新海誠監督の小説|最新作『天気の子』を含む4作品をご紹介!
更新日:2020/8/10
2016年に公開され、大ヒットした映画「君の名は。」。
聖地巡礼する(作品に登場した場所に実際に訪れる)人が続出するなど、社会現象を巻き起こしました。
ところで、監督である新海誠さんが映画を制作する傍ら小説を書いていることはご存知ですか?
「君の名は。」「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」、そして「天気の子」。
それらはすべて「映画では描けなかった部分」を書きたいと、監督自らがペンを取ったもの。そう、小説と映画は、相互補完的な役割を果たしているわけです。
映画を見た人はもちろん、映画を見たことがない人でも楽しめる、新海監督の切ない世界を味わってみませんか?
新海監督の映画を完全に理解するには、どの作品も必須の1冊といえるでしょう。
『小説 天気の子』
『小説 天気の子』
KADOKAWA
<あらすじ>
離島で暮らしていた高校生の帆高は、家出して東京にやってくる。ところがすぐに生活がままならなくなり、困り果てた末にオカルト雑誌のライターとして働くことに……。
寂しさが募る帆高の気持ちを察するかのように、降りやまない雨。そんなある日、帆高は1人の少女と出会う。
<内容紹介>
7月19日に公開される映画「天気の子」の原作となる小説版。映画公開の前日である18日に刊行されます。初回限定盤には豪華な特典もついているため、ファン必見の1冊です。
けっして映画のノベライズではありません。映画を見た後に読めばより物語を深く理解できる補完的役割を果たしています。
登場人物たちの心情や、美しい風景の描写は見事の一言。ぜひチェックしてみてくださいね。
『小説 君の名は。』
『小説 君の名は。』
KADOKAWA
<あらすじ>
1000年ぶりに彗星がやってくるのを、1ヶ月後に控えた日本が舞台。
田舎町で暮らす女子高生の三葉は毎日が憂鬱だった。そんな三葉はある日、自分が東京の男子高校生として生きている夢を見る。
一方、東京で暮らす男子高校生の瀧も、自分が山奥の街で女子高校生として生きている夢を見ていた。
そして繰り返される不思議な夢に、2人は気づく。「私/俺たち、入れ替わってる!?」と。
<内容紹介>
2016年に公開された『君の名は。』の小説版。
本書は映画と同時進行で書かれた小説であり、こういう小説の書き方は新海誠さんは初めての試みだったのだとか。
内容は、小説と映画で物語上の大きな違いはありません。しかし、<語り口が異なっている>ので、新鮮さを感じる人も少なくないでしょう。
映画は、その特性から三人称(つまり客観的な視点)の世界が描かれていますが、小説では、瀧と三葉の一人称(つまり2人の視点)で話が進んでいきます。
新海誠さんは、あとがきでこのように語っています。
この小説を書こうとは、本当は思っていなかった。
こんなことを言ってしまうと読者の方々に失礼かもしれないと思うけれど、『君の名は。』は、アニメーション映画という形がいちばん相応しいと思っていたからだ。
(略)
それでも、僕は最後には小説版を書いた。書きたいと、いつからか気持ちが変わった。
その理由は、どこかに瀧や三葉のような少年少女がいるような気がしたからだ。この物語はもちろんファンタジーだけれど、でもどこかに、彼らと似たような経験、似たような想いを抱える人がいると思うのだ。大切な人や場所を失い、それでももがくのだと心の決めた人。未だ出逢えぬなにかに、いつか絶対に出逢うはずだと信じて手を伸ばし続けている人。そしてそういう想いは、映画の華やかさとは別の切実さで語られる必要があると感じているから、僕はこの本を書いたのだと思う。(p254-257)
瀧と三葉視点から描かれた本書を読むと映画が観たくなるし、映画を観たら小説が読みたくなる……。癖になること間違いなしの1冊です。
なお、新海監督が執筆されたものではありませんが『君の名は。~Another Side:Earthbound~』もおすすめですよ。
