『キミスイ』だけじゃない!住野よるさんの魅力とは?
更新日:2017/10/3
デビュー作『君の膵臓をたべたい』で一躍人気作家の仲間入りを果たした住野よるさん。
もともとライトノベル作家を目指していたという住野さんですが、これほどまでに支持されているのはなぜでしょうか?
私が思うに、住野さんの魅力として「読者の興味を惹きつけるタイトル」「スラスラと一気に読ませる軽い筆致」「男性だと思わせない中性的な視点」「多くの人が共感するであろうほろ苦い痛み」「クスッと笑えるアソビ心が詰まった対話と仕掛け」などが挙げられるのではないかと思います。
2017年7月28日には映画も公開されています。
ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょう。
通称『キミスイ』
君の膵臓をたべたい
『君の膵臓をたべたい』
双葉社
2016年本屋大賞2位。通称『キミスイ』。住野さんの名前を世に広く知らしめた作品です。
テーマは『生きる』。
タイトルを見ると、グロテスクなホラー小説を想像する人もいらっしゃるかもしれませんが、作品自体は、爽やかで読後感の良いものに仕上がっています。
友達がおらず他人に興味がない「僕」と、クラスの人気者「桜良」。互いに方向性が合わないと感じながらも、2人の間に芽生える友情が、2人のかみ合わない会話とともに描かれています。
ありがちな恋愛小説では決してありません。
そしてクライマックスで出てくる「君の膵臓をたべたい」という言葉の意味。
その意味を知ったとき、私は涙を止めることができませんでした。
「幸せとは何か」を考える
また、同じ夢を見ていた
『また、同じ夢を見ていた』
双葉社
デビュー作『キミスイ』が話題になったぶん、おそらくハードルが高かったと思われる第2作ですが、今作も涙が止まらない一冊に仕上がっています。
テーマは『幸せ』。
小学生の奈ノ花は、国語の授業で「幸せとは何か」を考えることになります。学校では孤立していて友達がいない奈ノ花が出会ったのは、個性的な面々で……?
なお、奈ノ花は「人生とは△△のようなものね」というのが口癖なのですが、それがまた真理を突いていてハッとさせられるのです。作中、この決め台詞が数回出てくるのですが、私が面白いなと思ったのは「プリン(底に苦いカラメルがあるから甘さが引き立つ)」。
小学生ならではの柔軟な発想には驚かされることが多いです。
なお、細やかな伏線がところどころに書かれているのも巧いですね。
このタイトルがつけられた理由には、「なるほど!」と声をあげてしまいました。
本当の“僕”はどっちだろう
よるのばけもの
『よるのばけもの』
双葉社
“僕”は、昼間は人間、夜は化け物に変身して生活している少年。ある日、化け物の姿で忘れ物を取りに学校へ行くと、クラスメイトの矢野と鉢合わせしてしまいます。その日から、2人は夜の学校で会うようになります。
テーマは「いじめ」。
矢野はクラスでいじめに遭っていました。“僕”は、昼間は矢野に声をかけられても無視を貫きますが、夜になると矢野と2人で遊ぶ……。どちらの“僕”が本当なのか?
クラスメイトの行動など、心が痛くなる描写も含まれます。ですが、決してありきたりな「いじめ小説」ではないところが本書の一番の特徴ではないでしょうか。
住野さんならではの視点が面白い1冊に仕上がっており、深い余韻が残る作品です。
タイトルに隠された5人の「かくしごと」
か「」く「」し「」ご「」と「
『か「」く「」し「」ご「」と「』
新潮社
『か、く。し!ご?と』『か/く\し=ご*と』『か1く2し3ご4と』『か♠︎く♢し♣ご♡と』『か↓く←し↑ご→と』の5編から成り立つ連作短編集。
このタイトルには、5人の登場人物たちの『特殊能力(かくしごと)』が隠されています。私は推測しようと思いましたが結局わからずすべて読み切ってしまいました。
どういう意味なのか、謎解き気分で読み進めても面白いと思います。
住野さんの作品のなかでは、最も軽快な読み心地の作品です。
なお、書籍の購入者限定で、本書Web上のスペシャルストーリー「『か「」く「」し「頁』」を読むことができます。書籍のどこかにQRコードが隠されているので、すみずみまで探してみてください。
こういう仕掛けがなされているのも、住野作品の面白い試みですね。
『キミスイ』だけじゃない住野作品の魅力
いかがでしたでしょうか?
興味を持っていただけたなら、ぜひ一度手に取ってみてくださいね。
『君の膵臓をたべたい』は2016年本屋大賞2位となりました。
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