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川端康成『雪国』ってどこのこと? ざっくりわかる『雪国』のあらすじ


更新日:2019/12/13

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」

この冒頭は、有名すぎるほど有名ですが、みなさん間違って覚えていませんでしたか?

『雪国』を読んだことがなかった私は、
「長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった。」だと思っていました。全然違うし、なんだか美しくない!

そもそも『雪国』の内容を知らない方も多いのではないでしょうか?

『雪国』がどんなお話なのか、ご紹介します。

※ネタバレを含みます。ご注意ください!

 

 

『雪国』あらすじ

『雪国』表紙

雪国
川端康成(著)、角川書店ほか

ざっくり言うと『雪国』は、文筆家で妻子持ちの島村と芸者の駒子が、互いに惹かれあうお話。つまり、恋愛小説なんですね。
では、もう少し詳しくあらすじをご紹介します。

 

12月の初め。親の遺産で自由気ままに暮らしていた文筆家の島村は、汽車で雪国へと向かっていた。
その汽車の中で、病人の男を見かけた島村。そして、男に付き添う若い娘に心惹かれるのだった。

男と娘は、島村と同じ駅で降りていく――。

妻子持ちでありながら、島村には親密な関係の女がいた。1年前に出会った、芸者の駒子だ。

踊りの師匠の息子であり、許嫁である行男の治療費を稼ぐため駒子は芸者になった……と、聞いていた島村。しかし駒子はそれを否定していた。
この行男こそ、島村が汽車の中で出会った病人であり、付き添っていた若い娘が葉子である。

島村は温泉宿に何度か長期滞在し、駒子と惹かれあう。しかし、東京に妻子のある島村は、駒子と生活を共にしようと思ってはいなかった。

そんななか、温泉宿がある村で火事が起きる――。

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雪国のモデルは湯沢温泉

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そもそもトンネルを抜けた先にある雪国ってどこなんだろう? と思ったことありませんか?

実は『雪国』の舞台は、新潟県の南魚沼郡にある湯沢温泉がモデルになっています。『雪国』は、温泉町のお話なんです。

 

湯沢町の歴史民俗資料館「雪国館」では、『雪国』の解説の展示や『雪国』をテーマにした日本画、ヒロイン駒子の部屋を再現したスペース、川端康成の着用していた着物など、さまざまなものが展示されているそうです。

小説を読んで、舞台となった場所に行ってみるのも楽しみ方のひとつですよね!

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『雪国』はどうやって書かれたのか

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川端康成は、実際に湯沢町の旅館を訪れており、その経験をもとに『雪国』が執筆されました。川端康成の体験が色濃く出ている作品なのかもしれません。

川端康成は、モデルとなった旅館「雪国の宿 高半」に昭和9年から昭和12年にかけて滞在し、『雪国』を執筆しました。
現在、建物は建て替えられてしまいましたが、執筆活動を行った「かすみの間」は展示室に移され保存されています。

 

現在は長編小説として1冊にまとめられている『雪国』。もともとは複数の雑誌に、各章が連作として掲載されていました。
そこに書下ろしを加えて、単行本として発行。その後、続編がまた各雑誌に掲載されました。

それらをすべてまとめたものが、今私たちが読んでいる、長編『雪国』なんです。

 

『雪国』とは、新潟県南魚沼郡の湯沢温泉をモデルに書かれたお話。妻子持ちでふらふらと自由に暮らす島村が、温泉町で出会った芸者の駒子の純粋さに惹かれていく物語です。

とても静かな物語。島村が湯沢温泉を訪れる、駒子と再会する、駒子のことを純粋でいい子だなぁと思う……というのが大きな流れになっています。

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『雪国』で起こる大きな事件は2つ

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そんな静かな物語『雪国』にも、大きな事件が2つ起こります。

 

1.病気だった行男が死ぬ

行男が死んだのは、島村が東京へ帰る日のこと。駒子が駅まで送ってくれることになり、2人で駅に向かっている最中に、葉子が行男の危篤を知らせに来ます。

このとき駒子はある行動に出ます。
最初は「え? どうして?」と思いましたが、読んでいくと、駒子の行動に「わからなくもないな……」と思わず唸りました。
どうすれば後悔しないのか? これには答えが出ないものですよね。

駒子の感情の描写がとても素晴らしいです。

 

2.村で火事が起きる

火事になったのは、映画の上映会場になっていた小屋でした。火事を聞きつけた島村と駒子は、火事の現場に駆けつけます。このときの島村と駒子の会話がもどかしいのです。

惹かれ合っているのは確かなのですが、ともに生きる未来を描けない2人。その想いがひしひしと伝わってくるシーンです。

また、この日は天の河がきれいに見える夜。天の河と冬の村の描写はとても美しく、映画を観ているような気持ちになります。
火事が起こっているというのに、島村と駒子だけ、どこか浮世離れしているような雰囲気すら感じる幻想的な場面です。

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とにかく美しい『雪国』の世界

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川端康成の小説は、淡々としていますが、会話や描写のひとつひとつがとにかく美しく、真っ白な雪国を描くのにぴったりの言葉を使っている、という印象でした。

ちなみに冒頭は「夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」と続きます。この雪国の美しさを、ぜひ読んでみてくださいね。

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今回ご紹介した書籍

雪国
川端康成(著)、角川書店ほか

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