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【2017年】ミステリー小説|今年のおすすめベスト5


ミステリーにはあまりにも多くのジャンルや系統がありすぎて、私の場合、次に手に取るべき作品を選ぶのにネットで紹介されている書評は欠かせないものになっています。

それでも当たりハズレはあるし、自分がほんとうに読んでよかったと思える作品に出会いたい。

そうやって今年巡り合うことができた私の今年のベスト5ミステリーをご紹介します。

 

普遍的なテーマとこれからの医療を描く

『虚栄』
九坂部羊(著)、KADOKAWA

 

医療業界を題材に現場や業界の裏側を現役の医師ならではのリアリティで描く久坂部羊さんの作品です。

がん治療の国家プロジェクトにおける4大治療それぞれの派閥の利権と覇権をめぐる争いがストーリーとなっていて、エリートでありプライドが高い医師ならではの、どろどろの人間模様がタイトルの「虚栄」という言葉に象徴されています。

往年の名作山崎豊子さんの「白い巨塔」に通じるエンターテイメント性もあり、ボリュームのある長編でありながら一気に読み進めた面白い作品でした。医療技術の進歩とともに5年生存率が高まってきたなど治る病気としてのがんもメディアで目にしますが、これを読むとがんの未知の部分を前提としたがん治療の実態を垣間見られます。

生命という普遍的なテーマが根底にあり、マスメディアから発せられる情報の質や、これからの高齢化社会向けての問題など、考えさせられることの多い作品でもあります。

 

31年前の事件を追う

『罪の声』
塩田武士(著)、講談社

 

2016年週刊文春ミステリーベスト10の堂々1位に輝いた作品です。

1980年代の未解決事件グリコ・森永事件が、31年後の新聞記者と犯人の子供の視点で語られるという形で物語が進んでいきます。当時の報道などを目にしていた方は記憶が蘇ってくるのではないかと思いますが、この作品に描かれていることが事件の真相ではないかと思えてくるほどのリアリティがあります。

このあたりは元新聞記者である作者の調査力が際立ち、時系列に沿って真犯人に迫っていく展開に思わず引き込まれていきます。犯人が特定され犯行動機やその背景、犯人の家族、また被害者の家族のその後歩んだ人生の虚しさのなかに、一筋の明るい希望が見えるラストも感動すること間違いなしです。

 

ミステリーの金字塔

『十角館の殺人』
綾辻行人(著)、講談社

 

ミステリー界では新本格の旗手と言われる綾辻行人さんのデビュー作で館シリーズの1作目。累計100万部を超える名作です。

クローズドサークル、叙述トリック、どんでん返しのオーソドックスなミステリーの様式美を備えた本格的なミステリーで、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のオマージュ的な作品。海外に向けて翻訳版も出されワシントン・ポストのブックレビューで高い評価を得るなどミステリーとしての完成度の高さがミステリーファンを惹き付けています。

叙述トリックものはどうしてもそれに導くための不自然さがあったりしますがこの作品にはそれがなく、鮮やかに最後の一行どんでん返しに結びつくところがミステリーファンの語り草となっています。

 

サスペンスの詩人ウイリアム・アイリッシュ

『幻の女』
ウィリアム・アイリッシュ(著)、黒原敏行(訳)
早川書房

 

「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」

という美しい文章が有名なウイリアム・アイリッシュさんの代表作。いくつものミステリーランキングで何度も上位にランキングされ、アメリカでは映画化、日本では1960~1990年にかけて数回に渡ってテレビドラマ化されたほどの名作です。

ミステリーのジャンルとしてはタイムリミットものやサスペンスに分けられる作品でありながら、サスペンスの詩人と称される作者の文章の味わい深さも作品の魅力となっています。この点に関しては1975年の稲葉明雄訳の評価が高いようですが、新訳のほうも読みやすく、それでいて孤独や哀愁がにじみ出る原作の個性を引き出していると思います。

主人公の死刑執行までに殺人のアリバイとなる幻の女を探さなければならないという展開で、その緊迫感を描き出す映像が浮かんでくるような情景描写は名作と言われるのにふさわしいじっくりと読みたい1冊です。

 

頭の中で音楽が鳴る

『蜜蜂と遠雷』
恩田陸(著)、幻冬舎

 

2016年下半期の直木賞と2017年の本屋大賞の受賞作。ノスタルジアの魔術師と言われる恩田陸さんのピアノコンクールを題材にした青春群像劇です。

クラシック音楽に馴染みがない人にはピンとこないかもしれませんが、それでも音楽の世界観に引き込んでいく著者の筆力は、曲が聞こえてくるような感覚を味わわせてくれます。頂点を目指す人間の凄みがしっかりと描かれ、その臨場感と緊迫感が、頭の中に聞こえてくる音楽と重なって感情が揺さぶられる素晴らしい作品。

音楽を読者の頭の中で鳴らすことを目指し、構想に12年、実際のコンクールへの取材も4回行うことで描き上げたという本作は、まさに著者の思いを実現させた音楽の魅力も堪能させてくれる名作です。

 

読めば読むほどもっと読みたくなるのがミステリー

ミステリーは知っているから面白いという部分があり、過去の名作やミステリーの作法の知識があると新しく出会う作品の著者の思いがより深く味わえるようになると思います。

筋金入りのミステリーファンというわけではありませんが、ミステリーの奥深さと楽しさに気づきはじめたところです。

 


今回ご紹介した書籍

虚栄九坂部羊(著)、KADOKAWA
罪の声塩田武士(著)、講談社
十角館の殺人綾辻行人(著)、講談社
幻の女ウィリアム・アイリッシュ(著)、黒原敏行(訳)、早川書房
蜜蜂と遠雷恩田陸(著)、幻冬舎


 

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