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脱出不可能!?”クローズド・サークル”ものミステリー小説のおすすめ3選


closed-circle-mysteryミステリーのジャンルの中には「クローズド・サークルミステリー」というものが存在します。クローズド・サークルミステリーとは、「嵐の山荘」や「絶海の孤島」など外界から隔てられた「閉鎖空間」で起こる事件や謎を題材にしたジャンルです。

「殺人犯なんかと一緒にいられるか! わたしは部屋に戻って一人で休ませてもらう!」なんていうお決まりの文句は、ほとんどの場合クローズド・サークルミステリーの中で使われます。ちなみにこういう方が次の被害者になってしまったり……。

そんなクローズド・サークルミステリーには、このジャンルならではの魅力がいくつかあります。そのうちの一つが登場人物たちの心情描写です。

あっと驚くトリックや意外な結末は、クローズド・サークルミステリーでなくとも描けますが、閉鎖空間における登場人物の心情描写は、クローズド・サークルミステリーでなければ描けません。

そこでここでは、心情描写が魅力のクローズド・サークルミステリーを三作品紹介していきます。

 

仮面山荘殺人事件 / 東野圭吾

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◆あらすじ◆

婚約者の森崎朋美を事故で亡くした高之。彼は、現在も親交のある朋美の親族とともに森崎家の別荘を訪れます。集まった八人の男女。彼らはそこで数日間の避暑を楽しむはずでした。しかし逃走中の銀行強盗の登場によって、楽しむどころではなくなります。銀行強盗は二人。その二人組は仲間と合流するまでここにいると言って、別荘に居座ります。

八人は脱出を試みますが、ことごとく失敗。重苦しい空気が漂う中、別荘の中で一人が殺されます。ただ、状況から犯人は銀行強盗ではないということが判明。では一体誰が殺したのか?なぜ殺されなければならなかったのか?過去の事故と現在の事件がリンクし、物語はやがて想像を絶する結末を迎えることとなります。


クローズド・サークルの作り方に一捻り

クローズド・サークルものは、「孤島」や「嵐」など立地条件や自然災害から作られることが多いのですが、本作は銀行強盗の登場という人為的な要素がクローズド・サークルを形成しています。

銀行強盗の存在とリアルタイムで起こる殺人事件がサスペンス性を演出し、過去の事故の謎がミステリー性を演出しています。

次第に憔悴していく登場人物たちの心情描写。二転三転とするストーリー。謎解き。意外な結末。どれをとっても一流の本作はクローズド・サークルものの傑作となっています。

■『仮面山荘殺人事件』東野圭吾(講談社文庫)

 

そして扉が閉ざされた / 岡嶋二人

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◆あらすじ◆

富豪の一人娘である三田咲子。彼女が不審な事故で亡くなってから三か月が経ったある日。主人公の雄一は不思議な部屋で目を覚まします。その部屋には、窓も出口もありません。そして雄一の他に三人の若者がいます。雄一を含めたこの四人は三か月前に咲子と共に別荘へ遊びに行ったメンバーでした。この部屋に彼らを集めたのは、咲子の母親である雅代。雅代は咲子の死を殺人だったと主張します。そこで雅代は、真相がわかるまで雄一らを外に出さないと言い出し……。

雄一ら四人は、その閉ざされた部屋の中で三か月前の事故の真相を探りはじめます。咲子の死は本当に事故なのか。それとも誰かに殺されたのか。四人は、記憶を頼りに咲子の死の原因を探っていきます。


変化球的なクローズド・サークルミステリー

「閉鎖空間で次々と起きる殺人事件とその解決」

クローズド・サークルミステリーというと、ほとんどの作品がこういった性質をもっています。ただ、本作はというと、リアルタイムで人が死ぬことはなく、焦点は飽くまで過去の事件です。そのため、変化球的なクローズド・サークルミステリーとなっています。

しかし、だからといってクローズド・サークルものとしての魅力が落ちているかというとそうでもありません。

脱出不可能な空間。目減りしていく食料。そういったものがじわじわと焦燥感を掻きたて、クローズド・サークルものならではの緊張感が終始漂っています。特に無機質な部屋に閉じ込められた人間の心情を見事に描いています。

本作は一風変わったクローズド・サークルミステリーを読みたい方にお勧めの作品となっています。

■『そして扉が閉ざされた』岡嶋二人(講談社文庫)

 

ある閉ざされた雪の山荘で / 東野圭吾

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◆あらすじ◆

天才演出家東郷陣平の舞台オーディションに合格した八人の男女。彼らは東郷によってとあるペンションに集められます。ただそこに東郷は現れず、手紙だけが届きます。手紙内容は以下の通り。

『今回の作品の台本はまだ完成していない。決まっているのは推理劇であるということ、舞台設定と登場人物、それから大まかなストーリーだけだ。細部はこれから君たち自身で作りあげてもらう(18ページ)』

こうして舞台稽古という名の試験がはじまります。その中で、一人が消え、また一人が消えます。現場に残る血痕。本当にこれは舞台稽古なのか?殺人が起きているのではないか?次第に疑心暗鬼になっていく若者たち。しかし、外界と連絡を取った時点で合格の取り消しという条件がついているため、彼らは異様な空間で推理劇を演じ続けます。


虚構と現実の果てにある驚愕の結末

本作は、閉鎖空間で起きる連続殺人を題材にしたオーソドックスな「クローズド・サークルミステリー」――を、劇として演じる作品です。

普通の連続殺人事件であれば、犯人を暴き、犯人の動機を明かすことで、決着がつきます。しかし本作の場合「この殺人は劇なのか、現実なのか」という謎が加わります。

そのため「現実であれば、なぜ殺されなければならないのか。劇であるならば、血痕の正体は一体なんなのか」そういったところを解明しなければなりません。

現実と虚構の狭間で起きる事件。それらを前にして疑心暗鬼になる登場人物たち。そのあたりの描写は秀逸の一言です。

さらに終盤に明かされる一つの仕掛け。それは語られてきた物語の意味合いをがらりと変えてしまうようなそんな衝撃をもたらしてくれます。

■『ある閉ざされた雪の山荘で』東野圭吾(講談社文庫)

 

まとめ

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ミステリーの中には、トリックや謎に力を入れるあまり、登場人物の心情がおろそかになっている作品があります。しかし、上述した三作はそういった細部まで丁寧に描かれています。

クローズド・サークルミステリーを読もうと思っている方は、一度手にとってみてはいかがでしょう。

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ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。