大人向けのブラックユーモア溢れる絵本|子供の読み聞かせにはご注意を
更新日:2018/12/17
絵本は子供だけでなく、その挿絵の美しさや文章の表現力から、大人も惹きつける魅力に溢れています。本屋さんに並ぶ絵本を見渡してみると、なかには子供に読ませるには戸惑ってしまうような絵本も……。
ここはちょっと不気味な絵本の世界の入口。絵本たちがあなたを手招きして待っていますよ。
大人になった今だからこそ感じる恐怖や違和感が人々を魅了する、ブラックユーモア溢れる絵本を紹介します。
本当は誰しも、残酷なものに惹かれる闇を抱えているのかもしれませんね。
では、先へ進みましょう。
あ、そうそう。くれぐれもお子様に読み聞かせるときにはご注意を……。
『自殺うさぎの本』
『自殺うさぎの本』
アンディ・ライリー(著)、青山出版社
とにかくさまざまな方法で自殺しようとするうさぎの絵本です。
すっとぼけた顔をしたうさぎがバンジージャンプにハサミを持参したり、太ったおじさんが座ろうとする椅子の脚の下にいたり……。
なぜそこまでして自殺しようとするのでしょうか……。
シニカルな笑いを命がけで取りに行こうとしているのか、はたまた本当に自殺しようとしているのか。
挿絵は可愛らしく、気持ち悪い描写はありませんが、思わず「やめてー!」と叫びたくなる心理的な痛みを感じてしまうことでしょう。
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『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
エドワード・ゴーリー(著)、ヒレア・ベロック(著)、柴田元幸(訳)
河出書房新社
タイトル通り、悪いことをした子供たちに罰が下されるお話です。
無邪気に悪いことをする子供たちに淡々と罰が下される様子は、トラウマになりそうなほど残酷です。
「言うことを聞かないとこうなるよ」と、大人が子供を諭すときに読み聞かせようとするものとしては、少々ブラックすぎるかもしれません。
しかし、ヒレア・ベロック氏の詩がテンポよく訳されていて、繊細なイラストはもちろん文章も魅力的な作品です。
『だから?』
『だから?』
ウィリアム・ビー(著)、たなかなおと(訳)
セーラー出版
お父さんが何をしても「だから?」と興味を持とうとしないビリー。
ビリーを喜ばせようと、お父さんもあの手この手と奮闘しますが……。
何にも興味を示さないビリーに待ちうける衝撃的なラストには、大人でさえ放心状態になってしまいそう。
小説でこの手法は納得できますが、シンプルで可愛い挿絵入りの絵本では斬新。意外性がありすぎて、きっと誰もが驚くはずです。
刺激が強くてゾッとする、その一言に尽きます。
『オイスター・ボーイの憂鬱な死』
『オイスター・ボーイの憂鬱な死』
ティム・バートン(著)、狩野綾子(訳)、津田留美子(訳)
アップルリンク/河出書房新社
「チャーリーとチョコレート工場」などで知られる映画監督ティム・バートン氏が手掛けた『オイスター・ボーイの憂鬱な死』。
何かしらの不自由を抱えた少年少女たちの物語が短い詩で綴られています。
子供の無邪気さと、子供ゆえの残酷さが融合して生まれる不穏な空気が面白い作品です。
ブラックユーモア溢れる詩と、ティム・バートン氏独特のダークな挿絵は眺めているだけでも楽しいはず。
また、登場人物が不幸な最後を迎えても、その表現はキャラクターに対する愛情に溢れています。
『かがみのなか』
『かがみのなか』
恩田陸(著)、樋口佳絵(絵)、東雅夫(編集)
岩崎書店
身の回りの至るところに置いてある鏡にまつわる物語。
本作は「怪談えほんシリーズ」の1作。モンシロチョウ、女の子の表情、そして鏡。絵の1つ1つが読者の不安を煽ります。
鏡は自分を映し出す便利なものですが、なぜだか分からない不気味さを合わせ持っていますよね。
それは、あの小さな枠の中に別の世界があるからなのかもしれません。
鏡の中の自分は、本当に自分? ほら、今、違う動きをしなかった?