『小説 秒速5センチメートル』
『小説 秒速5センチメートル』
KADOKAWA
<あらすじ>
舞台は1990年代前半の東京からはじまる。
遠野貴樹と篠原明里は、雲の落ちる速度や花びらの落ちる速度、宇宙の年齢とか銀が溶ける温度など、2人にとって大切だと思う知識を帰り道で交換し合っていた。
しかし2人は、小学校の卒業と同時に離れ離れになってしまう。そう、2人の間だけにあった特別な感情を残して。
そしてある日、2人は遂に再会するのだが――。
<内容紹介>
2007年に公開された『秒速5センチメートル』の小説版。こちらは映画が上映された後に、新海監督によって書かれた小説です。
内容は、映画では語られなかった心象風景を新海監督自ら希望して小説化。映画では解釈が難しい部分などを理解できる1冊になっています。
タイトルの「秒速5センチメートル」の意味は、冒頭で語られます。
「ねえ、秒速五センチなんだって」
「え、何が?」
「なんだと思う?」
「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速五センチメートル」
びょうそくごせんちめーとる。不思議な響きだ。僕は素直に感心する。「ふーん。明里、そういうことよく知ってるよね」
ふふ、と明里は嬉しそうに笑う。 (p9)
また、新海誠さんは、自身のホームページでこの作品を以下のように語っています。
我々の日常には波瀾に満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛えています。
現実のそういう側面をフィルムの中に切り取り、観終わった後に見慣れた風景がいつもより輝いて見えてくるような、そんな日常によりそった作品を目指しています。
初恋というのは、なぜこんなにほろ苦いものなのでしょうか……。
読み終わった頃には、切なさに胸が締め付けられること間違いなしの1冊です。
『小説 言の葉の庭』
『小説 言の葉の庭』
KADOKAWA
<あらすじ>
タカオは靴職人を目指す高校生。雨の朝は学校をさぼり、公園で靴のスケッチを描いていた。
そこで出会ったのは、缶ビールを飲む27歳のユキノ。2人は雨の日に限り偶然会う間柄となり、心を通わせていく。
そして傷つき上手く人生を歩くことができなくなったユキノのために、タカオは靴を作ってあげたいと思うようになるが……。
<内容紹介>
2013年に公開された『言の葉の庭』の小説版。こちらも映画の後に書かれた小説です。
映画では語られなかった登場人物の心情や過去を伝えるために、新海監督みずからが小説化したもの。
映画ではほんの少ししか登場しなかった脇役のキャラクターにもスポットライトを当てているなど、映画のアナザーストーリー的な役割を果たしています。
この世界には文字よりも前にまず───当たり前のことだけれど、話し言葉があった。(略)
そして、「恋」は「孤悲」と書いた。孤独に悲しい。七百年代の万葉人たち───遠い我々の祖先───が、恋という現象に何を見ていたかがよく分かる。ちなみに「恋愛」は近代になってから西洋から輸入された概念であるというのは有名な話だ。かつて日本には恋愛はなく、ただ恋があるだけだった。
本作「言の葉の庭」の舞台は現代だが、描くのはそのような恋───愛に至る以前の、孤独に誰かを希求するしかない感情の物語だ。誰かとの愛も絆も約束もなく、その遙か手前で立ちすくんでいる個人を描きたい。現時点ではまだそれ以上のことはお伝えできないけれど、すくなくとも「孤悲」を抱えている(いた)人を力づけることが叶うような作品を目指している。
新海誠さんが自身のホームページでこう語っているように、本書はとにかく切ない作品です。
「本を読んで泣きたい」そんな時にはぜひこちらを読んでみてくださいね。
新海誠監督の小説を読んでみよう
今回紹介した作品は、キュンと胸が締め付けられる作品ばかり。
読んでいただくと目の前の世界が変わることを保証します。ぜひ読んでみてくださいね。