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芥川龍之介『鼻』ってだれの鼻? コンプレックスをアイデンティティに!


更新日:2018/3/5

芥川龍之介『鼻』ってだれの鼻?

みなさんは、芥川龍之介の『鼻』という作品をご存知でしょうか。芥川龍之介の代表作のひとつであり、タイトルだけは聞いたことはあるかもしれません。

しかしこのお話、いったい誰の「鼻」で、どんなお話なんでしょうか?

今回は、夏目漱石も絶賛した芥川の傑作「鼻」をご紹介します。

 

だれの「鼻」?

本書のタイトル『鼻』とは、禅智内供(ぜんちないぐ)というお坊さんのお鼻のことなんです。彼の鼻は、ソーセージみたいに長く太く垂れ下がっていて、その長さなんと約18cm!
18cmといえば、およそ新書の本とおなじくらいの長さ。う~ん、かなり長めですね。

『鼻』は、こんな大きな鼻を持ったお坊さん、禅智内供の物語なのです。

 

大きな「鼻」はコンプレックス!?

禅智内供は、自分の鼻が長いことを気にしていました。でも、気にしていると知られるのが恥ずかしくて、なんでもないふりをしているのですが、やっぱり、ものすごく気にしていました。

まさにコンプレックスですね。コンプレックスがない人なんているでしょうか? 口にはしなくても、みんなどこかにコンプレックスを抱えているものだと思います。

禅智内供もそのひとり。この鼻が普通だったらなぁといつも思っていました。だから、鼻がどうしたら短く見えるのか研究するし、自分と同じような鼻の人はいないかなぁと探してみたりしちゃうんです。
普通の鼻を妬み、羨んでしまうんですね。そして、そんな自分がいやで嫌悪に陥ってしまいます。

 

鼻じゃなくても、コンプレックスをどうにか隠したい、でも気にしてるのも知られたくない、あの人よりは……と誰かと比べたくなっちゃう内供の気持ち、ちょっとわかりますよね。

問題は、このコンプレックスをどうするかです。

内供にはやさしい弟子がおりまして、弟子がある日医者から「鼻を短くできる」治療法を教わって帰ってきます。なんて優しい弟子でしょうか!
しかし、弟子が持ってきたのは、そんなことで鼻は短くなるの? というびっくりな治療法。

さて、鼻の短くなる治療をはじめた内供の鼻は、無事に短くなるのでしょうか……?

 

人間の普遍的な悩みを描く

『鼻』には、現代にも通じる人間の普遍的な悩みが描かれています。コンプレックスを隠したい、顔を変えてしまいたい、誰かに笑われているかもしれない……そう思ってしまうことはたくさんあると思います。

でも本当にそうでしょうか?

あなたのコンプレックスは、もしかしたらあなたのアイデンティティかもしれません。『鼻』は、そんな風に思わせてくれる作品なんです。

 

悩める現代人におすすめ!

約18cmの大きな鼻のせいで起こったさまざまなエピソードは、思わずくすっとしてしまうものばかり。コミカルに描かれた内供を思わず応援したくなりますよ。

コンプレックスに悩める現代の人にもおすすめしたい1冊。ぜひ読んでみてくださいね。

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今回ご紹介した作品

羅生門・鼻』より「鼻」
芥川龍之介(著)、新潮社ほか

 

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