『人殺しの女の子の話』
『人殺しの女の子の話』
西岡兄妹(著)、青林工藝社
理由もなく「人を殺してみたい」と思った女の子は、大好きな母親を……。
タイトルからして確実に穏やかではない『人殺しの女の子の話』。
おそらく何の不自由なく生活してきた女の子が、なぜ母親を殺してしまったのでしょうか。
物語全体は淡々としていますが、女の子の感性が理解しづらいからこそ、怖さや不気味さを感じるのかもしれません。
まさに、子供に読ませることのできない大人向けの絵本です。
『なおみ』
『なおみ』
谷川俊太郎(著)、沢渡朔(写真)、福音館書店
6歳の「私」と、日本人形の「なおみ」はとても仲良し。
2人が本当の友達のように遊ぶ様子が、写真と言葉で綴られています。
人形のなおみは、「子供の時間」を表現したもの。語ることはなく、成長することもなく、ただ静かに女の子に寄り添います。
そして、変わるはずはないなおみの表情は、なぜか豊かで不気味です。
「私」が成長するからこそ、衝撃的な最後を迎えます。
子供の頃の一瞬の時間を、かけがえのないものだと教えてくれるでしょう。
『終わらない夜』
『終わらない夜』
セーラ・L・トムソン(著)、ロブ・ゴンサルヴェス(絵)、金原瑞人(訳)
ほるぷ出版
幻想的な雰囲気が素敵な『終わらない夜』。よく見るとだまし絵がところどころに描かれています。
「想像してごらん」と、夜を舞台にした詩が唄われており、ページを開くとそこには静寂の世界が広がっています。
まるで絵画のような挿絵なのですが、どことなく不気味さや怖さが感じられるタッチです。
それを煽るような詩がさらに想像力を掻き立て、夢と現実の狭間に陥ってしまいそう。
絵の美しさに見とれてしまいそうですが、じわじわと怖さが漂う作品です。
『もじゃもじゃペーター』
『もじゃもじゃペーター』
ハインリッヒ・ホフマン(著)、飯野和好(絵)、生野幸吉(訳)
ブッキング
19世紀のドイツで、子ども向け絵本として発刊された『もじゃもじゃペーター』。
表紙からも、不気味な雰囲気が漂っていることが分かります。
大人の言ったことを聞かなかった子供たちに、恐ろしい罰が与えられるお話です。
「悪いことをしたらこんなことになるよ」ということを教えるための絵本だそう。
しかしその罰はなんとも残酷。指しゃぶりをする子は指を切り落とされ、スープを食べない子は棒のように痩せ細ってしまう……。
レトロな挿絵も相まって、大人ですらトラウマになりそうな怖さがあります。
『どこいったん』
『どこいったん』
ジョン・クラッセン(著)、長谷川義史(訳)
クレヨンハウス
人間のような目をしたクマが1匹佇む表紙がどことなく不気味な『どこいったん』。本作はあえて関西弁で翻訳されています。
赤い帽子をなくしてしまったクマが、森の仲間たちに帽子の行方を尋ねて回ります。
誰に聞いても「しらんなぁ」と言われ、赤い帽子をかぶったウサギに聞いてみても「しらんで、とってへんで」と言われるのです。
「ふーん」と、クマも特に気にする様子なく次の動物のもとへ……あ!
大人になったからこそ分かる衝撃的なラストに、思わずゾッとしてしまいます。
絵本だからこそ怖さが倍増する
いかがでしたでしょうか?
絵本は子供のためのものと思いがちですが、なかには子供に見せるのをためらってしまうような表現の絵本もあります。
大人になればなるほど非論理的なもの、理解のできないものに「恐ろしい」と感じませんか?
今回ご紹介した絵本をどこかで見つけた際は、怖がらずにぜひ扉を開いてみてくださいね。
絵本はいつでもあなたを待っていますよ……。
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