瀬尾まいこさんの小説おすすめ10選!癒やされるやさしい言葉の世界
更新日:2019/7/3
読者のみなさんのなかには、ストレス解消を求めて読書をする人もいるのではないでしょうか。
「心のビタミン」とも呼ばれる読書。
数多くの本のなかでも、優しく温かみのある言葉で、心身ともに癒やしてくれるのが瀬尾まいこさんの作品。
読んだことがない方も、一度手に取ってみてはいかがでしょう。
五臓六腑に浸みわたりますよ。
血のつながらない母子家庭の親子の絆
『卵の緒』
新潮社ほか
僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7’s blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。(新潮社文庫版 表紙裏)
瀬尾さんのデビュー作であり、第7回坊っちゃん文学大賞受賞作。
表題作の『卵の緒』は血の繋がりがない母子家庭を描いたもの。複雑なテーマなので、読むと悲しい気持ちになるのかと思いきや、あたたかく優しい気持ちで読める作品に仕上がっています。
この点からも、瀬尾さんの表現力の秀逸さを感じさせられます。
明るく思いやりがあり、ユーモアのあるお母さんのキャラクターもまた良いのです。主人公をひたむきに愛する姿に、ホロリとさせられますよ。
元OLの占い師が背中をおしてくれる
『強運の持ち主』
文藝春秋
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見えるという青年…。じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。(文藝春秋文庫版 表紙裏)
元OLの占い師と、占い師のもとに訪れた人たちの交流を描いた短編集。
風変わりな相談内容も面白いですし、「占い師がそんなことを言っていいの?!」と笑える箇所も多く、読んでいて楽しい一冊です。
占いは、事実を伝えるのがすべてではなく、相談者がより良くなれるように、踏みとどまっている足を進められるように、背中を押すためにある。信じるも信じないも自分次第なのですね。
読み終わった後、この先きっといいことがあるよ、元気を出して、と言われた気がしました。
兄弟って素敵だな……
『戸村飯店 青春100連発』
文藝春秋ほか
大阪の超庶民的中華料理店、戸村飯店の二人の息子。要領も見た目もいい兄、ヘイスケと、ボケがうまく単純な性格の弟、コウスケ。家族や兄弟でも、折り合いが悪かったり波長が違ったり。ヘイスケは高校卒業後、東京に行く。大阪と東京で兄弟が自分をみつめ直す、温かな笑いに満ちた傑作青春小説。坪田譲治文学賞受賞作。(文藝春秋文庫版 表紙裏)
坪田譲治文学賞受賞作。
兄・ヘイスケは、スマートで女性にモテるタイプ。弟・コウスケは、愛嬌がありみんなから愛されるタイプ。性格が違う2人は、互いを羨み妬むあまり、すれ違いの関係になっていました。
高校卒業後、ヘイスケは東京へ。その裏側には、大阪に馴染めない気持ちと、自身のコンプレックスが隠されており……。
ラストシーンには思わず涙。20歳前後の微妙な心の動きを思い出しますよ。兄弟って本当にいいものですね。
温かさに包まれるような短篇集
『優しい音楽』
双葉社
駅でいきなり声をかけられ、それがきっかけで恋人になったタケルと千波。だが千波は、タケルをなかなか家族に紹介しない。その理由にタケルは深い衝撃を受けるが、ある決意を胸に抱いて一歩を踏みだした―表題作「優しい音楽」。つらい現実を受けとめながらも、希望を見出して歩んでゆく人々の姿が爽やかな感動を呼びおこす。優しさに満ち溢れた瀬尾ワールド全開の短編集。(表紙裏)
瀬尾さんの温かみが存分に味わえる短編集。
表題作の「優しい音楽」は、恋人同士なのに、家族に彼氏を紹介したがらない女の子を描いたもの。その理由は衝撃的なものでした。その理由を知ってからの男の子の行動には泣けます……。
家族が一体となって元気になっていく姿には心が揺さぶられますよ。
他に収録されている「がらくた効果」は、同棲している相手が男性を拾ってきた、というストーリー。風変わりな設定なのに、日常の一コマとして描かれているのが、読んでいて心地よく、非常に面白いですよ。
仕事がしんどい時におすすめの1冊
『天国はまだ遠く』
新潮社
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。(表紙裏)
自殺に失敗した女性が、田舎暮らしを経て再生していく物語。
睡眠薬を飲んで自殺を図った主人公ですが、目がさめると頭はスッキリ。あれ?という展開から話は進んで行きます。
田舎の大自然、みずみずしい野菜、美味しいごはん。美しい夜空、規則正しい生活、優しい人たち。シンプルな暮らしが主人公を元気にしていきます。ですが、それだけでは終わらず……? 個人的には、予想もしていなかった結末でした。
仕事がしんどいと感じている人たちに、そっと手渡したい作品です。
4回親が代わってもほのぼの
『そしてバトンは渡された』
文藝春秋
主人公の優子は実の親が再婚と離婚を繰り返し、母親2人・父親3人を経験してしまいます。
この設定だけ見ると悲惨で心がすさむようなストーリーをイメージしますが、実際はほっこりするお話です。
どの親も愛情の示し方はそれぞれですが、主人公にそそぐ愛情が豊かなのは同じ。読んでいくうちに心がほのぼのとしてきますよ。
本作は2019年 本屋大賞を受賞。多くの人に愛される名作です。
【関連記事】2019年 本屋大賞決定!大賞・ノミネート作品をまるごと紹介!
