミネート作品に注目!

今回ご紹介した本屋大賞ノミネート作品は、書店員が私たちに「読んでほしい」と思い選んだ作品です。

どんな作品を読もうか悩んでいる方は、本屋さんのおすすめする作品を読んでみてはいかがでしょうか? 今まで読んだことのなかったジャンルの作品にも出会えるかもしれませんよ。

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