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脱出不可能!? クローズド・サークルミステリーのおすすめ小説


更新日:2019/4/24

脱出不可能!? クローズド・サークルミステリーのおすすめ小説

ミステリーのジャンルの中に、「クローズド・サークルミステリー」と呼ばれるジャンルが存在します。

クローズド・サークルミステリーとは、「嵐の山荘」や「絶海の孤島」など、外界から隔てられた閉鎖空間で起こる事件や謎を題材にした作品のこと。

「殺人犯なんかと一緒にいられるか! わたしは部屋に戻って休ませてもらう!」
なーんていうお決まりの文句は、ほとんどの場合クローズド・サークルミステリーの中で使われます。ちなみにこういう方が次の被害者になってしまうんですが……。

あっと驚くトリックや意外な結末は違うジャンルのミステリーでも描けます。しかし、閉鎖空間における登場人物の心情描写は、クローズド・サークルミステリーでなければ描けません。

ここでは、巧みな心情描写が魅力の「クローズド・サークルミステリー」の小説をご紹介していきます。

 

『仮面山荘殺人事件』

『仮面山荘殺人事件』表紙

仮面山荘殺人事件
東野圭吾(著)、講談社

とある別荘に集まり、数日間の避暑を楽しむはずだった8人の男女。
しかしそんな楽しみは、逃走中の銀行強盗2人の登場によって崩壊。強盗2人は、仲間と合流するまで別荘に留まると言うのだ。
脱出を試みるもことごとく失敗。そして重苦しい空気が漂うなか、殺人事件が起きる……。

 

本作では、銀行強盗の登場によってクローズド・サークルが形成されています。
銀行強盗の存在と、リアルタイムで起こる殺人事件がサスペンス性を演出。過去に起きた事故の謎によってミステリー性が高まります。

徐々に憔悴していく登場人物たちの心情描写、二転三転とするストーリー、謎解き、意外な結末。どれをとっても一流の本作はクローズド・サークルものの傑作となっています。

はたして殺人犯は誰なのか? なぜ殺さなければならなかったのでしょうか……?

 

『そして扉が閉ざされた』

『そして扉が閉ざされた』表紙

そして扉が閉ざされた
岡嶋二人(著)、講談社

3ヶ月前に亡くなった咲子と遊び仲間だった雄一ら男女4人は、不思議な部屋で目を覚ます。
この部屋に4人を集めた咲子の母・雅代は、咲子の死は他殺だったと主張。そして、真相がわかるまで4人を外に出さないと言い……。

 

脱出不可能な空間、減っていく食料。それらがじわじわと焦燥感を掻きたて、クローズド・サークルものならではの緊張感を漂わせています。
特に、無機質な部屋に閉じ込められた人間の心情の描き方は、見事としか言いようがありません。

咲子の死の真相とは。そして、4人は無事外に出られるのでしょうか。

一風変わったクローズド・サークルミステリーを読みたい方におすすめですよ。

 

『ある閉ざされた雪の山荘で』

『ある閉ざされた雪の山荘で』表紙

ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾(著)、講談社

天才演出家・東郷陣平の舞台オーディションに合格した8人の男女が、とあるペンションに集められる。
ところがそこに東郷は現れず、届いた手紙によって舞台稽古という名の試験が始まる。そのなかで1人、また1人と消えていき……。

 

本作は、閉鎖空間で起きる連続殺人を題材にしたオーソドックスな「クローズド・サークルミステリー」――を、劇として演じる作品です。

普通の連続殺人事件であれば、犯人を暴き、犯人の動機を明かすことで決着がつきます。しかし本作の場合そこに「この殺人は劇なのか、現実なのか」と謎が加わります。

現実と虚構の狭間で起きる事件に、それらを前にして疑心暗鬼になっていく登場人物たち。果たして物語の結末は……?

 

『孤島パズル』

『孤島パズル』表紙

孤島パズル
有栖川有栖(著)、東京創元社

英都大学推理小説研究会(通称:EMC)初の女性会員となったマリアとともに、部長の江神二郎、法学部の有栖川有栖(アリス)は南の島へ。
マリアの祖父が隠したと言われる時価5億円相当のダイヤモンドを、遺言状と宝の地図から見つけ出す宝探しバカンスだ。

ところが嵐となった2日目の夜、2人の滞在者がライフルで撃たれ殺された。
救援を呼ぶことが出来ず、絶海の孤島に取り残されたアリスたち。そしてさらなる悲劇が……!

 

本シリーズの著者である有栖川有栖氏が、推理小説研究会のメンバーという設定で書かれた「学生アリスシリーズ」の第2弾。
嵐のせいで陸地と断絶された孤島を舞台に、そこで起こる事件の真相に推理小説研究会が迫っていきます。

終盤に向かってバラバラだったピースが1つずつカチッと収まっていくのは、まさにパズルそのもの! アリスたちとともに、孤島の謎に挑んでみてはいかがでしょうか?

