太宰治『人間失格』を読み解こう!漫画・映画・アニメで学ぶ文学
更新日:2019/9/12
太宰治が入水自殺でこの世を去る前に脱稿した『人間失格』。
本作は「太宰治の遺作」に位置付けられており、長年にわたって多くの読者に愛され続けています。
数ある小説の中でも「名作中の名作」と称されている『人間失格』ですが、読書をあまりしない方にとっては、「言い回しがちょっと難しい……」と感じるかもしれません。
そんなあなたのために! この記事では、小説以外で『人間失格』を読み解くことができる漫画や映画、アニメ作品をご紹介します。
そもそも『人間失格』って?
1948年(昭和23年)に書き上げられた『人間失格』は、小説家・太宰治の代表作のひとつに挙げられる中編小説です。
物語は、人間としての本心を悟られまいと道化を演じ、酒と薬と女に溺れていく大庭葉蔵(おおばようぞう)の手記を中心に進行。
自分と他人を偽って生きていく自らに「人間失格」の烙印を押すに至るまでの生き様が描かれています。
「恥の多い生涯を送って来ました」という一節は非常に有名です。愛情に飢えたまま育った太宰自身の背景が、作品に影響していると考えられています。
鬼才・古谷兎丸が描く現代版『人間失格』
古屋兎丸版『人間失格』
新潮社
小説『人間失格』の舞台を現代社会に移し描かれた本作。
物語は、新連載のネタに行き詰まった漫画家の古屋兎丸さんが、インターネットサイト「人間失格」を発見するところからスタートします。
そのサイトには3枚の写真とともに、「大庭葉蔵」の日記が書き込まれていました。興味を惹かれた古屋さんは、その日記を読み進めていくことになります。
引きつった笑顔を見せる6歳の葉蔵の写真、美少年へと成長した17歳の葉蔵の写真、まるで生気のない25歳の葉蔵の写真。
はたしてこの写真が意味するものはなんなのか――。
暗い内容であることに違いはありませんが、古屋版『人間失格』は普通の漫画としても楽しめます。
とにかく分かりやすい!『人間失格』
『人間失格 名著をマンガで!』
比古地朔弥(著)、学研
原作に沿った分かりやすい構成内容とイラストが特徴の漫画作品です。
幼少の頃から他者とのかかわりが苦手な大庭葉蔵を主人公に物語は進みます。
人間関係に恐怖を感じ、他者をまったく受け付けない葉蔵の内面の弱さ。そして、決して断ち切ることのできない酒と薬と自殺未遂……。
絶望の中で生きる意味を模索し、真の愛と幸せを追い求める葉蔵の姿を知ることができます。小学生や中学生にも読みやすいですよ。
人気ホラー作家が描く独特の雰囲気がクセになる『人間失格』
伊藤潤二版『人間失格』
小学館
「富江」シリーズなどで知られるホラー漫画家の伊藤潤二さんが描いた『人間失格』。
国内屈指のトップホラー作家による『人間失格』は、伊藤さんの独自解釈が取り入れられています。
小説版に沿った展開ながらも、怪しく、独特の怖さが醸し出されていますよ。
太宰が玉川上水での入水自殺の場面から第1話がスタート。本編は小説版同様、主人公の大庭葉蔵の物語がひも解かれていきます。
『人間失格』をより深く読み込みたい方や、より怪しさをまとった『人間失格』の世界に触れてみたい方におすすめです。
生田斗真、初主演作品!映画『人間失格』
映画版『人間失格』
(株)KADOKAWA
俳優の生田斗真さんが映画初主演を飾った『人間失格』。原作の発表から半世紀の時を超えて映像化されました。
大庭葉蔵役の生田斗真さんの他、煙草屋の看板娘ヨシ子役を石原さとみさん、葉蔵に酒と煙草、女などの遊びを教える堀木正雄役には伊勢谷友介さん、葉蔵と入水心中するツネ子役を寺島しのぶさんなどが演じ脇を固めます。
幼少期から世間となじめず、常に不安を抱えて生きる葉蔵の半生が色彩豊かな映像で描かれています。
悪友・堀木との付き合い、女性との交わりも濃密かつ美しく表現されていますよ。
日本文学の名作をアニメーションで味わう「青い文学シリーズ」
青い文学シリーズ『人間失格』
(株)ハピネット
「青い文学シリーズ」とは、2009年にアニメーション制作会社マッドハウスで制作された、オムニバス形式のテレビアニメーションのこと。
日本文学界の名作群がアニメーションとして初めて映像化されたことで、当時話題となりました。
映像化されたのは、太宰治の『人間失格』と『走れメロス』の他、坂口安吾『桜の森の満開の下』、夏目漱石『こころ』、芥川龍之介『蜘蛛の糸』と『地獄変』の6作品。
中でも冒頭を飾った『人間失格』においては、キャラクター原案を『DEATH NOTE』や『バクマン。』などで知られる漫画家の小畑健さんが担当。主人公の大庭葉蔵の声を俳優の堺雅人さんが演じました。
小説や漫画などの紙上とはまた違った『人間失格』の面白さを、アニメーションで味わうことができます。
太宰治の名作を漫画と映像作品で読んでみて
太宰治の小説、『人間失格』が原作の漫画と映像作品をご紹介しました。
名作と称される『人間失格』ですが、発表から半世紀以上経っており、読み進めるにはどうしても難しく感じてしまうこともあります。
そういったときには、漫画や映像作品の力を借りるのもおすすめですよ。
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ライター:aoi_suitou