エドワード・ゴーリーの世界に大人が夢中!世界一残酷な絵本作家とは?
更新日:2019/6/6
「世界一残酷な絵本作家」と呼ばれる絵本作家、エドワード・ゴーリーをご存知ですか?
世界中に多くのファンがおり、あらゆる著名人も虜にしている作家。日本でも展覧会が数度開催されました。
決して子供向けとは言えない絵本を多数世に送り出したエドワード・ゴーリー。そんな彼の世界に、一歩足を踏み入れてみませんか?
目次
翻訳されている絵本作品
└『うろんな客』
└『むしのほん』
└『優雅に叱責する自転車』
└『蟲の神』
└『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
└『華々しき鼻血』
└『まったき動物園』
└『題のない本』
└『ウエスト・ウイング』
└『不幸な子供』
└『おぞましい二人』
└『敬虔な幼子』
└『憑かれたポットカバー』
ゴーリーを知るならこの本
└『エドワード・ゴーリーの世界』
└『どんどん変に…』
ゴーリーが集めた恐怖の物語
└『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』
エドワード・ゴーリーとはどんな人物?
「世界一残酷な絵本作家」として有名なアメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリー。猫を愛し、生涯独身を貫いた人物です。
その作品は、びっくりするような残酷なストーリーが多く、細いタッチで描かれるイラストが不気味な雰囲気を醸し出しています。人(特に子供)が死んでしまうストーリーも多いんですよ。
しかし表紙を開いてその世界に足を踏み入れていくと、これが摩訶不思議。がっちり心を鷲掴みにされてしまうんです!
そんな風変わりな絵本を生み出したゴーリーは、75歳で亡くなる2000年まで多くの作品を残しました。
ゴーリーには、「エドワード・ゴーリー」以外にも、アナグラムを用いたペンネームがあります。既存の出版社では自分の独特の世界を表現するのに限界があったと、それらを駆使して私家出版も行っていました。
ひっそりと出版される私家出版の作品のおかげで、世界中にはコレクターもたくさんいるのだそうです。
日本における有名なゴーリーファンの方々
日本にもゴーリーファンはたくさんいます。
たとえば、ゴーリー研究、コレクションの第一人者である濱中利信さん。彼はゴーリーの残した貴重な原画や私家出版の本など、多くのコレクションを所持しているそうです。
他にも、イラストレーターの長崎訓子さん、ゴーリー作品の和訳を多く手掛けた翻訳家の柴田元幸さん、詩人の服部みれいさん、絵本作家のきたむらさとしさん、小説家の吉本ばななさん、江國香織さんなど。
数多くの人がゴーリーの世界に魅せられているようです。
ゴーリーの作品を手に取ってみると、どこか彼らの作品にも通じるものが見つかるかもしれません。
翻訳されているエドワード・ゴーリー作品
さて、ではゴーリーの絵本には、どんな作品があるのでしょうか? 順番にご紹介します。
奇妙な生き物が登場『うろんな客』
『うろんな客』
河出書房新社
天候が荒れていた日。とある家にやってきたのは、なんだかよくわからない生き物の客。
声をかけても返事はしない、食事の用意をすれば皿まで食べちゃう、本を片端から破くなど、奇行を繰り返します。
しかし、家族は決して追い出そうとしません。あなたは、この客が「誰」だと思いますか?
突然現れた黒い虫『むしのほん』
『むしのほん』
河出書房新社
仲良く暮らしていた赤、青、黄色の虫たち。ところがある日、黒い虫が現れたことでその暮らしは一変してしまいます。
果たして彼らを待ち受ける結末とは……?
ゴーリー作品には珍しい、とてもカラフルな作品。しかしながら、現代社会にも通ずる考えさせられる絵本です。
乗れない自転車?『優雅に叱責する自転車』
『優雅に叱責する自転車』
河出書房新社
喧嘩をしたエンブリーとユーバートの前に現れたのは、へんてこりんな自転車でした。
ペダルもなければチューブもブレーキもない。乗ろうと思っても乗れない自転車に乗って、2人は旅に出ます。
「火曜日の翌日で水曜日の前日」という隙間の1日におきた摩訶不思議なできごとを描いた物語です。不思議な余韻を感じられます。
消えた少女はどこに……?『蟲の神』
『蟲の神』
河出書房新社
夕方の公園で遊んでいたはずのミリセントが、突然消えてしまいます。
ミリセントが連れて行かれたのは、遠い遠い地の果ての朽ちかけた館。蟲の生贄になってしまったミリセントを待ち受ける運命とは……?
