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窪美澄 おすすめ小説|あなたに差し込む光になる。


更新日:2019/9/19

読者のみなさんは、窪美澄さんの作品を読んだことがあるでしょうか?

2011年に発売された『ふがいない僕は空を見た』が第24回山本周五郎賞を受賞し、第8回本屋大賞第2位にランクインしたのをきっかけに大ヒットしました。

女性の性を「特別なもの」や「タブー」「恥ずかしいもの」として捉えるのではなく、あくまでも「日常に寄り添って」描く姿勢。そして、日々のやるせなさにわずかな光を差し込んでくれるストーリー。これらが女性を中心に人気を集めている理由ではないでしょうか。

ここでは窪美澄さんの作品の中から、特におすすめしたい小説をご紹介します。

 

映画を見ているような連作短編小説

『ふがいない僕は空を見た』表紙

ふがいない僕は空を見た
新潮社

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが―。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。(表紙裏)

言わずと知れた代表作。

短編が連作となっており、かつ、作品ごとに主人公(視点)が変わるので、まるで映画をみているように俯瞰しながら読み進める仕掛けとなっています。

作中、アブノーマルな性の嗜好を持つ登場人物がこう言います。「そんな趣味、おれが望んだわけじゃないのに、勝手にオプションつけるよな神さまって」。
私の中でこの言葉は衝撃的でした。性をやっかいなものとして捉える、その視点の鋭さに。

なお、巻末の解説はあの重松清さん。
四十代終盤の男として、はたして自分に読み手の資格があるかどうか気になってしまい遠ざけていたという重松さんですが、冒頭で心をわしづかみにされたのだそうです。

 

明日は今日よりもう少し、良くなるかもしれない。

『晴天の迷いクジラ』表紙

晴天の迷いクジラ
新潮社

デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた――。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。(表紙裏)

心を病んでしまった登場人物たちが、生きづらさを抱えながらも毎日を生き続けていくヒューマンドラマ。曇った心に薄日を差してくれる一冊です。

作中、登場人物たちが抱える重苦しい事態が、急激に良くなるわけではありません。でも、ちょっとした光が、彼・彼女たちに救いの手を差し伸べます。読んでいると、明日はもう少し良くなるかも知れない、だから頑張ろう。と思えてくるんですよね。

死んでしまったら何も話せない。だからこそ、何をしててもいいから、生きていてほしい。一冊を通して訴えかけるメッセージが涙を誘う、名作です。

 

女性の生きる姿を描く

『アニバーサリー』表紙

アニバーサリー
新潮社

母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとするカメラマンの真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた―。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎつつ、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。(表紙裏)

母娘の軋轢と再生を描いた作品。

主人公の真菜は、シングルマザーでありワーキングマザー。2011年に起こった東日本大震災以降、子どもをどうやって守っていけば良いか分からず、見えない恐怖に怯えるのですが……。

日本で暮らす、子どもを持つ母であれば、避けては通れない感情に共感し、私は泣きました。
また、女性の働き方などもテーマの一つとして取り上げられており、深く深く考えさせられる一冊となっていますよ。

 

胸がヒリヒリする恋愛小説

『よるのふくらみ』表紙

よるのふくらみ
新潮社

同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが―。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。(表紙裏)

切なくて官能的でヒリヒリする恋愛小説。
セックスレスという、繊細で複雑な問題に切り込んだ秀作です。

兄弟と幼なじみの女の子の三角関係、という構図は決して特殊な設定ではありません。ですが、窪さんの作品によく使われている「作品ごとに主人公(視点)が変わる」手法が本書でも使われているので、より広い視点で愉しむことができます。

深い余韻を残す結末まで、無我夢中に読んだ作品です。

 

普通の幸せの中にある些細なすれ違い

『水やりはいつも深夜だけど』表紙

水やりはいつも深夜だけど
KADOKAWA

セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。仕事で子育てになかなか参加できず、妻や義理の両親から責められる夫。出産を経て変貌した妻にさびしさを覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母を受け入れきれない女子高生…。思い通りにならない毎日。募る不満。言葉にできない本音。それでも前を向いて懸命に生きようとする人たちの姿を鮮烈に描いた、胸につき刺さる6つの物語。(表紙裏)

家庭の中に潜む「些細なすれ違い」を描いた作品。

この本、実にリアリティに富んだ作品です。当然のことですが、皆それぞれ自分の立場で物事を見ます。そのため「言わなくても伝わるだろう。察してくれるだろう」と思っても、伝わるわけがないのです。

私は、本書を読んでそれを改めて再認識しました。

普通に幸せだけど、心のどこかに引っかかりを持っている……そんな人に読んでほしい作品です。

 

窪美澄さんの作品を読んでみよう

一度読むと夢中になって読んでしまう窪美澄さんの作品。

ぜひ一度手に取ってみてください。

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