『IWGP』だけじゃない! 石田衣良 おすすめ小説
更新日:2019/12/2
『池袋ウエストゲートパーク』や『4TEEN』など、数々の人気作を世に送り出している石田衣良さん。
メディア化された作品も多く、若者の心情に迫る作品やビターな味わいのある恋愛小説が多いことでも有名です。
ここではそんな石田衣良さんの作品の中から、『池袋ウエストゲートパーク』『4TEEN』以外にもあるおすすめの小説をご紹介します。
『うつくしい子ども』
『うつくしい子ども』
文藝春秋ほか
閑静なニュータウンを騒然とさせた、少女殺人事件で逮捕されたのは、「僕」の1つ下の弟カズシだった。
崩壊していく家族、責める世間の目。「僕」は弟に何があったのか調査を始めるが――。
神戸連続児童殺傷事件が元になったフィクション作品。殺人犯の家族が襲われる悲劇と苦しみなど、報道などでは明かされない現実が描かれています。
主人公の「僕」は、なぜ弟が事件を起こしたのか? 心情を理解しようと奔走。そんな「僕」の弟への愛情によって、事件の真相を明らかになっていきます。
『眠れぬ真珠』
『眠れぬ真珠』
新潮社
45歳の咲世子は、17歳も年下の青年に出会う。彼との運命の出会いが、咲世子に愛し合う喜びをもたらすが――。
2006年に第13回 島清恋愛文学賞を受賞した『眠れぬ真珠』。更年期障害に悩む咲世子は、この恋は長くは続かないと思いながらも、素樹に対する思いを募らせていきます。
大人の女性が体験する濃密な恋の時間をじっくりと味わってみてください。
『美丘』
『美丘』
角川書店
自由奔放な美丘(みおか)に出会い、恋をした太一。
やがて2人は恋人になるものの、美丘が不治の病にかかっていた。病と戦う美丘を、太一は懸命に支えるが――。
2010年には吉高由里子さん、林遣都さん主演でドラマ化された本作。
脳の病気を抱える美丘からは、だんだん記憶がなくなり、身体の自由もきかなくなってきます。
しかし彼女は、「ありのままで居続けること」を守り続けます。どんなに痛くても、記憶を失っていっても、その信念は揺らぎません。
健康でいることがどれだけ幸せなことか、そして自分を持つことがどれだけ大切なことか。考えさせられる一冊です。
『娼年』
『娼年』
集英社
大学生活にも恋愛にも飽き飽きして過ごしている20歳のリョウ。ある日、バーで知り合ったボーイズクラブのオーナーと出会い、秘密の仕事に誘われる。
そして、年上の女性たちに体を売る「娼夫」になったのだった――。
性描写の多い作品ですが、流れるように詩的な雰囲気で、透明感さえ感じさせられます。
「欲望の果てを見てみたい」と、エロティックな経験を重ねていくリョウ。さまざまな女性と肌を合わせることで、学び、成長していきます。
作品の根底にあるのはリョウのあまりに純粋な思いです。女性たちと情事を重ねていく彼のひと夏の物語に、ぜひ寄り添ってみてください。
『シューカツ!』
『シューカツ!』
文藝春秋
大学3年生の千晴は、仲間たちと「シューカツプロジェクトチーム」を作って就職活動を始めた。
メンバーの目標はマスコミ業界への就職。個性豊かな7人のメンバーたちはそれぞれ就職活動にはげみ、いろいろな経験をしていくが――?
就職活動がテーマの『シューカツ!』。「就職活動では具体的にはこういうことをするのか」と、就職活動の準備ができるマニュアル的な作品でもあります。
いつの時代も就職活動とは大変なもの。千晴をはじめとする主人公たちも例に漏れません。エントリーシートに書き込む時のドキドキ感、面接前の押しつぶされそうな緊張感や不安なども、リアルに描かれています。
楽しい大学生活が終わりを告げ、社会人としての覚悟を少しずつ固めていく彼らの成長過程も読みどころです。
『夜の桃』
『夜の桃』
新潮社
仕事は順調、美人な妻と2人の愛人を抱える雅人は、東京で幸せを満喫していた。
ところがある日、1人の女性と出会い恋に溺れたことで、今まで積み上げてきたすべてが壊れていき――。
男性目線で書かれた恋愛小説『夜の桃』。順風満帆だった雅人の人生が、ある女生徒の恋愛によって狂っていきます。
恋愛によって運命がおかしくなっていく雅人の様子は、恐ろしくもあり、滑稽でもあります。
こうした人間の欲望や願望、成功や堕落を克明に描いて読者を惹きつけるのが、石田作品の魅力ではないでしょうか。
短編集『1ポンドの悲しみ』
『1ポンドの悲しみ』
集英社
同棲の解消に備えてお互いの持ち物にイニシャルを付けるカップル、他人の幸せのためにだけ働くウェディングプランナーなど、大人の恋愛を描いた10つの短編集。
普通の女性が経験する普通の恋愛が、石田さんの手でドラマチックに仕上げられ、読者の心に届きます。
20代とは異なる30代の恋。仕事の責任が重くなっていたり、趣味のスタイルが確立されていたりと、若いときにはなかった価値観で、日常と恋愛のバランスをとる主人公たちが描かれます。
日常の中にあるとっておきの恋を味わえますよ。
短編集『約束』
『約束』
角川書店ほか
目の前で親友を失った子供、不登校の子が出会った廃品回収業の老人、事故で障害を背負い心を閉ざした兄など、さまざまなつらさを抱える人たちの再生への道を描く短編集。
残酷な描写もありますが、ひとつひとつの言葉が胸に響き、ほろりとさせられる短編小説集です。どの物語も、読む人を勇気づけ、励ましてくれます。
生きていれば誰もが経験する不幸やつらさ。しかし人は、また思いを新たに生きていくしかありません。
日常生活で心が疲れてしまったとき、次の一歩を踏み出す力が欲しいときにおすすめの一冊です。
短編集『sex』
『sex』
講談社
夜の街で、図書館の隅で、外国で、デート中に……。「セックス」をテーマに描かれる12の短編集。
エロティックなシーンがこれでもかと描かれていますが、本作はただの官能小説ではありません。
セックスについて赤裸々に描かれていますが、単に欲望を満たすためではなく、日常の中に溶け込んだ風景のように、爽やかな比喩表現を用いながら綴られていきます。
行為を通して登場人物たちの人生が語られ、人間ドラマとしても読みごたえがあります。
短編集『愛がいない部屋』
『愛がいない部屋』
集英社
表題作「愛がいない部屋」ほか、神楽坂に建つ高層マンションに住む人々の暮らしを描いた恋愛短編集。高層マンション「メゾン・リベルテ(自由の家)」での人々の暮らしが描かれています。
新築の高層マンションを見上げた時、一般の人が想像するのは「輝かしく、幸せそうな日々を送る恵まれた人々の暮らし」かもしれません。
しかし、どんなに立派な建物の中で暮らしていようと、誰もが何かを抱えながら生きています。
ビターな味わいをゆっくりかみしめてみてはいかがでしょうか。
味わいのある作品を……
石田衣良さんの作品をご紹介しました。興味のある作品から、ぜひ読んでみてくださいね。
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