死後の世界ってどんなとこ?「終焉」と「再生」を描く物語
更新日:2016/6/30
「死んだ後の世界って、どんなところだろう……」
これは誰もが一度は必ず抱く疑問なのではないでしょうか。
そんな不思議な死後の世界を描いた物語を通して、「あの世」を想像してみませんか? そして、「生きている」というあたりまえだけど幸運な事実に目を向けてみてみませんか?
「死」によって生じる「別れ」と、そして「再生」を描いた物語を合わせてご紹介します。
古典で読む「死後の世界」
死後の世界をどんなものだろうか、と考えていたのは現代人も昔の人も同じようです。
では遠い時代を生きた昔の人は、どんなものだと考えていたのでしょうか。古典は、過去に想いを馳せることもできると同時に、とても勉強にもなるのです。
♦『古事記』
『古事記』
池澤夏樹(訳)、河出書房新社
とても 仲睦まじい夫婦の神様は、多くの子供(島や、海、山など)を産み楽しく過ごしていた。
あるとき、イザナミノミコトは火の神であるカグツチを産むが、火傷を負ってしまいそれが原因で命を落としてしまう。
イザナミノミコトを亡くしたことを受け入れられなかったイザナギノミコトは、彼女に会うために黄泉の国を目指す。
はたして、黄泉の国とはどんな場所なのか、イザナミノミコトはイザナギノミコトに会うことができたのか――。
712年に編纂されたといわれる日本最古の歴史書です。日本という国のはじまりから、推古天皇の時代までの神話や伝説込みのあらゆるできごとがまとめられています。
「死後の世界」が見えるのは、天地開闢と共に誕生し、国を産んだといわれるイザナギノミコトとイザナミノミコトのお話が書かれている部分です。
神話であり、すこし硬いイメージを持ってしまいがちかもしれませんが、とっても面白い物語です。「死」というものを考えると同時に、日本という国の根底に流れる思想にも触れることができますよ。
また、日本人って不思議なところがあるなと感じている人にはとてもおすすめです。なにか引っかかっていたものを解決する手助けになるかもしれません。
日本人であるならば、一生のうちに一度は読んでおきたい物語です。
♦『神曲』
『神曲』
ダンテ・アリギエーリ(著)、角川書店ほか
ダンテが迷い込んだ森で出会ったのは、故人であるはずの古代ローマの詩人ウェルギリウス。
彼に案内をされて、ダンテは死後の世界を旅することになる。そこで見るのは、生前の罪で裁かれる罪人たちの姿たちで……。
地獄の次は、煉獄へ。煉獄の次は、天国へとどんどん進んでいった先で彼が至る境地とは――。
13世紀のイタリアで書かれた、作者であるダンテ自身が主人公となり死後の世界を旅する物語です。
地獄編、煉獄編、天国編の3つで構成。訳題は『神曲』なのですが、イタリア語の原題を直訳すると『新世喜劇』となります。ですが、もともとダンテは「喜劇」と記していたようです。
日本において『神曲』と呼ばれるのは、かの文豪・森鴎外がそう名付けたからだそう。どんな意図をもって、「神曲」としたのかを考えながら読むのもまた一興かもしれませんね。
物語は、主人公であるダンテが森に迷い込んだことから始まります。
登場人物が、ヨーロッパ史に親しんでいる人であれば、「あっ!」となる人が多く登場するのも大きな特徴です。そして、その実在の人物たちの存在がこの物語にリアリティを与えているとも言われています。
中世、外国における死後の世界の物語は、一見遠い存在に思えるかもしれません。
ですが、もしかしたら、日本人である私たちがやがて行くことになる、死後の世界にとても似ているのかもしれないとしたら……! 全然、遠い存在ではなくなるのではないでしょうか。
難解とも言われるこの作品ですが、ぜひとも挑戦をおすすめしたい作品です。ただ、どれも号泣必至なので電車などで読む場合にはご注意ください。
現代作品で読む「死後の世界」
こちらでは、現代を舞台に「死後の世界」を読むことができる物語をご紹介していきます。死者の立場、生者の立場の両方を感じることができる作品を集めてみました。
各作品には関連はありませんが、合わせて読んでみることもおすすめめしたい作品たちです。
♦『青空の向こう』
『青空の向こう』
アレックス・シアラー(著)、求龍堂
突然の事故で命を落とした少年ハリー。肉体を離れて彼が向かったのは死後の世界だった。そこで、生きた時代は異なるけれども同年代であるアーサーと出会い友達になる。
2人は、「やり残したこと」を解決するためにゴーストとしてこの世に再び舞い戻る。少年ハリーのやり残したこととは一体なんなのか?
悲しい物語ではありますが、明るい少年たちの楽しい冒険譚でもあります。
まだ幼い「死者」の目に映る「死者の世界」と「生者の世界」の姿をみることができます。生きているうちにやるべきこともきっと見えてくる、そんな物語です。
♦『あの空をおぼえてる』
『あの空をおぼえてる』
ジャネット・リー・ケアリー(著)、ポプラ社
交通事故は、仲良し兄妹を永遠に引き離してしまった。妹との永遠の別れを嘆き悲しむ両親のそばで、1人生き残った兄のウィルはやり場のない思いを一人抱えて苦しむ。
ウィルのもとを訪れた神父の助言で、旅立ってしまった妹ウェニーに手紙を書き始める。
とてつもなく大きく、そして深い悲しみに襲われた家族の再生の物語です。
心も体も傷だらけのウィルが妹に宛てて書く手紙の背景に見え隠れする、「兄」ではなく「息子」としての想いをぜひ読んでほしいと思います。
♦『カラフル』
『カラフル』
森絵都(著)、文藝春秋
生前に犯した罪のせいで、輪廻のサイクルから外されてしまった「ぼく」。だけど、なんと抽選に当選し、再び輪廻のサイクルへ戻るチャンスを得ることに。
そのチャンスをものにするには、自殺をした少年「小林真」の身体にホームステイしながら生前に犯した罪を思い出すことだった。
徐々に明らかになってくる「ぼく」と「小林真」の秘密に気付いてしまったとき、きっともう一度読みたくなる物語です。
プラプラのような天使がいる「死後の世界」なら楽しいかもしれないですね。
いずれ訪れる死の瞬間とは。
生きているうちから死んだ後のことを考えてしまうのは悲しいかもしれませんが、いつかやってくるそのときについて考えてみるのは面白いです。
いつか必ず訪れる「死」と、物語を通して向き合ってみることは大事なことなのではないでしょうか。
日々、生きていることのありがたみなども感じられますので、ぜひとも物語とともに一考してみませんか?