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川端康成の過激で美しすぎる作品5選


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「川端康成」と聞くと、読者のみなさんはどのようなイメージをお持ちになるでしょうか。

『トンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。』という出だしが有名な『雪国』。

たびたび映画やテレビドラマ化もされている『伊豆の踊子』。

川端康成の代表作と呼ばれるこの2つの作品が、ぱっと頭に浮かぶ方が大半だと思います。また、これらは教科書にも掲載されているので、”お堅い”イメージを持っている人もいるかもしれません。

しかし、川端作品の中には、愛憎劇、官能的かつ変態的な作品、過激なものなど、『雪国』『伊豆の踊子』のイメージとはかけ離れたものがたくさんあるのです。

今回は、そんな”裏”川端康成の作品を紹介したいと思います。

過激な設定の作品ばかりですが、どの作品も通俗的でなく、格調高い。それは、ノーベル文学賞を受賞した川端康成の筆致のゆえん。ぜひ、文章力の高さ・美しさを堪能してみてはいかがでしょう。

 

現代でいう”ストーカー”の話!?『みずうみ』

■『みずうみ』新潮文庫

美しい女を見ると、憑かれたようにあとをつける一人の男。教え子と恋愛事件を起して学校を追われた教師桃井銀平の、女性に対する暗い情念を”意識の流れ”を描写することによって、永遠の憧憬に象徴化した名作。『水晶幻想』で、西欧二十世紀の作家の新しい手法を試みた筆者が、”夢”の領域に入り、微妙な連想作用を重ね合せて、幽艶な非現実の世界を展開する。(文庫表紙裏より)

美少女を見るとつけまわしてしまう”嗜好”を持った男=現代でいう”ストーカー”の怖い話。と思いながら、私は読み進めていたのですが、そんな単純なものではありませんでした。良い意味で裏切られます。

描かれている情景が美しく、まるで夢を見ているような錯覚に陥ります。川端ファンの中でも、特に人気の高い作品ではないでしょうか。

 

息子の嫁に惹かれる老人…。『山の音』

■『山の音』新潮文庫

深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆすぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。(文庫表紙裏より)

自らの死を感じながら、息子の嫁に惹かれていく老人。裏切りに傷つく息子の嫁。離婚して戻ってきた老人の娘。などなど、複雑な事情を抱えた家族の姿が描かれた作品です。

また、ノルウェー・ブック・クラブによる、世界54カ国の著名作家100人の投票で選ばれた【The 100 Best Books of All Time(世界最高の小説100冊)】にランクインした作品としても有名です。(日本文学は2作品のみ)

 

川端的エロティシズムの金字塔!『眠れる美女』

■『眠れる美女』新潮文庫

波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女――その傍らで一夜を過す老人の眼は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪ねつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作『眠れる美女』のほか『片腕』『散りぬるを』。(文庫表紙裏より)

眠りつづける裸の少女と添い寝ができる、老人のための宿。会話も男女関係もなく、ただ眠っている少女を眺めているだけなのに、心を高ぶらせる老人たち。その突拍子もない設定は、幼い私にはあまりにも強烈でした……。

「川端的エロティシズムの金字塔」と評されており、一度読んだら忘れることができない作品となっています。

 

じわじわと崩壊していく家族と悲劇『舞姫』

20170210-kawabatayasunari1『舞姫』
新潮文庫

舞台の夢をあきらめた過去の舞姫波子と、まだプリマドンナにならない未来の舞姫品子の母子。もとは妻の家庭教師であり、妻にたかって生きてきた無気力なエゴイストの夫矢木と両親に否定的な息子高男。たがいに嫌悪から結びついているような家族の姿の中に、敗戦後、徐々に崩壊過程をたどる日本の”家”と、無気力な現代人の悲劇とを描きだして異様な現実感をもつ作品。(文庫表紙裏より)

不穏な空気の中、とある4人家族がじわじわと崩壊していく話。夫婦関係が冷めきっていたなか、ある日妻の波子が一人の男になびいてしまうことによって、修羅場な展開になっていきます。

なお、森鴎外の『舞姫』との関連性はまったくありませんのでご注意ください。

あとがきの三島由紀夫の解説も興味深く、二度楽しめる作品となっています。

 

美しくドロドロな愛憎劇『千羽鶴』

『千羽鶴』新潮文庫

鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。他に「波千鳥」(続千羽鶴)を収録する。(文庫表紙裏より)

まさに愛憎劇。

亡くなった父の愛人(太田夫人)と男女の関係を結んでしまった主人公や、太田夫人の娘、それをいまいましく見る愛人など、昼ドラばりの過激なシチュエーションと複雑な人間関係が描かれています。

一見ドロドロそうなのに、どこか美しいのは川端康成だからこそなせる技ですね。

 

「川端康成」の文章にひたってみては?

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どの作品も強烈な設定の作品なのに、美しさを感じてしまうのは、川端康成の筆致のゆえん。すいすいと読み進めることができるものばかりなので、ぜひ読んでみてくださいね。

また、以下の特集では「川端康成」のほか、日本の文豪と呼ばれる「夏目漱石」「芥川龍之介」「太宰治」「宮沢賢治」「谷崎潤一郎」など計23人の著書をご紹介しています。これからもずっと読み継がれる、読むべき日本の名作文学ばかりなので、こちらも合わせて読んでみてください。

この記事でご紹介した書籍
♦『みずうみ』新潮文庫
♦『山の音』新潮文庫
♦『眠れる美女』新潮文庫
♦『舞姫』新潮文庫
♦『千羽鶴』新潮文庫

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。