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三島由紀夫『雨のなかの噴水』|三島由紀夫の「かわいい」小説見つけました!


更新日:2018/1/17

みなさん三島由紀夫の小説を読んだことがありますか? 『金閣寺』などが代表作の文豪で、名前ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

私もあまり読んだことがなかったのですが、三島由紀夫の小説の中で、私の中の「三島ってむずかしそうだな」というイメージを変えてくれた「かわいい小説」がありました!

それが、三島の短編小説「雨のなかの噴水」。

今回は、本書を、3つのかわいらしいポイントと共にご紹介します!

 

「雨のなかの噴水」あらすじ

『真夏の死―自選短編集』表紙

真夏の死―自選短編集』より
「雨のなかの噴水」
三島由紀夫(著)、新潮社

丸ビルの喫茶店で、主人公・明男が、彼女である雅子に別れ話を切り出します。
雅子はなかなか泣き止まず、明男は仕方なく、雅子を連れて雨のなか、噴水公園に向かうのですが……。

 

ここがかわいいその1:三島由紀夫のレトロな言葉づかいがかわいい

この小説は、昭和38年(1963年)三島由紀夫が38歳のときに書かれた小説です。
約55年ほど前。案外最近ですよね。しかし読んでみると、その言葉づかいがとてもレトロで、かわいらしいんですね。

小説の中に出てくる言葉を借りると

ソーダ水⇒ソオダ水
ストロー⇒ストロオ

 

といった具合です。これを読んだとき、その言葉の響きがとてもレトロでかわいくて、三島由紀夫の世界に一気に引き込まれていきました。

 

というのもこの小説は、いわゆる「歴史的かなづかい」で書かれたものなんです。昔学校で習ってなんとなく覚えている!という方もいるかもしれません。

「歴史的かなづかい」とは、小説の中に出てくる言葉を借りると

えている⇒考へてゐる
すぐ止むだろう⇒すぐ止むだらう

 

というような表記をするもの。みなさんも、わざと歴史的かなづかいを使ったりしたこと、一度はあるのではないでしょうか?

昔は当たり前だったこの表記ですが、本書は55年ほど前に書かれた小説。ある少年と少女の物語で、どちらかといえば現代に近いお話です。

読めば現代の情景が浮かぶのに、歴史的かなづかいで書かれているところが新鮮で、レトロなかわいさが感じられるのです。

 

ここがかわいいその2:こじらせ男子・明男がかわいい

この物語は、主人公・明男が喫茶店で、付き合っていた彼女・雅子に別れを切り出すところから始まります。

明男はまだ若い少年なんですが、思春期の少年独特のいきがってる感じがあるんですね。どういうところかというと、明男は雅子に別れ話を切り出したときに「人生で最初の別れ話!」って喜ぶんです。

 

別れ話をしたことを喜ぶって……!って思いますよね。明男はちょっと変わった男の子なのかな、と思われるかもしれません。

でも、みなさんも大人に憧れた思春期って「大人ならこんなことするだろう」みたいな思い込みとかあったりしませんでしたか?
実際大人になるとそれが思い込みだったことに気づくのですが、なにせ明男は今が思春期!その憧れを、実行してしまったのです。

今でいえば、ちょっとこじらせている感じです。
それで「別れ話」を切り出された雅子は、たまったもんじゃないですけどね!

でも、大人から見ると、そのいきがっている感じがとてもかわいらしく、ほほえましい気持ちで読むことができますよ。

 

ここがかわいいその3:一枚上手な雅子がかわいい

明男にふられた雅子もかわいいんです……!

私が一番、雅子がかわいいなぁと思ったエピソードは、別れ話をしたあとで、相合傘をすることになり、雅子が明男が持っていた傘の柄をしっかりと握ってくるところ。
別れ話をしたあとなのに、こんなことをされたら、そのいじらしさにキュンとしてしまいそうです!

こういうとき女の子って、ちょっと策士なのかもしれません。雅子は天然なのかと思いきや、実は明男より一枚上手だったりします。
こじらせている明男と対照的な、ちょっぴりおとなに近い雅子も、まさに「年頃の女の子」という感じがして、とてもかわいらしいんです。

自分が少女だった頃を思い出すような、ノスタルジィを感じてしまいました。

 

かわいらしい短編から挑戦しよう!

三島由紀夫ってむずかしいと思っていたんですが、こんなかわいらしいお話を書くんだなとびっくりしました!三島自身もこの小説を「可愛らしく見える短編」であると言っています。

ふたりの恋の結末は、どうなるのでしょうか?

まだ三島由紀夫小説を読んだことがない方も、こんなかわいらしい短編から挑戦してみるのもオススメです!三島由紀夫小説の導入としても、ぜひ読んでみてくださいね!

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今回ご紹介した書籍

真夏の死―自選短編集』より「雨のなかの噴水」
三島由紀夫(著)、新潮社