不思議な雰囲気漂う世界が魅力 ヒグチユウコのおすすめ絵本
公開日:2019/5/27
皆さんは今話題の画家・絵本作家のヒグチユウコさんをご存知ですか?
彼女の絵の独特な世界が注目を集め、芸能人や著名人にもヒグチさんのファンを公言する人は多いんです。
さまざまな作品を精力的に発表している作家ですが、ここではヒグチさんがどんな人物なのか? あわせてヒグチさんが手がけた絵本をご紹介していきます。
画家・ヒグチユウコとは?
ヒグチユウコさんは、多摩美術大学を卒業、東京で活動している画家・絵本作家です。
虫や植物、擬人化された犬や猫、そのほか現実には存在しない不思議な生きもの達をモチーフに、細かく緻密な線でイラストを描かれています。
その独特な世界は、「ちょっと不気味だけどかわいい」と評されることも多いです。
ヒグチさんの作品に登場するキャラクターの多くには、モデルが存在します。
たとえば、ヒグチさんの息子が小さい頃から愛用しているぬいぐるみの「ニャンコ」、ともに暮らす猫の「ボリス」、そのほか作家仲間や友人のペットたちも多く登場し、彼女のSNSなどでモデル達を知るのもまた楽しいんですよ。
それでは、ヒグチさんがどんな絵本を描いているのかご紹介します。
ヒグチユウコさんの絵本デビュー作
『ふたりのねこ』
『ふたりのねこ』
祥伝社
ある夏の日、猫のぬいぐるみ・ニャンコが目覚めると、見知らぬ猫が自分を覗き込んでいました。どうやらニャンコは、持ち主の男の子「ぼっちゃん」とはぐれてしまったようです。
家に帰りたいと願うニャンコは、ぼっちゃんを探しながら猫とともに日々を過ごすのですが……。
2014年発行の、ヒグチユウコさんの絵本デビュー作。
ニャンコと一緒に持ち主の家を探してくれる猫ですが、「人間は信用できない」とも言います。そしてニャンコは、自分はもしかしたら捨てられてしまったのかもしれない、家に帰りたいけれど猫とも一緒に暮らしたい、そんな気持ちに……。
果たしてニャンコは家に帰れるのでしょうか? それとも猫と生きていくのでしょうか? 迷子になってしまったぬいぐるみの不安と希望が入り交じる、切ない絵本です。
本物のねこになりたいぬいぐるみニャンコのお話
『せかいいちのねこ』
『せかいいちのねこ』
白泉社
ぬいぐるみのニャンコは、自分のことを「世界一幸せなぬいぐるみ」だと思っていました。でも、子供はいずれぬいぐるみには飽きてしまう……と、心配しています。
そしてニャンコは、ずっと可愛がってもらうために本物の猫になりたいと願うように。
ぬいぐるみ仲間によると、猫のヒゲには魔力があり、集めれば本物の猫になれるらしい。そこで、ぬいぐるみの「アノマロ」とともに、猫のヒゲを集めることにしますが……?
雑誌「月刊MOE(モエ)」で連載された「ねこシリーズ」の1作目。
本物の猫になりたいと願うぬいぐるみのニャンコは、抜けたヒゲを譲ってもらうためにさまざまな猫に会いに行きます。
そこで猫たちそれぞれに人生があることを学んでいき、同居する「いじわるねこ」の意外な優しさにも気づくことになるのです。
読み応えがあるこちらの作品。果たしてニャンコは本物の猫になれるのでしょうか。
ぬいぐるみのニャンコが子育て
『いらないねこ』
『いらないねこ』
白泉社
ある日、ぬいぐるみのニャンコは草むらで小さな子猫たちを見つけます。しかし息があったのは3匹のうち1匹だけ。ニャンコはこの子猫を守り、育てることにしました。
周囲の猫たちの協力のおかげで、子猫はすくすくと成長していきます。
しかし人間の「おかあさん」に見つかってしまい、子猫はどこかに連れて行かれてしまい……。
なんとニャンコ、シリーズ2作目で子猫のお父さんになってしまいます!
本作に登場する子猫たちは、人間に捨てられた「いらないねこ」。作品冒頭で“善意・悪意”という言葉が登場し、人間の優しさと残酷さの二面性がぬいぐるみ視点で描かれています。
ちなみに男の子の「おかあさん」はヒグチさん自身にあたります。連れて行かれた子猫は、その後どうなってしまうのでしょうか?
デビュー作『ふたりのねこ』を読んだ人なら、あっと思うシーンがあるでしょう。
不思議だけど気になる生き物
『ギュスターヴくん』
『ギュスターヴくん』
白泉社
ギュスターヴくんは、一見猫のように見えますが、脚はタコで両手はヘビ、頭には不思議な触覚が生えている奇妙な生き物。
あるときワニと一緒にいたギュスターヴくんが絵本をバサバサと振ると、絵本からたくさんのギュスターブくんが落ちてきて、なんと10匹に増えてしまいました!
いたずら好きのギュスターヴくんたちは、奇妙な生き物たちをどんどん本から出していきますが……?
「ねこシリーズ」とはうって変わり、イラストが主体で文章の少ない絵本です。
ヒグチさんらしいアンティーク調な色合いが特徴の作品で、リアルでちょっと奇妙な生き物たちの生き生きとした世界を存分に楽しむことができます。
ちなみに「ギュスターヴ」とは、1匹のナイルワニにつけられた名前を指す言葉なんですよ。
好きになると変わる心
『すきになったら』
『すきになったら』
ブロンズ新社
すきになったら しりたくなる (『すきになったら』1ページ目)
誰かを好きになったときの心の変化を、モノローグで描いた絵本。
ほかの作品のようにストーリー性はなく、大きなワニと人間の女の子の間に素敵な言葉が添えられ、ゆったりとした時間が流れる優しい作品です。
本作のテーマは「恋」という普遍的なもの。
しかしこの作品の主人公である女の子の好きな相手は、人間ではなく爬虫類のワニ。そんなところが、ヒグチさんらしいといえるのではないでしょうか。
ヒグチユウコワールドを覗いてみよう!
ヒグチユウコさんの絵本をご紹介しました。
「ヒグチさんといえば猫」というイメージが強いですが、犬や鳥・虫や爬虫類まで、さまざまな生きものをモチーフに描かれています。
すべての作品に共通するのは、生きものに対する愛情です。興味を持った方は、ぜひ読んでみてくださいね!
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