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東野圭吾の「社会派小説」おすすめ5選|深く考えさせられる名作の数々


更新日:2019/1/24

東野圭吾の「社会派小説」おすすめ5選

日本が誇る人気小説家、東野圭吾さん。

東野圭吾さんが書く作品というと、「ガリレオシリーズ」などのミステリーやエンターテイメント性の高い小説が多い、というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。

 

実は、東野圭吾さんは、読者を楽しませるようなミステリー小説だけではなく、世の中の問題提起に比重を置いた「社会派」小説も多く書かれています。

ここでは、東野圭吾さんの作品の中でも、特に「社会派」な小説を5作ご紹介します。

 

犯罪加害者の家族の目線で綴られる
『手紙』

『手紙』表紙

手紙
文藝春秋

~あらすじ~

弟の直貴と仲睦まじく生きてきた剛志。そんな剛志の夢は、弟に大学へ行かせてやることだった。
ところが身体を壊してしまい仕事ができず、お金に困った剛志は、空き巣に入り住んでいる老婦人を殺してしまう。

一方弟の直貴は、剛志の逮捕後も働き大学生になっていた。
バンドでプロデビューすることになり、令嬢との結婚も決まる。しかしそのたびに、「殺人犯の弟」というレッテルを貼られてしまい、諦めざるをえない状況に。

月に一度、孤独になった直貴を気遣い獄中から手紙を送っていた剛志だが……。

 

【読みどころ】

本書で描かれているテーマは「犯罪加害者の家族目線での過酷な現実」。加害者の家族という、今までにない切り口から現実を突きつける作品です。

フィクションにありがちな夢物語やハッピーエンドは存在しません。読んでいてつらくなるほど悲痛な、直貴の心の葛藤がリアリティを持って描かれています。

 

犯罪被害者の家族の苦悩が描かれる衝撃作
『さまよう刃』

『さまよう刃』表紙

さまよう刃
角川書店ほか

~あらすじ~

長峰の娘・絵摩は、友達と花火大会に行った夜に行方不明になり、数日後死体として発見される。
犯人は一向に見つからない。焦燥感を募らせる長峰のもとに、犯人の名前と住まいを知らせる1本の密告電話が。

長峰は犯人の住まいに侵入するが、そこで、2人の少年にレイプされて死んでいく絵摩の姿が映る映像を発見し……。

 

【読みどころ】

本書は「未成年の加害者を救済する”少年法”」がテーマとして描かれています。
少年法という壁が立ちはだかる前で、被害者家族の思いが救われることはあるのでしょうか。

先ほど紹介した『手紙』とは逆の「犯罪被害者の家族目線での過酷な現実」について書かれています。併せて読んでみてはいかがでしょうか?
一度読むと忘れられないほど衝撃的な作品です。

 

医療と制度、家族の現実が描き出される
『人魚の眠る家』

『人魚の眠る家』表紙

人魚の眠る家
幻冬舎

~あらすじ~

夫の浮気が原因で別居状態の薫子は、幼い2人の子供と一緒に暮らしていた。

ある日そんな薫子のもとに、娘の瑞穂が溺れて意識不明だという電話が。そして、瑞穂に脳死の可能性があると告げられる。

日本では臓器提供に同意しない限り、脳死状態でも死は認められず生き続けなければならない。眠っているように見える瑞穂の姿に、薫子は臓器提供を決断できずにいた……。

 

【読みどころ】

本書のテーマは「脳死と臓器提供に悩む家族の葛藤」。

私だったら、まるで眠っているように見える自分の子どもの死を決断できるだろうか? 臓器提供できるだろうか? と思いながら読みましたが、今でも答えは出ません。

最新の医療技術によって、眠っている娘を生き永らえさせていると、薫子を不気味に思い離れていく周囲の人たちなども描かれ、読んでいて胸が苦しくてたまらなくなりました。

 

「死刑制度」について深く考えさせられる
『虚ろな十字架』

『虚ろな十字架』表紙

虚ろな十字架
光文社

~あらすじ~

小学校2年生の一人娘・愛美を殺された中原道正。母親の小夜子の不在時に、窓を割って侵入した強盗に襲われ残忍な手口で殺害されたのだ。

犯人は強盗殺人の罪で無期懲役を受け、仮出所していた蛭川。
道正と小夜子の必死の闘いによって蛭川は死刑判決となるが、まったく反省しておらず……。

 

【読みどころ】

テーマは「死刑廃止論という名の暴力」。

強盗殺人の罪を起こした蛭川が死刑になっていれば、愛美は殺されることはありませんでした。
真の意味での償いとは何なのか、反省していない加害者の死刑に意味はあるのか、死刑が果たされた時に被害者は何を目的に生きればいいのか……など、死刑制度について深く考えさせられる1冊です。

 

「人を殺す」とはどういうことか。
『殺人の門』

『殺人の門』表紙

殺人の門
角川書店

~あらすじ~

裕福な家庭に生まれ暮らしていた田島は、祖母の死をきっかけに家庭が崩壊し不幸の道を辿ることに。

不幸になるときには、必ず小学校の時の同級生・倉持修の姿があった。田島が努力し幸せを掴もうとすると、決まって倉持が姿を現し、田島を奈落に落とすのだ。
田島は自分が不幸になった原因は倉持にあると考え、憎み、殺したいと考える。……しかし、殺せない。

 

【読みどころ】

タイトルの「殺人の門」とは、「殺人者になる門」を指しています。そう、本書で描かれているテーマは、「人が人を殺すということ」です。

殺したいほど憎い人がいるのに、どうしても殺すことができない。なぜ殺せないのか。どうすれば殺せるんだろうか。殺人者になりたいと20年思い続けた主人公の結末をぜひご覧ください。

 

東野圭吾の「社会派」作品を読んでみよう!

今回紹介した「社会派」の5冊は、どの作品も、自分がその立場に立ったらどうするか?を考えさせられる作品となっています。

ぜひ、東野圭吾さんの多面的な才能に触れてみてくださいね。

 

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