誰にでもあった新人時代。あの漫画家のデビュー作を読もう
自分の好きな漫画家のデビュー作となると知らない人も多いのでは? 誰もが知っている人気漫画家も、みんな初めは新人でした。
自分の好きな漫画家達のデビュー作を知っていますか? 今回は沢山の漫画家の中から特に有名な人気漫画家のデビュー作をご紹介します。
荒木飛呂彦『武装ポーカー』
『ゴージャス★アイリン』より『武装ポーカー』
荒木飛呂彦(著)、集英社
舞台は西部開拓時代のアメリカ、保安官が不在の空白地帯。そこに住むのは「ドン・ペキンパー」という男。この男、相当悪い男なんだとか。
ある日ペキンパーが酒場で出会った新顔の「マイク・ハーパー」。実はこの二人、相当な腕前を持つガンマンであり、賞金首だったのです。
二人のガンマンの懸賞金をかけた”命がけのポーカー”とはいったい? そしてこの大勝負の行方は……
『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦さんのデビュー作。子どものころから漫画に親しんでいた荒木さん。
1980年に第20回手塚賞に準入選したデビュー作がこの『武装ポーカー』です。この作品は荒木さんの初期の作品を集めた短編集『ゴージャス★アイリン』に掲載されています。
『ジョジョの奇妙な冒険』が好きな方もぜひチェックしてみては。
井上雄彦『楓パープル』
『カメレオンジェイル』より『楓パープル』
井上雄彦(著)、創美社/集英社
ある日、北高の番長赤木に絡まれて困っている女子を助けた主人公の流川。それをきっかけに、流川は赤木に目をつけられてしまいます。
流川が主将を務めるバスケ部の練習中に殴り込みにきた赤木。しかし流川のある言葉でその場を去っていき、一件落着かと思いきや、赤木軍団を引き連れバスケ部の地区大会にやってきて……
『SLAM DUNK』、『バガボンド』、『リアル』などで根強い人気の井上雄彦さん。デビュー作は1988年、手塚賞入選の『楓パープル』です。『SLAM DUNK』と同じくバスケットボールの世界を描いています。
井上さんは高校時代にバスケットボール部で主将をつとめていた経験もあるので、リアリティをこめてバスケットボールの世界を描くことができたのでしょう。この漫画で手塚治虫先生をはじめ、ちばてつやさん、本宮ひろ志さんという名だたる漫画家からその才能を認められました。『楓パープル』は井上さん初の連載作品『カメレオンジェイル』の第1巻と新装版に収録されています。
鳥山明『ワンダー・アイランド』
『鳥山明○作劇場 vol.1』より『ワンダー・アイランド』
鳥山明(著)、集英社
『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』など、その作品を知らない人はいない人気漫画家の鳥山明さんのデビュー作『ワンダー・アイランド』。
鳥山さんが漫画家を目指し「週刊少年ジャンプ」に数回応募してチャンスをつかんだ作品です。1978年「週刊少年ジャンプ」に読み切り作品として発表されました。
ワンダー・アイランドをさまよう元特攻隊の古巣二飛曹が主人公のギャグ漫画ですが、なんと、当時の読者アンケートでは最下位だったとか。
しかしこの作品を読めば、デザイナーだった鳥山さんの画力が初めから際立っていること、そしてキャラクターのテイストもその後の作品と通づるものがあると分かります。
1979年には『ワンダー・アイランド2』も発表されました。この作品は、鳥山明さんの読み切り作品などを収録した漫画短編集『鳥山明○作劇場 vol.1』に収録されています。
水木しげる『ロケットマン』
『貸本漫画集』より『ロケットマン』
水木しげる(著)、講談社
『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめ、妖怪漫画やちょっと不思議な世界を描く日本の漫画家を代表する水木しげるさん。そんな水木さんのデビュー作はどんなものだったのでしょうか。
主人公は日本初ノーベル賞科学者の上津戸博士の息子、上津戸新一。突如夜空に現れた「第二の月」の調査のためにロケットに乗った上津戸博士は、何者かの陰謀によりロケットを墜落させられてしまいます。
死んだはずの上津戸博士ですが、墜落する前に宇宙でなぞの生物と接触していたため、「グラヤ」という怪物として復活。そして上津戸博士を墜落させた怒雷博士のロボットと対決することに。
そんな上津戸博士を助けるために、ヒーロー「ロケットマン」が現れて……
水木さんのデビュー作である『ロケットマン』は、紙芝居を書いていた水木さんが貸本漫画家に転身して初めて書いた漫画で、1958年に貸本向け単行本として出版され、『貸本漫画集』に収録されています。
漫画評論家も絶賛したという本作は、その後の水木作品に通ずる作品に仕上がっています。
藤子・F・不二雄『天使の玉ちゃん』
『藤子・F・不二雄大全集 UTOPIA』より『天使の玉ちゃん』
藤子・F・不二雄(著)、藤子 不二雄A(著)、小学館
羽をなくして下界に降りてきた天使。羽がないと雲の上の世界に帰れない……困り果てている天使に声をかけたのは親切な兄弟だった。
玉ちゃんと人間たちとの交わり、そして故郷へ帰るため奮闘する姿を描いた4コマ漫画です。
『ドラえもん』の作者である藤子・F・不二雄こと藤本弘さんと、『忍者ハットリくん』の作者である藤子不二雄Aこと安孫子素雄さんのデビュー作『天使の玉ちゃん』。
小学校のころから手塚治虫にあこがれて漫画を描いていた二人が合作したこの作品。毎日小学生新聞に手紙をつけて投稿したのが編集部の目にとまり、1951年に高校3年生という若さでデビューを果たします。
若いころからの漫画への情熱が、後のヒット作を生み出したのですね。この作品は『藤子・F・不二雄大全集 UTOPIA』に収録されています。
赤塚不二夫『嵐をこえて』
『「嵐をこえて」「嵐の波止場」』より『嵐をこえて』
赤塚不二夫(著)、小学館
『天才バカボン』で知られる漫画家、赤塚不二夫さんは『漫画少年』へ投稿した漫画が石ノ森章太郎さんの目にとまったことで、石森さん主宰の同人誌に参加していました。そこへ出入りしていたつげ義春さんにすすめられてプロの道へ、1956年、21歳で『嵐をこえて』でデビューします。
主人公はおてんば仲良し姉妹。明るい少女たちが次々と訪れる困難を乗り越えていく物語は、上品な少女漫画の形をとりながらも赤塚ワールドの原点が垣間みられる作品になっています。それまで少女漫画を書きながら、自分の表現ができずに悩んでいた赤塚さんですが、この作品でギャグ漫画の世界での才能が開花しました。
デビュー作を読むと漫画家への理解が深まる
今回ご紹介した中にお気に入りの漫画家はいましたか? デビュー作はもちろん、デビュー作から順に追って好きな漫画家の作品を読んでみると、その人が表現したい世界への理解がより深まり、いろいろな発見がありますよ。
今回ご紹介した漫画作品
『ゴージャス★アイリン』より『武装ポーカー』
荒木飛呂彦(著)、集英社
『カメレオンジェイル』より『楓パープル』
井上雄彦(著)、創美社/集英社
『鳥山明○作劇場 vol.1』より『ワンダー・アイランド』
鳥山明(著)、集英社
『貸本漫画集』より『ロケットマン』
水木しげる(著)、講談社
『藤子・F・不二雄大全集 UTOPIA』より『天使の玉ちゃん』
藤子・F・不二雄(著)、藤子 不二雄A(著)、小学館
『「嵐をこえて」「嵐の波止場」』より『嵐をこえて』
赤塚不二夫(著)、小学館