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中島らもとお酒と文学|心にしみる優しさと哀しさ。


みなさんは中島らもさんを知っていますか?

作家をはじめ、ミュージシャンや俳優など、幅広くその才能を発揮した中島らもさんは、一方でアルコール中毒によって破天荒な私生活を送りました。

亡くなってから15年ほどの月日が経った今もなお、ファンの心を惹き付けてやまない中島らもさんの代表作を、お酒と文学に焦点を当ててご紹介します。

 

『今夜、すべてのバーで』

今夜、すべてのバーで
講談社

アルコール依存症で入院する主人公の小島容が、治療を受けてから退院するまでの物語。
個性的な人々との交流にユーモアを交えながら、アルコール中毒についてはリアルに描いています。

自分の実体験をもとに書いているだけに、アルコール依存になってしまう人の弱さに対する優しさが感じられるこの作品。

「退屈がないところにアルコールがはいり込むすきはない。アルコールは空白の時間を嗅ぎ当てると迷わずそこにすべり込んでくる。」など、考えさせられる言葉がそこかしこに見られ、はっとさせられます。

 

アルコール依存とはどういうものか、どのように進行していくのか、ということが調べ抜かれた上で書かれているので、実際にアルコール依存で悩んでいる人やそのご家族にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。

 

『頭の中がカユいんだ』

頭の中がカユいんだ
集英社ほか

ややワケありな主人公「僕」は、突然妻と子をおいて自らが勤める広告代理店に寝泊まりするように。
テレビ局をはじめ、いろいろな業界人と大阪を徘徊し、刹那的に生きる「僕」の毎日が描かれています。

 

「東住吉のぶっこわし屋」「私が一番モテた日」「クェ・ジュ島の夜、聖路加病院の朝」といった意味深なタイトルが並ぶ、中島らもさんの最初の短編小説集。この中の1作品が、表題作の「頭の中がカユいんだ」です。

アルコールと睡眠薬でハイな状態になりながら一気に書き上げたと言われているこの作品。そんな中で書いた、現実と妄想が入り交じった、ぐにゃぐにゃとした物語の世界感に引き込まれてしまいます。

 

『アマニタ・パンセリナ』

アマニタ・パンセリナ
集英社

この作品は、睡眠薬、幻覚サボテン、咳止めシロップまで、自らの体験や昔の作家や名著なども織り交ぜながら、ドラッグとはどのようなものなのかについて迫ります。

 

ドラッグと聞くと、やはり「危険」というイメージがありますよね。合法であるお酒も依存してしまえば、ドラッグ依存と変わらないのかもしれません。

中島らもさんは、自らの体験から「人はなぜ快楽を求め、ドラッグに溺れるのか」を語っています。

ドラッグ=危険と決めつけて何も知ろうとしないのではなく、人にとってドラッグとはどのような意味を持つのかを考えるきっかけとして、この本を読むと良いかもしれません。

 

『ガダラの豚』

ガダラの豚
集英社ほか

中島らもさんの代表的傑作の一つが、この大長編物語『ガダラの豚』です。

主人公の大生部多一郎は、アフリカの呪術医研究者。著書「呪術パワー・念で殺す」がベストセラーになり、テレビでも人気のタレント教授です。
一方、学会では認められていないという悩みを抱えるアルコール中毒者でもあります。

8年前にはアフリカで娘が死んでしまったという悲しい過去も。その悲しみから奥さんが新興宗教にハマってしまい……?

 

長編小説でも読者を飽きさせずにぐいぐい読ませるエンターテイメント性満載の物語になっています。

普通に楽しむこともできますが、その根底には、やはり人間の持つ「業」のようなものを考えずにはいられない作品です。

 

『ロカ』

ロカ
講談社ほか

中島らもさん、最後の未完の小説。

68歳のルカは、巨額の印税を使ってホテルで一人暮らし。Wネックのギター「ロカ」と、酒と大麻と大好きなあんこう鍋を食べて生きています。

 

ロックへの情熱がちりばめられたこの作品。
近未来の私小説といわれるこの小説は、中島らもさんが将来なりたかった「ロックなおやじさん」を描いていると言われています。

中島らもさんのファンはもちろんのこと、ロックが好きな人も楽しめる物語です。

 

『異人伝 中島らものやり口』

異人伝 中島らものやり口
講談社ほか

2004年に52歳で亡くなった中島らもさんの、最後の作品となったのがこの『異人伝 中島らものやり口』です。

アルコール中毒が相当酷くなった時期。
己の人生を振り返りながら、お酒やクスリ、小説、芝居や音楽活動、サラリーマンやコピーライターをやっていたころのこと、家庭について語り尽くした自伝的なエッセイです。

 

泥酔状態で階段から転落し亡くなった中島さん。まるで自分がこの世からいなくなることを知っていたかの様な遺言的内容になっています。

 

中島らもさんの哀しくも優しい世界に触れてみて

中島らもさんの文学の魅力は、重度のアルコール中毒という自分の体験をもとに描いているからこそ、どうしようもない人の弱さに対する優しい視点が感じられる点です。

どの作品においてもユーモアを感じられるところも、中島らもさんの作品の魅力と言えるでしょう。

 

今回ご紹介した中島らもさんの作品

今夜、すべてのバーで
講談社

頭の中がカユいんだ
集英社ほか

アマニタ・パンセリナ
集英社

ガダラの豚
集英社ほか

ロカ
講談社ほか

異人伝 中島らものやり口
講談社ほか

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