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羽田圭介さんのおすすめ小説4選 つかみどころのない傑作揃い


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2015年、お笑い芸人・又吉直樹さんと同時に芥川賞を受賞した羽田圭介さん。当時、独特でユニークなキャラクターが話題となりました。

 

羽田さんが描く作品は、多くの人が目を背けたい事実を、鋭い観察眼で切り取って作品に昇華させているのが特徴です。

作品によっては、過激でぶっ飛んだシーンもあり、感情移入が困難な作品もあります。いわゆる「奇作・怪作」も多く、読み手を選ぶ作品ではありますが、ハマると癖になる世界観です。

 

なお、刺激的な設定の作品である一方で、リアリティの高い作品であることから、読者は「これって実話?! 」と混乱し、騙されます。羽田さんのキャラクターも相まって、これって羽田さんの私小説なのでは?と勘ぐってしまうのです。そして気づきます。自分の下世話な一面に。

 

羽田さんのキャラクターと同様に、つかみどころがない作品たち。前置きが長くなってしまいましたが、ぜひ手に取ってみてください。

 

 

兄弟間にある究極の確執

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『黒冷水』河出書房新社

兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。(表紙裏)

羽田さんのデビュー作。当時、羽田さんは17歳。史上最年少での「第四〇回文藝賞」受賞でした。

本書で描かれるのは、家庭内ストーキング、兄弟間のドロドロした執着、互いへの嫌悪感、陰湿な暴力、終わらない憎しみ、復讐の連鎖……など、おどろおどろしい内容。

一般的に、女は怖い生き物だと言われます。ですが、この本を読んだ人は、きっとこう思うでしょう。「男は怖い」。

家族という関係だからこそ逃れられない世界……そして事件は起こります。

まるでホラー小説のような、嫌な読後感は読み終わった後も残ります。覚悟してお読みください。

 

 

介護が必要な祖父と、祖父との関わり方に葛藤する青年

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『スクラップ・アンド・ビルド』文藝春秋

「早う死にたか」

毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!(帯)

第153回芥川賞受賞作。

羽田圭介さんの代表作であり、羽田さんの名前を世に知らしめた作品です。

88歳の祖父の「死にたか」を聞き、祖父を尊厳死させるために奮闘する無職の孫。

私は年齢的に孫の目線で本書を読んでいましたが、視点によって大きく捉え方が変わる作品だと思います。

なんでもかんでも手を貸す『積極的介護』が、本人の生きる力を奪うという事実は、私にとって衝撃的な内容でした。

「死にたか」と言う祖父の深層心理、同居する家族の心理、ともに重く苦しいものですが、作品自体はユーモアがあり独特な読後感を味わえます。

 

 

凄絶なSMの世界を描く

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『メタモルフォシス』新潮社

その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとはー芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。(表紙裏)

「”スクラップ・アンド・ビルド”以上に、自分の名刺代わりにしたい作品です」と、著者である羽田さん本人に言わしめる作品。物議を醸す衝撃作です。

「完全な奴隷になりたい」と望む主人公。彼は、極限状態に陥らなければ見えてこない世界を見たいと渇望していました。

至高の快楽の向こう側にあるものとは? 性癖という言葉だけでは片付けられない、調教されることに快楽を感じる人達の心理描写は興味深いものでした。

グロテスクな描写も多く、読む人を選ぶ作品です。読むときにはお気を付けください。

 

 

トイレが拠点、そして癒し。

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『御不浄バトル』集英社

僕が入社したのは、悪徳ブラック企業!?過酷な労働と精神的負担で営業部員は半年で辞めていく中、事務職の僕は無難に仕事をこなし二年目に。唯一の楽しみは、会社や駅のトイレでくつろぐこと。素性不明なトイレ常連メンバーたちと静かな個室争奪戦を毎日繰り広げる。しかし、ある電話がきっかけで、日常が一気に崩れ出す。限界に達した僕は、退職を決意するが…。芥川賞作家の話題作。(表紙裏)

羽田さんには珍しいコメディ小説。

トイレの個室で食事をし、ネット掲示板に悪口を書き込む主人公の姿や、トイレの個室争奪戦など、とにかくトイレ描写が多い小説。下品で、良い意味でくだらない作風に仕上がっているので、これまでとは違った意味で読む人を選ぶ作品です。

主人公が勤める会社は、違法ギリギリのブラック企業。「自己都合」ではなく、「会社都合」で退職したいと奮闘する主人公の姿は、つい応援したくなります。

解説は、テレビでよく見る社会学者の古市憲寿さん。合わせて楽しんでくださいね。

 

 

羽田圭介さんのおすすめ作品たち

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羽田さんの作品は、読み手を選ぶ衝撃的な作品が多いです。ぜひ一度手に取ってみてください。

 


今回ご紹介した書籍

黒冷水』河出書房新社
スクラップ・アンド・ビルド』文藝春秋
メタモルフォシス』新潮社
御不浄バトル』集英社


 

羽田さんは芥川賞を受賞しました。
ところで、芥川賞にこんな裏話があるのはご存知ですか?

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。