『侠飯』のあらすじと内容とは|2016年ドラマ化の原作小説
2016年、テレビ東京にて生瀬勝久さん主演でドラマ化された『侠飯 (おとこめし)』。
ホラー&アウトロー作家として知られる福澤徹三さんが書いた、任侠グルメ小説なのですが、とにかく面白いのです!
『侠飯』
福澤徹三(著)、文藝春秋
たとえば、小説の章題はこちら。
・チャーハンはパラパラじゃないほうが旨い
・ゴミ袋とレンジで作る刑務所の飯
・レトルトカレーがフライパンひとつで絶品になる
・ステーキはA5ランクよりスーパーの特売品
・食べ物で性格が変わる
いかがですか? 少し好奇心が湧いてきませんか?
ここでは、そんな話題作『侠飯』の魅力を余すことなくお伝えします。ドラマが始まる前に、原作本をぜひ1度読んでみてはいかがでしょうか。
「侠飯」あらすじ
就活に悩んでいる三流大学生・若水良太は、ある日ヤクザの銃撃戦に巻き込まれてしまいます。そして、ひょんなことから、小指のないヤクザ組長・柳刃と、舎弟・火野を下宿にかくまうことに。
柳刃は、普段は寡黙なヤクザですが、グルメに対してはこだわりが強く、料理を作ることに関しては凄腕の持ち主。しかし、柳刃は警察に顔が知られていることから、一歩も外へ出ることができません。
そのため柳刃は、 良太のパソコンからいろんな食材や調味料、家電製品をどんどん購入します。
良太は柳刃が作った料理をただ一緒に食べるだけなのですが、食事を通して良太の価値観も大きく変わっていきます。柳刃の調理する姿勢からいろんなことを感じ取り、仕事とは何か、やりたいことを見つけるとは何か……など、自分の生き方を見つめなおし成長していく良太。
ほっこりとあたたかな気持ちになれる小説です。
料理時に使える小技が盛りだくさん
「侠飯」の魅力のひとつは、ただのグルメ小説でなく、うんちくが多く含まれており学びがあるところです。
目玉焼なんて、ただ焼けばいいと思っていたが、片面だけ焼くのがサニーサイドアップ、両面焼くのがターンオーバーと呼ぶらしい。(p91)
「レトルトはパックのまま湯煎するより、中身をだしてフライパンや鍋で温めたほうがレトルト臭さが抜けて旨い。レトルト臭さはカレー粉やスパイスを入れても抜ける」(p154)
などなど、料理時に使える小技や学びになるうんちくが盛りだくさんで、実用書としても使うことができますよ。
簡単で本格派料理が作れるレシピが盛りだくさん
※画像はイメージです
柳刃が作る料理は、基本的には簡単&安い食材(ときどき高級食材やこだわりの調味料も出てきますが)で作られます。なのに、柳刃の手にかかれば本格派料理に!
たとえば、こんな料理が登場します。
・オイルサーディンのグリル
・クラテッロ
・スティルトンのパスタ
・ジェイルライス(刑務所の囚人達が持ち寄った材料でつくる火と包丁を使わないタコライス)
・スーパーで買った1枚500円の牛肉ステーキ シャリアピン風ソースで
・レトルトカレーで作る大阪自由軒風カレー
メニューだけ見ると、どんなものか想像もつかない……というオシャレ料理も多く、「侠飯」を読んでいると、料理をしたくてウズウズする人も多いはず。
本を片手にぜひチャレンジしてみてくださいね。
心に響く金言が盛りだくさん
就職先が決まらず迷走してしまう良太に対し、柳刃は長々と説教を垂れます。自分が良太の立場だったらつい不貞腐れてしまいそうです……。
が、この説教、じわじわ効いてくる金言が盛りだくさんなのです。
「おれたちの稼業はいつくたばるかわからん。くたばらなくても長い懲役にいきゃあ、娑婆の飯は食えない。だから、いいかげんなものは食いたくないんだ」(p80)
「仕事そのものには、ぜったいにこだわりが必要だ。面倒なことを避けて通る奴は成長しない。あえて面倒なことにこだわる姿勢が創意工夫を生み、他者との差を作る」(p124)
「食べもので性格は変わる。新興宗教なんかで肉食を禁じるのは、暗示にかかりやすくするためだ。栄養のないものばかり食べていると無気力になるから、意志が弱くなって他人の命令に従ってしまう。
栄養が不足すると、偏った考えしかできなくなる。」(p187)
など、柳刃が発するのは至極まっとうな言葉ばかりです。
この食事が最後になるかもしれないという緊張感を持って食事をしている人はどれほどいるでしょうか。手軽で、とりあえず腹を満たすことができればいい。そう考えてはいませんか?
忙しくなると、食事の優先順位が下がることはよくあることですが、果たしてそれでいいのでしょうか?
そんな、ドキッとさせられる言葉がたっぷり詰まった小説となっています。
これぞ飯テロ!色んな角度から楽しめる「侠飯」
これぞ飯テロと言っても過言でない小説『侠飯』。美味しそうな料理表現には、胃袋を掴まれること間違い無しです。ドラマと合わせて小説も読んでみては?