一冊で二度美味しい! サスペンス要素を持ったミステリー小説
ミステリーとサスペンス。
しばしば混同してしまいがちですが、純粋に謎解きを楽しませるのがミステリー。サスペンスはハラハラ、ドキドキなどの精神的緊張感があるものを指します。
つまりサスペンスのないミステリーもあるし、ミステリーだけれどサスペンスでもある作品もあるのです。
ここでは後者、一冊で二度美味しいサスペンスの要素を持ったミステリー小説7作をご紹介します。
あなたのスマホは大丈夫?
『スマホを落としただけなのに』
志駕晃(著)、宝島社
スマートフォンへのハッキングを題材にした作品。
その手口がリアルなことから、作品を読み終えた頃には、「自分のSNSの設定は大丈夫かな……」ときっと不安を覚えることでしょう。
何よりストーリーが秀逸で、次へ次へと迫りくる展開に、ドキドキしっぱなしです。
主人公の絶体絶命シーンは、まさに「サスペンス」という言葉がぴったり! 加えてホラー要素や青春ドラマっぽさなど、エンターテイメント要素がてんこ盛りの作品です。
スピード感あふれる場面展開の巧みさを、是非一度味わってみてくださいね。
逃げて、逃げて、逃げまくる!
『ゴールデンスランバー』
伊坂幸太郎(著)、新潮社
首相暗殺の犯人に仕立てられ逃亡する羽目になった主人公。逃げ切れるかどうかのハラハラ感と、見えない大きな力に対する恐怖が、サスペンスの醍醐味を味わわせてくれます。
時系列が前後する展開のなかで、伏線の張り方が上手く、それでいて読者を混乱させない構成力はさすがの一言。
張り巡らされた伏線が終盤の意外なところで回収されていくところも、物語の展開を盛り上げます。
政治権力を背景とした逃走劇のなか、仲間との信頼関係の描き方がクールなところも秀逸です。特にラストのエレベーターのシーンにはやられてしまいました!
2010年に堺雅人氏主演で映画化されており、エンターテイメント性の高い作品です。
爆弾テロ、そして警察内部の陰謀とは……。
『百舌の叫ぶ夜』
逢坂剛(著)、集英社
本作は逢坂剛氏の「百舌シリーズ」2作目。
テレビドラマや映画で「MOZU」をご覧になった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
初版は1986年なので、2014年に制作された映像作品とは、詳細な部分がだいぶ異なっています。
しかし、どちらを先に見てもがっかりさせないのは原作の骨組みが良いからでしょう。80年代において「爆弾テロ」を扱ったという、先見性ある作品といえます。
公安刑事の主人公が、爆弾テロの被害者となった妻の死に迫るうちに、警察内部の大きな陰謀に巻き込まれていく……というのが物語の大筋です。
行き詰まるアクションシーンもありますし、黒幕への疑惑がミステリー要素も醸し出しています。スリルとサスペンスに富んだエンターテイメント作品ですよ。
殺人鬼「レインマン」の噂が現実に……。
『噂』
萩原浩(著)、新潮社
「ミリエル」という香水にまつわる、渋谷の女子高生たちが噂する都市伝説。
香水販売の戦略として流された殺人鬼「レインマン」の噂が現実となり、本当に殺人事件が起ってしまう……というサイコサスペンスです。
登場人物のキャラクター設定はありがちですが、その分刑事モノという安定感と期待感を持って読み進められます。
ついついキャラクターに感情移入してしまうのは、感動的な小説を得意とする作者の力量でしょう。。
飛行機事故が原因で入れ替わり……!?
『コピーフェイス』
サンドラ・ブラウン(著)、新潮社
TVリポーターのヒロインが、飛行機事故により上院議員夫人と入れ替わってしまう! 上院議員夫人となったヒロインは、やがてその夫を愛してしまい……。
夫に仕掛けられる陰謀と、それを守ろうとするヒロイン。緊迫する状況のなかで愛し合う2人。
夫の命が狙われるなかで盛り上がっていく2人の関係は、ラブサスペンスの女王と言われる作者だからこそ書けたのだと思います。
2016年にNHKでドラマ化されており、登場人物は雑誌記者と医院長夫人に変更されています。
連続殺人の次の現場は高級ホテル!
『マスカレード・ホテル』
東野圭吾(著)、集英社
人々の思惑が交錯する高級ホテルを舞台に、予告殺人の捜査をしようと、1人の刑事がホテルマンとして潜入する。
主人公の刑事と、ヒロインとなるホテル従業員の掛け合いが中心の物語。
トリックが次々に明かされていく様子や、それぞれの人間関係の描かれ方も読み応えがあり、非常にエンターテイメント性の高い作品となっています。
ホテルマンの仕事ぶりがクローズアップされ、際立つ情景描写とあいまって、高級ホテルの華麗な雰囲気に没入できるでしょう。
ラストまで目が離せない!
『弁護士の血』
スティーヴ・キャヴァナー(著)、早川書房
ただのリーガルサスペンスかと思いきや……?
ロシアンマフィアに脅迫された弁護士のエディー・フリンが、追い込まれながらも窮地を切り抜けていくというストーリー。
「弁護士になる前はゴロツキだった」というキャラ設定はよく見かけますが、己の腕力と知力で、待ち受けるいくつもの困難を間一髪で克服する主人公はとても魅力的です。
もちろん法廷劇の場面も疎かにされておらず、こちらもクオリティの高い作品となっています。
スリルとサスペンス、最後には爽快な余韻を味わえるでしょう。
サスペンスはエンターテイメント!
純粋なミステリーはリアルさや精巧さが求められますが、そこにサスペンスの要素が加わると爽快感やカタルシスが生まれてエンターテイメント性の高いものが求められるのではないでしょうか。
ドラマ化、映画化される作品が多いことにも納得できます。数ある人気作品を制覇してみるのはいかがでしょうか。
今回ご紹介した書籍
『スマホを落としただけなのに』志駕晃(著)、宝島社
『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(著)、新潮社
『百舌の叫ぶ夜』逢坂剛(著)、集英社
『噂』萩原浩(著)、新潮社
『コピーフェイス』サンドラ・ブラウン(著)、新潮社
『マスカレード・ホテル』東野圭吾(著)、集英社
『弁護士の血』スティーヴ・キャヴァナー(著)、早川書房
名作ぞろい! 過去に映像化したミステリー作品が面白い。