「特殊な仕事」にまつわる小説|知的好奇心が満たされる!
更新日:2017/9/30
読者のみなさんのなかには、知的好奇心を満たすために、読書をするという人もいるのではないでしょうか?
今回のテーマは、普段耳にすることのない『特殊な仕事』にまつわる小説。
あまり知られていないお仕事をテーマにした小説を集めてみました。
世の中にはいろんな仕事がありますね。興味を持った作品はぜひ読んでみてください!
“本の表情”を作る本のデザイナー
『装幀室のおしごと。~本の表情つくりませんか?~』
範乃秋晴(著)、 KADOKAWA
この本にはどんな表紙が似合うだろう?紙の種類は、帯の有無は、中身の文字組みはどうしよう?こうして試行錯誤を繰り返して、時には編集や作家と熾烈に火花を散らせながらも、その本だけのぴったりなデザイン“本の表情”を生み出すのが『装幀家』の役割だ。それを信条に出版社の装幀室で働く本河わらべは、その男の言葉が信じられなかった。「本の内容には目を通さない主義だ。中身を読もうが読むまいが、売り上げが変わるとでも思っているのか?」(表紙裏)
「装幀家(そうていか)」をテーマにした短編集。
装幀家とは、本のデザイナーのこと。
表紙をイラストにするか写真にするか、帯やロゴのデザイン、使用する紙の種類など、1冊の本をオーダーメイドで創る仕事です。
“本の表情”を重視する主人公のわらべと、売れる装幀を作れば良いと考える巻島。2人の対立は、一読者として大変興味深い内容でした。
読者のみなさんも、一度は「表紙買い」をした経験があるでしょう。
1人でも多くの人に手に取ってもらうために奮闘する『装幀家』の仕事内容を知れる1冊ですよ。
遺体を美しく保存するエンバーマーサスペンス
『EM(エンバーミング)』
雨宮早希(著)、幻冬舎
村上美弥子は、悲惨な遺体を生きているかのように蘇らせることのできる専門技術者だ。ある日、平岡刑事からの依頼で仕事が舞い込んだ。遺体の主は一七歳の少年で、自らの肉体をナイフで十数箇所も切り裂いて自殺した。いったいなぜ?完璧な遺体の処置を終えた美弥子は連続殺人事件に遭遇し、何者かに狙われる…。傑作フィジカル・サスペンス。(表紙裏)
エンバーミング(遺体衛生保存)を行う「エンバーマー」をテーマにしたサスペンス。
エンバーミングとは、故人がまるで眠っているように、美しく遺体を保存する手法のこと。消毒や保存処理、修復などで、腐敗を防ぎ長期保存を可能にします。
火葬が主流の日本ではあまり知られていませんが、土葬で埋葬する海外諸国では「エンバーマー」はよく知られた職種です。
本書ではエンバーミングの手法が詳細に描かれていますので、きっと知的好奇心をくすぐられることでしょう。
作中、多重人格者の少年が出てきます。エキサイティングなストーリーと謎解きも一緒に楽しめる1冊です。
サッカー業界の裏方ホぺイロとは?
『ホペイロの憂鬱 JFL篇』
井上尚登(著)、 東京創元社
僕がホペイロ(roupeiro:ポルトガル語で用具係のこと)を務めるJFL所属のビッグカイト相模原は、成績不振なうえ、奇妙な出来事がわんさか起こる。その度に、クラブのみんなは雑用に追われる僕に、謎解きを押し付けてくる。選手のスパイク管理が本職なのに。J2昇格を目指すサッカークラブを舞台に、ホペイロの奮闘を描く、ほのぼの連作ミステリ。「ホペイロ坂上の事件簿」開幕。(表紙裏)
「ホペイロ」をテーマにしたミステリー短編集。
ホペイロは、サッカー選手の用具(スパイクやユニフォームなど)の手入れを行ったり、選手たちがリラックスできる環境を作るなど、サッカー界における裏方の仕事。
ホペイロの仕事内容が丁寧に描かれており、専門用語も少ないので、サッカー初心者でも楽しめる1冊です。
本書で描かれる事件は、元代表のシューズが廃棄される謎や、応援フラッグがなくなるなど、クラブの日常に即したもの。
小さな事件を解決していくストーリーは、サクサクと軽やかに読み進めることができますよ。
超深海を調査する潜水調査船パイロット
『海に降る』
朱野帰子(著)、幻冬舎
深海には美しい雪が降るんだ―。幼い頃に別れた父の言葉に導かれ、潜水調査船のパイロットを目指す深雪。ところが閉所恐怖症になり、叶いかけた夢は遠のいてしまう。失意に沈む深雪の前に現れたのは、謎の深海生物<白い糸>を追う男・高峰だった。反発しあう二人だが、運命はいつしか彼らを大冒険へといざない…。壮大かつ爽快な傑作長編。(表紙裏)
「海洋研究開発機構(JAMSTEC)の潜水調査船パイロット」をテーマにした作品。JAMSTECの全面協力がなされた本格的長編です。
超深海という未知なる世界を調査する職種。深海には見たことのないような生物が多く存在し、パイロットたちは常に恐怖と戦っています。
登場人物たちは、各々目的は違えど、夢を成し遂げるために<しんかい6500>に乗ることを目指しており、ひたむきに進む姿に心を動かされる人も多いはず。
私自身、クライマックスには大興奮してしまいました。
頭上だけでなく、足元にも広がる未知の世界。深度6500mの世界に思いを馳せることができる作品です。
特殊なお仕事小説
いかがでしょうか?知的好奇心がくすぐられた作品はありましたでしょうか?
どの作品も、職種についての知識が深まるのはもちろん、ストーリーとしても読ませるものばかりです。ぜひ手に取ってみてくださいね。
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今回ご紹介した書籍
『装幀室のおしごと。~本の表情つくりませんか?~』
範乃秋晴(著)、 KADOKAWA
『EM(エンバーミング)』
雨宮早希(著)、幻冬舎
『ホペイロの憂鬱 JFL篇』
井上尚登(著)、東京創元社
『海に降る』
朱野帰子(著)、幻冬舎