ブックオフオンラインコラム
ブックオフオンライントップへ
ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > ミステリー小説 > 「日常の謎」に挑め!血なまぐさくないミステリー小説のおすすめ4選

「日常の謎」に挑め!血なまぐさくないミステリー小説のおすすめ4選


light-mystery

「バラバラ殺人」や「密室殺人」。

ミステリー小説と聞いた時、こういった血なまぐさい殺人事件を連想する方も多いのではないでしょうか。けれども中には、人が死なない「日常の謎」を描いた作品があります。

ちなみに日常の謎とは「お父さんの靴下が消えた! あっ、あんなところに。でもなぜあんなところに?」といったような日常生活に潜む謎を紐解くジャンルです。もっともこれは筆者が考えたへっぽこな謎で、出版されているものはもっと優れた上質な謎が用意されているため、そこは誤解なきようお願いいたします。

ところで、日常の謎の魅力は、現実の延長線上にあるところです。殺人事件となると、話が大きすぎて現実離れした印象を受け物語に入りこめない方もいるかもしれませんが、日常の謎の場合、その心配は御無用です。

そこでここでは、日常の謎をテーマにした傑作ミステリー小説を四作品紹介していきます。

 

氷菓』/ 米澤穂信

light-mystery1

◆あらすじ◆

「やらなくていいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に、だ」(8ページより)
と、こんな台詞を口にするのは神山高校一年生の折木奉太郎。彼は姉の勧めで、古典部に入部します。そんな折木の元に古典部の仲間によって次々と不思議な謎が持ち込まれます。それは「思いがけず作られた密室の謎」や「毎週借りられる不思議な本の謎」などなど。「省エネ」をモットーに生きる折木は渋々といった具合にそれらの謎を解いてみせます。そして終盤に折木の元へ持ち込まれる古典部の文集に込められた謎。それを解き明した時、伏せられていた過去が浮き彫りになり、話はほろ苦い結末を迎えることとなります。


シリーズ累計発行部数150万部を突破している人気シリーズの第一弾。本作は日常の謎と青春をかけ合わせたミステリー作品となっています。連作短編の構成で、描かれる謎はどれも魅力的なものばかりです。

ただ、本作は謎解きに終わらないところに大きな魅力があります。精緻な文体で描かれる心情描写や思春期ならではの人間関係の妙。それが青春小説としても上質なものに仕上げています。

青春小説を読みたい方にもおすすめできる一作です。

■『氷菓』米澤穂信(角川文庫)
〈古典部〉シリーズ

 

チルドレン』 / 伊坂幸太郎

light-mystery2

◆あらすじ◆

独特の哲学を持ち、好き放題立ちまわり、周囲を振りまわす男陣内。彼の周りには不可思議な謎で溢れています。それは「時が止まる場所の謎」や「部屋から人が消えた謎」や「自分だとばれずに人を殴る方法」などなど。それらを解き明かした時、物語はピースがそろったパズルのように完全な形となります。


本作は伊坂幸太郎が贈る日常の謎ミステリー。ばらばらな時系列から五つの謎が描かれる連作短編小説です。

本作は、「時が止まる場所」など一見して目を惹くような謎だけではなく、登場キャラクターにも魅力が詰まっています。トリックスター的な役割を果たす陣内はもちろん、謎を解き明かす盲目の青年永瀬、家庭裁判所の調査官武藤など、脇を固めるキャラクターも個性的で魅力が溢れています。

読み味は爽快で、落ち込んだ時に読むとパワーをくれる、そんな小説となっています。

■『チルドレン』伊坂幸太郎(講談社文庫)

 

春期限定いちごタルト事件』 / 米澤穂信

light-mystery3

◆あらすじ◆

「小市民」としてつつましやかに生活をしたい高校一年生の小鳩君と小佐内さん。そんな彼らは協力して「小市民」を目指します。「小市民」たるもの人生に謎は不要。けれども、小鳩君の目の前に度々現れる日常の謎たち。小鳩君は持ち前の探偵脳で、ついついその謎を解いてしまいます。彼らが「小市民」になれる日はくるのか、あるいは既に「小市民」なのか――。


少し変わった少年少女と日常の謎を描く「小市民」シリーズ第一弾。本作は、小鳩君と小佐内さんが高校一年生になったところからはじまります。連作短編小説となっており、描かれる日常の謎は「美味しいココアの作り方」や「ポシェットの行方」など計五つ。どれも論理的な解決と、思わず唸るような真相が用意されています。

ちなみに本作の魅力はそれらの謎に加え、作品に流れる空気感にもあります。本作は軽妙な文体で展開され、登場人物達もどこかコミカルでユニーク。けれども話の裏では思春期特有の煮え切らない悩みなどが漂っていて、どことなく切ない雰囲気で満ちています。

ユニークながらほろ苦い読み味の本作。ノスタルジックな気分に浸りたい人には特におすすめです。

■『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信(創元推理文庫)
〈小市民〉シリーズ

 

青空の卵』 / 坂木司

light-mystery4

◆あらすじ◆

普通のサラリーマンの「僕」こと坂木司。彼には鳥井真一という引きこもりの親友がいます。お人好しの坂木と他人に心を開かない鳥井。彼らを取り巻く日常の謎。それらを引きこもり青年鳥井が持ち前の洞察力で解き明かしていきます。謎を解き明かし見えてくる真理。謎がもたらす人との出会い。それらを通して、坂木と鳥井は少しずつ成長していきます。


本作は五つの日常の謎で構成された連作短編集となっています。そして人間心理を巧みに絡めた謎が多いところが作品の特徴です。「男を襲う暴漢の正体」や「盲目青年のストーカー」などなど、これらの謎を解き明かした時、思わず考えさせられるようなメッセージが浮かびあがってきます。さらに坂木と鳥井の友情や謎を通して出会う人々との交流もしっかり掘り下げられています。

謎解きに終始せず、人間心理にスポットを当てた本作は、ヒューマンドラマとしても完成度が高い作品となっています。

■『青空の卵』坂木司(創元推理文庫)

 

まとめ

日常の謎ミステリーは、派手さに欠けると言われることがあります。しかし上述した四作に関しては地味ということはありません。上質な謎に加え、心情描写やキャラクター、作品の雰囲気が補ってあまりあるほどの魅力を醸しだしているからです。ですからミステリー読みにもミステリー初心者にも自信を持っておすすめすることができます。

まだ読んでいない方は一度手にとってみてはいかがでしょうか。

 

【おすすめ記事】
気軽に楽しめるミステリー本をご紹介しています。

 

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。