漫画『永沢君』って? 永沢君は中学生になっても「卑屈」だった。
みなさんは、『ちびまる子ちゃん』はお好きですか?
個性的なキャラクターがたくさん登場しますが、そのなかでも玉ねぎあたまの永沢君は強烈なキャラクターですよね。
いつも唇の青い藤木君と一緒にいる永沢君。そんな永沢君が主人公の漫画があることをご存知ですか?
表紙のインパクトと、溢れ出るジメジメ感に思わず手に取ってしまった『ちびまる子ちゃん』のスピンオフ作品『永沢君』をご紹介します。
玉ねぎ頭の永沢君が中学生に!
『永沢君』
さくらももこ(著)、小学館
ご紹介するのはさくらももこさんの作品『永沢君』。
少女漫画雑誌りぼんで、1986年から連載(現在は不定期連載)されている『ちびまる子ちゃん』のスピンオフ作品で、ビッグコミックスピリッツで1993年から1995年まで連載されました。
少女漫画のスピンオフではありますが、まったくもって華々しい要素はありません。
2013年には劇団ひとりさんを主人公に実写ドラマ化され、深夜5分のミニドラマでありながら、驚きのキャストやシュールすぎる内容に注目が集まりました。
ちなみに本作で、まるちゃんは回想シーンでしか登場しませんのでご注意を。
本作の主人公は、玉ねぎ頭がトレードマークで、いつも暗くて嫌味ばかり言っている「卑屈」な永沢君。
表紙だけでもすでにジメッとした雰囲気がありますね……。
お人良しではあるが「卑怯」と言われる藤木君、おおらかではあるが肥満気味で「愚鈍」と言われる小杉君と、小学校を卒業しても相変わらず一緒に過ごしており、そんな彼らの中学校生活をブラックユーモアとギャグたっぷりに描いた漫画です。
「卑屈」「卑怯」「愚鈍」が集まって「思春期」真っ盛りの中学校生活をおくる……。これはもう危ないニオイしかしません!
永沢君は、成長してもやっぱり嫌な奴でした。
漫画やアニメを見たことのある方たちは、永沢君にどんなイメージを持っていますか?
わたしの持つ永沢君へのイメージは、「暗い」「嫌味」「陰湿」など。あれ、いいところがひとつも出てこない。
しかし卑屈だった彼ももう中学生。玉ねぎ頭にちょこんと乗っていた黄色の通学帽は、黒の学生帽になりました。
きっと少しは柔らかくなり、暗いながらも楽しい中学校生活を送っている……わけがなかった!
おかしい。永沢君は中学生になり、彼が本来持つ「性格」と「悩み」、さらに「思春期」を抱えたことで、さらに「卑屈」に磨きがかかっていました…くっ!
藤木君に対する当たりが強すぎて泣けてきます……。
中学生男子特有の思春期の悩みなどの描き方がなんとも生々しく、それなのになぜか笑ってしまう描写が多くあります。思わず「さくらももこさん、天才!」と言ってしまいそうです。
目立つ生徒の陰でいつも教室の隅にいた男子生徒って、こんな感じなのでしょうか……。
『ちびまる子ちゃん』のキャラクターも活躍!
本作では、お金持ちの花輪君、花輪君の執事・ひでじい、おかっぱ頭の野口さんなど、『ちびまる子ちゃん』でもおなじみのキャラクターが登場します。
ちなみに小杉君、野口さん、さらに縦ロールのお嬢様・城ヶ崎さんの3人は『永沢君』で初登場し、のちに『ちびまる子ちゃん』に逆輸入されたんです!
さらに本作には、暴走族に入隊している不良のやすあき、どこまでも性格の悪い倉田と川口、ひたすらスケベで下品なゲヘ、成績は悪いが優しいカツヤンなど、『ちびまる子ちゃん』に負けないくらいの強すぎる個性を持ったキャラクターばかり登場します。
というか、まともなキャラクターなんているのかしら……。
永沢君が恋をする!?
本作では、登場人物たちの恋の話も展開されます。誰が誰に恋をして、結ばれるのか? はたまた結ばれないのか? その行方は気になるものです。
ところで本作では、『ちびまる子ちゃん』を見たことのある方には、あまりにも衝撃的すぎる城ヶ崎さんの恋や性癖について明かされます。『永沢君』で城ヶ崎さんを初めて知ったという方でも、「えっ……?」と思うかもしれません。
小学生のときは、気は強いけれど、誰とでも親しくできる社交的な女の子だった城ヶ崎さん。「一体何が彼女をそうさせたのか!?」と思うばかりです。
本作を読んだうえで『ちびまる子ちゃん』を見ると、彼女を見る目がきっと変わります。ぜひ、確認してみてください!
永沢君は、実は見習うべきスゴイ奴!?
常に「卑屈」で嫌な奴ではありますが、永沢君には一つ、見習うべきところがあります。それは、ズバッと言いたいことを言えるところ。
人間関係に悩みがちな現代社会。言いたいことはあるけれど、相手に気を使って何も言えない…なんて方も多いのではないでしょうか。
みんなが、思っていても言えないことを、悪びれた様子もなくサラリと言える永沢君。そんなところは尊敬したいし、見習いたいですね。だがしかし空気を読まなくていいとは言っていない。
ブラックな内容盛りだくさんな作品ではありますが、決して読みにくくはありません。
「永沢君って本当に嫌な奴!」と思いながらも、最後はクスッと笑える漫画なので、ぜひ読んでみてくださいね!
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