駅伝大会出場を目指す選手たちの青春物語
『あと少し、もう少し』
新潮社
駅伝大会を目指す中学生たちが奮闘する青春ストーリー。
陸上部の名顧問が転勤になってしまい、代わりに来たのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学生最後の大会出場を目指してメンバーを募りますが……。
寄せ集めのようなメンバーですが、個性がしっかり描かれていて愛着が持てます。バラバラのように見える選手たちが懸命にたすきをつなぐ姿は感動ものです。
身近な人と食卓を囲む幸せ
『幸福な食卓』
講談社
吉川英治文学新人賞を受賞した作品。
佐和子の家族は、父親を辞めると言い出す父、家出をしているのに料理を届けにくる母、元天才児の兄と一風変わっています。佐和子にはボーイフレンドの大浦君がいますが……。
切ないながらもつながり、再生をしていく家族の姿を描いています。一番身近な存在の大切さがひしひしと感じられる作品です。
突然目の前に現れた年下の「兄」とは
『春、戻る』
集英社
結婚を控えたさくらの前に、兄だと名乗る青年が現れます。ところが、どう見てもその青年はさくらより一回りほど年下にしか見えません。しかし彼はさくらのことを驚くほどよく知っているのです。
さくらの日常にすっと入り込み、結婚相手の実家にまで馴染んでいく彼の正体と目的とは何なのでしょうか……。
ミステリー小説のような始まりですが、温かく優しい気持ちになれるお話です。後味が良く、この物語の世界に浸っていたいと感じさせてくれます。
助け合いながら成長していく二人
『僕らのごはんは明日で待ってる』
幻冬舎
高校最後の体育祭がきっかけで付き合い始めた、高校生の亮太と小春。毎日一緒に過ごし、幸せな未来を思い浮かべますが、小春に異変が生じ……。
二人が助けたり助けられたりしながら、人間として成長していく姿が描かれています。読み終わった後は心がホッとするような安心感がありますよ。
この作品は、中島裕翔さん・新木優子さんの主演により、2017年に実写化された作品です。脇を固めるのも、岡山天音さん・松原智恵子さん・片桐はいりさんと実力派が揃っています。映画もあわせて楽しんでくださいね。
瀬尾さんも、1つ1つの日常の場面が、映画になってキラキラした特別なものに変わり、主人公2人の真剣さが胸に迫るものになったと絶賛しています。
瀬尾まいこさんの作品に癒やされよう
瀬尾さんの描く作品は、すべて読後感が良く、気持ちが晴れやかになるものばかりです。
疲れている時にぜひ読んでみてください。
【おすすめ記事】落ち込んでいるときの特効薬!読むと元気が出てくるおすすめ作品
今回ご紹介した書籍
『卵の緒』新潮社ほか
『強運の持ち主』文藝春秋
『戸村飯店 青春100連発』文藝春秋ほか
『優しい音楽』双葉社
『天国はまだ遠く』新潮社
『そしてバトンは渡された』文藝春秋
『あと少し、もう少し』新潮社
『幸福な食卓』講談社
『春、戻る』集英社
『僕らのごはんは明日で待ってる』幻冬舎