後味が最高に悪い。絶望だけが残る小説「厭な物語」
読後感最悪。読めば気持ちは真っ暗に。だけど読むのを止められない。世界の名作からよりすぐった11のバッドエンド。(『厭な物語』帯より)
読後感、極悪。だが、それがいい!愛や涙や感動は完全排除、バッドエンド100%!!!あなたの心の傷を浄化する大好評アンソロジー。(『もっと厭な物語』帯より)
そう、タイトル通り、今回取り上げる作品は「厭な物語」が勢揃いのアンソロジー。その名もズバリ『厭な物語』(アガサ・クリスティーほか、文藝春秋)です。
湊かなえさんや真梨幸子さん、沼田まほかるさんのような”イヤミス”好きの読者や、夢野久作など怪奇な世界観がお好きな読者(ちなみに夢野久作の言葉が本書の序文に掲載されています)、ハッピーエンドの作品は物足りないという読者には自信を持ってオススメできる作品集です!
ただ、人間の”厭”な部分にフォーカスした作品であり、あまりにも救いがないため、直視したくない人もいるでしょう。私自身、家族や友人など、周囲の人には容易にすすめることができません。
好き嫌いが大きく分かれる問題作となっているので、読むときは心のコンディションにご注意ください。
有名作家たちのアンソロ『厭な物語』と『もっと厭な物語』
『厭な物語』
アガサ・クリスティーほか(著)、文藝春秋
『厭な物語』では、”ミステリの女王”アガサ・クリスティー、江戸川乱歩や夢野久作らが愛したモーリス・ルヴェル、『変身』が世界的ヒットとなったフランツ・カフカ、SF黄金時代を代表する作家フレドリック・ブラウン、映画『太陽がいっぱい』の原作者として名を馳せたパトリシア・ハイスミスなど、11人の作家が取り上げられています。
『もっと厭な物語』では、日本を代表する作家・夏目漱石に、”日本児童文学の父”小川未明、江戸川乱歩が評価した探偵小説家・氷川瓏など、日本人作家の作品も収録されるようになりました。他にも、映画監督・脚本家としても有名なホラー小説家であるクライヴ・バーカーさん、SF作家のルイス・バジェットなど、全部で10作品が収録されています。
この豪華すぎる作家たちの作品が、たった一冊で読める素晴らしさ!バッドエンド好きにはたまりませんね。
本を通して知らなかった作家と出会えたり、いつもとは違う作風を堪能できるのもアンソロジーの醍醐味といえます。私も、この作品を通して読書の幅が広がり、新しく知った作家にハマっているところです。
“後味の悪い”超有名な傑作がこの一冊に…。
普段は海外文学を読まない読者向けの、超有名な傑作が勢ぞろい!
シャーリイ・ジャクスンの『くじ』、フレドリック・ブラウンの『うしろをみるな』、パトリシア・ハイスミス『すっぽん』、アルフレッド・ノイズ『深夜急行』など、タイトルは聞いたことがある……という人も多いのではないでしょうか?
世界的に傑作と呼ばれる古典作品が中心となっているアンソロジーなので、クオリティーはお墨付き。古さを感じさせない筆力は流石です。
忘れられないバッドエンドであることもさることながら、どんでん返しの凄まじさも傑作と呼ばれるゆえんなのでしょう。
海外文学初心者にはもちろんおすすめの作品ですし、もし既読だという人も、改めて読み返すとその面白さに驚くこと間違いなしですよ。
タイプの違う「厭さ」がクセになる…。
不快なもの、狂気を感じるもの、苛々するもの、グロテスクなもの、暴力的なもの、異常なもの、ホラー小説、奇々怪々なもの。
さまざまなタイプの物語が収録されているので、自分はどんな『厭』な作品が好きなのかを考えながら読み進めると、興味深い自分が見えてきたりします。読者の精神状態によって、捉え方が変わることも。
強烈なものからじわじわと追い詰められるものまで、「ここまでよく集めたなぁ」と思うほどの種類の多さには脱帽です。ただ、共通していえるのは、どれもこれも救いがなく、読み終わった後は厭な気持ちになること。
どうしてでしょうか。読んだ作品がバッドエンドで終わると、「読まなきゃ良かった」と思うのに、懲りずに読んでしまうこの心理は……。
また、夢野久作の序文も衝撃的で、気分が落ちこむ内容でした。
本当、読まなければ良かったです。といいながらも、何回も読み返してしまう私です……。
心のコンディションが良い時に「厭な物語」を存分に味わって
いかがでしたでしょうか。勇気のある人はぜひ読んでみてください。もしかすると、意外とハマる人も多いかもしれませんが、ただ、もう一度言います。読むときはくれぐれも心のコンディションにご注意くださいね。覚悟して読むことをおすすめします。
今回ご紹介した書籍のほか、身の毛もよだつ特集をご用意!ぜひご利用ください。