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「まほろ駅前」などメディア化作品多数! 三浦しをんのおすすめ小説


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直木賞や本屋大賞などの文学賞を受賞し、数多くの作品が映画化されている人気作家・三浦しをんさん。その作品は、日常の中でひとつのことに打ち込み、まっすぐに生きる人々を描き、人気を博しています。

今回は、そんな三浦しをんさんのおすすめ作品をご紹介します。短編集から長編まで、三浦しをん作品の魅力を発見してみませんか?

 

風が強く吹いている

0016190221L『風が強く吹いている』
新潮社

素人の学生たちが箱根駅伝を目指す青春小説

寛政大学4年生の、清瀬灰二。彼は高校時代、優秀な陸上選手だったものの、膝を故障し、箱根駅伝を諦めたという過去を持っていました。

清瀬はある日、万引きをして逃げていく男・蔵原走を捕まえます。走の走りを見て興味を惹かれた清瀬は、走を自分が住むアパート・竹青荘に住むように誘います。走も、高校時代には将来を期待された陸上選手でしたが、暴力沙汰を起こし陸上部を退部したという経歴の持ち主でした。

竹青荘には、清瀬を含めて9人の学生たちが住んでいました。清瀬は、彼らとともに「箱根駅伝を目指す」という野望を抱いていました。そこに、走が加わり、全員で10人。箱根駅伝を目指すことのできる人数が揃いました。

清瀬と走以外の全員が長距離走の経験のない素人ですが、清瀬に強く説得され、箱根駅伝を目指すことになります。


個性豊かなキャラクターたちが織り成す、青春小説。リーダーである清瀬に率いられ、仲間と一緒に大きな目標に向かっていく彼らの姿に勇気をもらえます。

 

まほろ駅前多田便利軒

0016098960L『まほろ駅前多田便利軒』
文藝春秋

バツイチ中年男性2人組の、便利屋稼業

直木賞受賞作品で、「まほろ駅前シリーズ」の第1作。

東京の郊外にある「まほろ市」で、便利屋を営んでいるバツイチの男・多田啓介。ある日、正月に飼い犬のチワワを預かってほしいという依頼を受けます。チワワを連れて便利屋の仕事をこなしている多田の前に、高校時代の同級生・行天が現れ、「今晩、事務所に泊めてくれ」と言い出しました。

妻と別れ、実家に帰るもそこは知らない人が住んでいたという行天は、やがて多田のもとに居候を始めます。


お互いに暗い過去を抱えた2人の中年男性コンビが、多田便利軒に舞い込むきな臭い依頼をこなしていく、便利屋エンターテイメント小説。2人の掛け合いのセリフが面白く、軽妙なテンポで進むストーリーに引き込まれていきます。後半にいくにつれ、徐々に深く重い雰囲気となっていきます。心に傷を抱えた登場人物たちが、最後にたどりつく「幸福の再生」に、胸を打たれます。

 

きみはポラリス

0016516005L『きみはポラリス』
新潮社

さまざまな「恋愛」の形を描く11篇のショートストーリー

「恋愛」をテーマに書かれた、11篇のショートストーリーが収められている短編集です。一口に「恋愛」といっても、分かりやすい男女の恋だけではありません。愛する人のために罪を犯す「私たちがしたこと」、ミサに熱狂する女友達への想いを描く「夜にあふれるもの」、男らしいように見えてちょっと抜けている春太と麻子との日常生活を綴る「春太の毎日」など、どれも一風変わった設定で、様々な形の恋愛が描かれています。重いものから切ないもの、クスッと笑えるもの、温かい気持ちにさせてくれるものなど、とてもバラエティ豊かで、どのお話も違った読後感を抱かせてくれます。

それぞれの短編には、依頼者からの「お題」か、著者による「自分お題」が設定されています。「お題」を頭に入れてから読むと、また違った視点から読むことができますよ。

 

月魚

0012775173L『月魚』
角川書店

古書業界に生きる2人の青年の物語

老舗古書店「無窮堂」の三代目・真志喜と、その幼馴染みで「せどり屋」の父を持つ瀬名垣。2人は、ともに本を愛し、子供ながらに古書の価値を見抜く才能を持っていました。しかしその才能ゆえに、幼い瀬名垣は、真志喜の家族を離れ離れにさせてしまうほどの事件を起こしてしまいます。

成長し、ともに古書で生計を立てるようになっても、過去の罪にとらわれる関係を続けてしまう2人。しかし、ある日古書の買い付けに向かった山奥の村で、2人は思いがけない再会を果たし、ついに過去に向かい合うべき時がやってきます。


古書業界を舞台に、2人の青年の複雑な関係を描く作品で、古書の競りや買い付けの場面など、古書店の裏側を覗くことができるような場面も数多く出てきます。本を通じてつながり合う人の思いや愛情、才能があるからこその葛藤が、しっとりとした繊細な表現で描かれています。

 

神去なあなあ日常

0016892747L『神去なあなあ日常』
徳間書店

林業の研修生として、山奥の村へ放り込まれた少年

高校生の平野勇気は、卒業式の当日、担任の先生から「就職先を決めてきてやった」と告げられます。勇気は、林業の研修生を育成する「緑の雇用」制度に、勝手に応募されていたのでした。


こうして、三重の山奥にある村・神去村で、研修生として働くことになった勇気。タイトルにある「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」という意味。この言葉の通り、どこかのんびりとした神去村の住人に囲まれて、林業の仕事の厳しさ・難しさを学びながら、都会っ子の勇気が徐々に成長していく姿が描かれます。

山の神を信じ、伝統と信仰を守る神去村の人々と勇気との交流を通じ、自然とともに生きるということはどういうことなのかを伝えてくれる作品です。

 

まとめ

三浦しをんさんの作品の魅力は、人と人との関係性をしっかりと描くところではないでしょうか。次々と話題作を世に送り出している三浦しをんさんの作品、ぜひ一度手にとってみてくださいね。

■『風が強く吹いている』(新潮社)
■『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)
→「まほろ駅前シリーズ(文庫版)」はこちら
■『きみはポラリス』(新潮社)
■『月魚』(角川書店)
■『神去なあなあ日常』(徳間書店)
→「神去なあなあ日常シリーズ」はこちら