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祝・再開!日本ファンタジーノベル大賞ってどんな賞?


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日本ファンタジーノベル大賞は、日本で唯一の「ファンタジー作品」の公募新人賞です。たくさんのヒット作家を輩出したこの賞は、2013年に一度休止となっていましたが、2017年から再開されることが決定しました。

今回は、この日本ファンタジーノベル大賞について徹底解説します。

 

日本ファンタジーノベル大賞とは?

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日本ファンタジーノベル大賞は、1989年に創設された公募新人賞です。三井不動産販売や清水建設が主催となり、新潮社が後援していました。2017年からは、主催は一般財団法人新潮文芸振興会、後援は読売新聞社となります。

公募新人賞とは、すでに発表されている作品に与えられる新人賞(たとえば、芥川賞など)とは違い、未発表作品を募集する賞のこと。作家を目指す人は、まずこの公募新人賞に応募してデビューを狙うことになります。

日本ファンタジーノベル大賞は「ファンタジー作品」に限ったユニークな新人賞で、受賞作品のレベルが高く、名作揃いということで有名です。大賞作品は新潮社から出版されることになりますが、大賞以外の候補作品であっても、優れていると認められた作品が出版されたケースもあります。

 

人気作家を次々と輩出

過去に受賞した作家は、酒見賢一さん、鈴木光司さん、佐藤亜紀さん、森見登美彦さん、畠中恵さんなど錚々たる面子が揃っています。受賞はできなかったものの候補作に選ばれ、のちに出版された作家としては、恩田陸さん、小野不由美さんなどがいます。

それでは、過去に大賞を受賞した作品をいくつかご紹介しましょう。

 

第1回大賞 「後宮小説」(酒見賢一 著)

「素乾国」という中国に似た架空の国を舞台に、帝王の後宮に入宮した少女・銀河の活躍を描きます。後宮の宮女のための学校「女大学」へ通い、正妃となる銀河。しかし、幻影達による反乱軍が蜂起し、銀河は後宮を守るため、軍隊を組織して戦うことになります。

無邪気でお転婆、物怖じしない性格の銀河が魅力的で、軽快に進むストーリーが楽しめます。

■『後宮小説』 / 酒見賢一(著)、新潮社

 

第2回優秀賞 「楽園」(鈴木光司 著)

古代モンゴルで暮らしていた二人の男女・ボグドとファヤウ。幸せに暮らしていた二人ですが、ボグドの部族が他部族に襲われ、ファヤウはアメリカ大陸に連れ去られてしまいます。赤い鹿の精霊に導かれ、ボグドはファヤウを求めてアメリカ大陸を目指します。

「リング」などのホラー小説で有名な鈴木光司さんですが、この作品は壮大なファンタジー・ラブロマンス。輪廻転生で繋がれる愛に感動します。

■『楽園』 / 鈴木光司(著)、角川書店

 

第3回大賞 「バルタザールの遍歴」(佐藤亜紀 著)

舞台は、ナチスが台頭していく頃のウィーン。二人で一人の体を共有している双子・バルタザールとメルヒオールが主人公です。酒や女に溺れながら放蕩を続ける二人が、貴族として没落し、転落していく姿を描きます。

まるで海外の翻訳小説のような文体で、緻密に描写される時代背景はとてもリアル。退廃的な雰囲気を楽しめる一冊です。

■『バルタザールの遍歴』 / 佐藤亜紀(著)、文藝春秋

 

第15回大賞 「太陽の塔/ピレネーの城」(森見登美彦 著)※「太陽の塔」として出版

京大生の森本は、かつて自分を振った恋人・水尾さんを追い続けています。どう見てもストーカーですが、本人としては「観察と研究」と称し、レポートを書き続けています。ある日、遠藤という男が現れ、森本にストーカーをやめるように言い渡すのですが……。

もてない男たちの鬱屈が、「アンチ・クリスマス」として爆発する、青春ファンタジー小説です。

■『太陽の塔』 / 森見登美彦(著)、新潮社

 

第25回大賞 「今年の贈り物」(古谷田奈月 著)※「星の民のクリスマス」として出版

小説家の父親と二人暮らしをしている少女・カマリ。10歳のクリスマス・イブの夜、カマリは望遠鏡を持って星を見に行くと言い残したきり、失踪してしまいます。カマリは父親が書いた小説の世界の中に迷い込んでしまっていたのです。父親はカマリを追って、自分が書いた物語の中へと入っていきます。

メルヘンの世界のように可愛らしい雰囲気もありながら、徐々に物語は意外な方向へ展開していきます。父娘の愛情を描く、切なくて美しい物語です。

■『星の民のクリスマス』 / 古谷田奈月(著)、新潮社

 

候補作・優秀作の層の厚さにも注目!

そのほかにも、

■恩田陸 著「六番目の小夜子」(第3回候補作)
■小野不由美 著「東亰異聞」(第5回候補作)
■畠中恵 著「しゃばけ」(第13回優秀賞)

なども、出版刊行されています。これらの作家さんたちは、その後ヒット作を多数世に送り出し、人気作家としての地位を確立しており、そのことからも日本ファンタジーノベル大賞の文学賞としての層の厚さがうかがえます。

 

ファンタジー好きなら要チェックの文学賞

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日本ファンタジーノベル大賞の作品は、どれも名作ばかり。休止した時は多くのファンタジーファンから惜しむ声があがりましたが、今回、4年ぶりに復活することが発表されています。選考委員は、日本ファンタジーノベル大賞出身である恩田陸さん、森見登美彦さんのほか、第23回から第25回までの選考委員でもあった漫画家の萩尾望都さんがつとめます。次はどんな作品が受賞するのか、ワクワクしている方も多いのではないでしょうか。新しい才能との出会いが今から待ち遠しいですね。