「学生アリスシリーズ」(文庫版)一覧はこちら

 

『オーデュボンの祈り』

『オーデュボンの祈り』表紙

オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎(著)、新潮社

コンビニ強盗をするも失敗して逃走した伊藤が我に返ると、江戸時代から外界との交流を絶っている荻島に辿りついていた。

島には一風変わった人ばかりが暮らしていたが、ある日「未来が見える」カカシがバラバラにされたうえ、頭を持ち去られて死んでいた。
未来が見えるのに殺されたことに疑問を持った伊藤は、島の言い伝えと死の真相を追う。

 

今やベストセラー作家となった伊坂幸太郎氏のデビュー作。2000年には第5回新潮ミステリー倶楽部賞に輝き、ラジオドラマ化、漫画化、舞台化もされた人気作品です。

人の言葉を話すカカシや嘘しか言わない画家、殺人を許された男など設定がユニークで、その世界設定だけでも楽しめます。
デビュー作とは思えないほど見事な伏線の回収を楽しんでみてくださいね。

 

『オイディプス症候群』

『オイディプス症候群』表紙

オイディプス症候群
笠井潔(著)、光文社

探偵の矢吹駆とナディアは、ウイルス学者である友人の頼みでマドック博士に会いに行くためアテネへ向かう。
しかしすでに博士はアテネを離れており、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島(ミノタウルス島)」へ飛び立っていた。

急遽2人も島へ向かうが、島では「ダイダロス館」を訪れた人が次々と奇怪な連続殺人に襲われていた……!

 

笠井潔氏による長編本格ミステリー「矢吹駆シリーズ」の第5弾で、嵐で断絶された孤島で殺人が起こるクローズド・サークルものです。

シリーズの特徴は、哲学や思想が取り入れられているところ。
本作でもシリーズの魅力である哲学的論争やギリシャ神話に関する議論が繰り広げられているため、興味深く読み進められるでしょう。

興味があれば、シリーズを通して読んでみてくださいね!

 

『黒祠の島』

『黒祠の島』表紙

黒祠の島
小野不由美(著)、新潮社ほか

失踪した作家・葛木志保の行方を求め、式部剛は九州北西部にある夜叉島へやってくる。しかし、よそ者を嫌う閉鎖的な島民は口を閉ざし、式部は情報を集めることができずにいた。
そして島に漂う死臭に気づいた式部は、やがて島内で猟奇殺人が起きていることを突き止める。

 

本作は、島の人々に伝わる異様な風習と、そこに潜む狂気がテーマの作品です。
「黒祠(こくし)」とは、明治政府が行った神社統制の際に、国家が存在を認めなかった社、邪教のこと。本作はその黒祠の島が舞台となっています。

ただのミステリー作品ではなく、ホラーの要素も兼ね備えた異色の作品。ねっとりとした不気味さを味わってみませんか? きっとその世界に引き込まれるはずです。

 

『凍える島』

『凍える島』表紙

凍える島
近藤史恵(著)、東京創元社

喫茶店「北斎屋」を営む野坂あやめは慰安旅行を持ちかけられ、得意客とともに総勢8人で瀬戸内海の無人島へやってきた。
ところが、島に着いて間もなく殺人事件が発生。さらに悲劇は続き、やがて第2の犠牲者が……。

 

第4回鮎川哲也賞に輝いた近藤史恵氏のデビュー作。
孤島で次々に人が殺されていく古典的なストーリー展開だからこそ、犯人、殺人動機、トリック、登場人物の個性が光ります。

自分も島にいるような気持ちで読むと、よりハラハラ感を感じられるでしょう。ラストには予想もつかない展開が読者を待ち受けていますよ。

 

『倒錯の帰結』

『倒錯の帰結』表紙

倒錯の帰結
折原一(著)、講談社

祈祷が行われる度に死人が出る孤島での不可解な連続殺人事件と、東京にあるアパートの一室で起こる監禁事件。この2つの事件に遭遇した作家志望の男が迎える型破りな結末とは…!?

 

本書は、『倒錯の死角』『倒錯のロンド』に続く「倒錯」3部作の完結編です。他2冊を読んでからの方が楽しめますが、本書だけでも十分に満足できるでしょう。

「首吊り島」「監禁者」「倒錯の帰結」の3部で構成された本書は、「首吊り島」と「監禁者」のどちらからでも読み進めることができるのが特徴です。
ただし「倒錯の帰結」は袋とじになっているので、必ず最後に読みましょう。

折原氏の魅力である巧みな文章が、読者を驚きの世界へ導いてくれます。

「倒錯」3部作一覧はこちら

 

『マスグレイヴ館の島』

『マスグレイヴ館の島』表紙

マスグレイヴ館の島
柄刀一(著)、光文社ほか

とある孤島の館でクイズイベントが行われるそうで、謎を解いた者には巨額の賞金が出るらしい。
ところがイベントに参加した人々は、不可思議な殺人事件の数々に遭遇。殺人に使われた驚愕のトリックとは……?

 

アーサー・コナン・ドイルによる「シャーロック・ホームズシリーズ」の短編『マスグレーヴ家の儀式』には、かつてから矛盾があると言われてきました。
そんな「マスグレーヴ家の儀式」の舞台を再現し、暗号の解読と宝探しのイベントが開かれるところから物語は始まります。

密室の中で見付かった死体、たくさんの食べ物が散らばっている部屋で見付かった死体。一体誰がなんのためにこんなことをしたのでしょうか……?

トリックメーカーと言われる柄刀氏らしい度肝を抜くようなトリックと不可解な死の演出が見どころです。
作中に登場するシャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)たちと一緒に、ぜひ謎を解いてみてくださいね。

 

読めばきっとハマるクローズド・サークル

助けがすぐにこれない場所や、閉鎖空間。いつ自分が殺されるかもしれないなかで生まれる緊迫した心理状況にきっとハラハラすること間違いなし!

ぜひ一度手にとってみてはいかがでしょう。

もうちょっと狭い空間も楽しみたいあなたには……