子供が悲惨な目にあう、ゴーリーらしさ溢れる作品です。翻訳された文章が、しっかりと韻を踏んでいるのもポイントですよ。
教訓です。『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
河出書房新社
「悪いことをするとバチがあたるよ」
誰もが子供のころに耳にした言葉ですね。この教訓をもとに作られたヒレア・ベロックの詩に、ゴーリーがイラストをつけたのがこの作品、『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』です。
ゴーリーのシュールで独特な世界が、言葉の意味をより際立たせています。
副詞が紡ぐ物語『華々しき鼻血』
『華々しき鼻血』
河出書房新社
アルファベットAからZ。これらが頭文字の副詞を持った短文が紡ぐアルファベットブック。選んだ26の副詞からはゴーリーのセンスを感じられます。
たとえば「Aimlessly」。
(あ)てどなく こだちを さまよう。「She wandered amang the trees Aimlessly.」
など。
物語だけでなく、言葉遊びのゲームとしても楽しめる1冊です。
奇妙すぎる生き物の数々『まったき動物園』
『まったき動物園』
河出書房新社
こちらもアルファベットブック。AからZまで、順番に奇妙な生き物が紹介される不思議な「幻獣辞典」です。
可愛くはないけれど、なんだか興味を惹かれるユニークでシュールな生き物ばかり。まるで短歌のような訳文がリズミカルで楽しい本です。
擬音と窓の外『題のない本』
『題のない本』
河出書房新社
なんだかよくわからない言葉たちと、窓の外で繰り広げられる不思議な光景を描いた物語。シュールすぎる、でもなんだか病みつきになってしまう作品です。
考えて、理解しようと思ってはいけません。音と絵に魅せられてくださいね。
この建物で何が起こったのか?『ウエスト・ウイング』
『ウエスト・ウイング』
河出書房新社
いったいどこにあるのかわからない西棟の不穏な一場面が描かれます
文章は一切なし! 自由に想像できるドキドキ感、何も伝えられない恐怖感、相反する感情が混じり合ったゴーリー作品のなかでも特に奇妙な作品です。
「よく分からない、だから怖い」そんな想像力を掻き立てられます。
不幸でしかない少女『不幸な子供』
『不幸な子供』
河出書房新社
ゴーリー版の「小公女」とも言われる作品。
どんなに辛くて苦しくて悲しくても、最後にはきっと幸せになれる……なんていうお決まりのストーリーは、あれよあれよと覆されます……。
少女に襲いかかる不幸の連続。最後まで全く救いようのない、少女の不幸を淡々と見つめることしかできないのがもどかしくも切ないです。
実際の事件を元に描かれた絵本『おぞましい二人』
『おぞましい二人』
河出書房新社
イギリスで実際に起こった「ムーアズ殺人事件」がモデルとなった絵本です。
「ムーアズ殺人事件」とは、犯人の男女が幼い子供5人を残虐な方法で殺し、荒野に遺棄した恐ろしい事件のこと。ゴーリーはこの事件に心底動揺させられたそうです。
後味の悪い作品ですが、ゴーリーのこだわりを感じられます。
行き過ぎた敬虔の果てとは……『敬虔な幼子』
『敬虔な幼子』
河出書房新社
心が汚れているにも関わらず、神に愛されていることを知った少年ヘンリー。ヘンリーは、それ以来信仰に励みます。真摯に神を信じた彼を待っていたものとは……。
敬虔(けいけん)とは、神や仏に対し、深く敬って態度をつつしむさまのこと。なんとも皮肉な物語で、純粋すぎるヘンリーからは狂気すら感じられます。
あの名作のパロディ『憑かれたポットカバー』
『憑かれたポットカバー』
河出書房新社
ゴーリー版の「クリスマス・キャロル」。誰もが知っている「クリスマス・キャロル」の物語は、ゴーリーの手にかかるとどんな物語に姿を変えるのでしょうか。
ゴーリーらしい不穏さもありながら、なんだか可愛い作品です。オールカラーで楽しめますよ。
ゴーリーを知るならこの本
さて、「もっとゴーリーについて知りたい!」というあなたにおすすめの本もあります。
ファンブック的な本『エドワード・ゴーリーの世界』
『エドワード・ゴーリーの世界』
柴田元幸、江国香織(著)、浜中利信(編)
河出書房新社
ゴーリーの人物像や作品の解説が書かれたファンブック的な1冊。初めてゴーリーの作品を読む方にもおすすめです。
浜中利信さんが編集を担当した作品のカタログはもう、圧倒されます。
眺めているだけでも楽しいですよ。
インタビュー集『どんどん変に…』
『どんどん変に…』
カレンウィルキン(編)、小山太一、宮本朋子(訳)
河出書房新社
こちらはゴーリーのインタビュー集。仕事の話はもちろん、好きな本のことや、愛する猫たちのこともお話されています。
残酷と言われる絵本を描いている人物は、どんな性格で、どんなものを愛し過ごしていたのか? ぜひチェックしてみてくださいね。
ゴーリーが集めた恐怖の物語
『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』
『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』
エドワード・ゴーリー(編)、河出書房新社
ゴーリーが選んだ怪談を集めた本作。呪い、幽霊、怪奇現象など、ホラー好きにはたまらないお話が12作も楽しめます。
世界一残酷な絵本作家が選ぶ怖い話。気になりますね……!
ぜひエドワード・ゴーリーの世界へ……
エドワード・ゴーリーの絵本を見かけたら、ぜひともお手に取って見てください。
きっと、貴方も独特で不思議な世界の虜になること間違いなし!
不気味で残酷、そしてシュール……だけど漂う優雅な雰囲気。そんなゴーリーの世界に浸ってみてください。
【おすすめ記事】ただの作り話では終わらない『モンタギューおじさんの怖い話』