『かもめのジョナサン 完成版』44年間封印されていた最終章でついに完結!
世界で4000万部を突破したベストセラー『かもめのジョナサン』。1970年に出版され、約50年。これまでどれだけの読者を虜にしてきたのでしょうか。
読書好きな方なら、一度は読んだことがある名作だと思いますが、2014年に最終章が追加され「完成版」としてリニューアルしていたことをご存知でしょうか?
今回のコラムでは「完成版」となった『かもめのジョナサン』を改めて紹介したいと思います。
正直なところ、『かもめのジョナサン』は個人的に大変感銘を受けた作品ということもあり、「完成版」を読むまでは複雑な気持ちでした。(名作であればあるほど、思い入れがあればあるほど、「リニューアル」されることに抵抗を感じる方は少なくないはず)
そして、読み終わった後は、あまりの結末の違いに、言葉が出ませんでした。
どちらの結末が「しっくり」くるかは、人それぞれ分かれると思います。賛否両論あるでしょう。
ですがそれでも、読んでいただきたいのです。人生に対して前向きな気持ちになれる、ワクワクさせてくれる、名著だと思いますので。
色々な人生経験を踏んだ大人になった今だからこそ、再度手にとってほしい一冊です。
『かもめのジョナサン 完成版』
『かもめのジョナサン 完成版』
リチャード・バック(著)、五木寛之(訳)
新潮社
「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消した後、残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく……。新たに加えられた奇跡の最終章。帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える!(新潮文庫版 表紙裏)
エサのために「飛ぶ」のではなく、純粋に「空を飛ぶ」ことに魅了されたかもめの物語。
誰よりも速く、誰よりも高く飛ぶことを目指して訓練を続けるジョナサン。周囲からは浮いてしまい孤高の存在となるも、ともに高みを目指す仲間たちに出会い、変わっていきます……。
見方によっては、自己啓発本でもありますし、組織デザインの本でもあります。ジョナサンの心の機微は、私たち人間を刺激し、共感を集め、心を揺すぶるのです。
また、いわゆる“金言”が多いのも、本書をベストセラーたらしめているゆえんでしょう。
きみの目が教えてくれることを信じてはいかんぞ。目に見えるものには、みんな限りがある。きみの心の目で見るのだ。すでに自分が知っているものを探すのだ。そうすればいかに飛ぶかが発見できるだろう。(新潮文庫版 p122)
これは、私が好きな一節です。この言葉だけでなく、本書に眠る金言たちに、私は数多く助けられてきました。
44年間封印されていた『かもめのジョナサン』の“Part Four”とは?
ところで、これまでの『かもめのジョナサン』と『かもめのジョナサン 完成版』とは何が違うのでしょうか?
違いは、最終章(Part Four)があるかないか、になります。
『かもめのジョナサン』は、Part Threeで終わっていました。おそらく、読者のみなさまにとって、お馴染みのあの結末です。
ところが……44年を経てPart Fourの存在が発表されたのです。
Part Fourは、作者が新しく執筆したのではなく、当時から既に存在していました。作者はPart Fourを執筆したものの、自分の考えていたことはPart Threeまでで充分語り尽くされていたこと、「ジョナサンの物語はこれで終った」と感じたことから、Part Fourをまるまるカット。
その結果、Part Fourはお蔵入りになってしまったのです。
当時のことを、作者はこのように回想しています。
わたしは『かもめのジョナサン』の物語にこの結末が必要だとは信じられず、どこかへ置きっぱなしにした。わたしたちが選び取った自由な生き方が、やがて規則と儀式によって少しずつ殺されていく物語を、わたしは拒否したのだ。そして、半世紀ほどの歳月が過ぎた。(新潮文庫版 p10)
Part Fourが世に発表されるキッカケとなったのは、作者の妻が「これ、おぼえてる?」と原稿を引っ張り出してきたことでした。そして、作者は数十年ぶりに当時の原稿を読み直したのです。
タイプの文字は消えかけていたが、言葉はわたしの精神のこだまであるように思われた。正確には、かつてのわたしの精神のこだま。これはわたしが書いたのではない。あいつが書いたのだ。あの時の、あいつが。
原稿を読み終った時、わたしはあいつの警告と希望の声を充分に聴いたと思った。(新潮文庫版 p10)
作者は過去の自分からのメッセージを受け取り、Part Fourを含む完全版を発表することを決意したのでした。
『かもめのジョナサン』の“Part Four”を少しだけネタバレ!
Part Fourがどのような内容なのか、気になる方も多いかと思います。そんな方のために、ほんの少しだけ内容をネタバレしたいと思います。
Part Fourでは、ジョナサンが姿を消してからの数年後が描かれています。
若いカモメたちの間で、ジョナサンは「伝説のカモメ」として、神のように讃えられていました。ジョナサンの言葉、しぐさ、目は何色だったかなど、些細なことを知りたがっている姿は、まるでアイドルのファンクラブのよう。
一方、<直接にジョナサンから学んだ生徒たち>は、そのような若いカモメたちに懐疑的でした。
なぜなら、若いカモメたちは、ジョナサンの表面的な部分にのみ気を取られ、「真に飛ぶことを求め」訓練を行ったり、努力を重ねることを怠っていたからです。
皆、練習にうんざりしており、飛ぶことを忘れていきました……。
ジョナサンの弟子たちは困惑するも、この流れを食い止めることができずにいました。そして……。
続きはぜひ書籍にてご確認ください。
今お話しした部分は、Part Fourの冒頭部分2~3ページに過ぎません。結末にぜひとも心を奪われてくださいね。