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事件の真実を「財布」が語る!?宮部みゆき著『長い長い殺人』


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長い長い殺人
宮部みゆき(著)
光文社
発売日:2011/07/12

 

 

 

あらすじ

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ある晩、一人の男がひき逃げされる。
彼の妻には3人の愛人がいた。それぞれに多額の保険金がかけられていたため、世間から注目を浴びる。しかし、彼らにはアリバイが!
10人の登場人物の「財布」たちが語る真実により、人間模様と事件の裏側が明らかになっていく。

 

財布だからこそ知る、持ち主の心の内とは…

『長い長い殺人』は、『火車』、『理由』、『模倣犯』などで有名な宮部みゆきさんの異色の連作小説です。2007年にWOWOWで映像化され、2008年には劇場公開、2012年にはテレビドラマが放映されました。

 

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登場人物たちの「財布」がまるで人間のように、主である持ち主の真実を語る、あるいは告発するという意外な視点からの変わった設定になっています。『パーフェクトブルー』では元警察犬のマサが語り部となっていましたが、今回はなんと「財布」です。
その持ち主は刑事や被害者、証人など、物語の中に登場する10人の人物たち。警察が知らない事件の裏、持ち主の本当の顔を彼らは知っているのです。

1章ずつ違う財布が語るため読みやすいだけでなく、ひとつひとつの告白には絶妙に接点があり、読み手が真犯人を推理する鍵になっています。
宮部みゆきさんの小説によく登場するような好青年、少年も出てきますし、お話が二転三転と展開するので飽きることもありません。

持ち主のことをよく知るからこそ財布だからこそ、持ち主の微妙な心理を把握でき、そして事件の真相が見えてくるのです。単純なひき逃げ事件だと思っていたら、その裏には意外な真相が…。

見方によっては連作である短編小説でもあり、いくつもの物語が結末へと違和感なくつながっていくあたりに、宮部みゆきさんの筆力が感じられます。
どの「財布」の視点で読んでも、ドキリとさせられるような人間の弱さや愚かさ、それとは逆の優しさや温かさが感じ取れるのも大きな魅力です。

 

今回ご紹介した書籍
長い長い殺人
宮部みゆき(著)、光文社

 

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