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『失われた時を求めて』世界最長&文学史上最も偉大な小説とは


更新日:2016/12/16

『失われた時を求めて』表紙

失われた時を求めて
マルセル・プルースト(著)、鈴木道彦(訳)
集英社

難解であったり長編であるという理由から、「読了すれば自慢できる作品」というのがあったとしたなら、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』は代表格と呼べるのではないでしょうか。

「世界最長の小説」としてギネス認定されており、その量は日本語訳では400字詰め原稿用紙10,000枚、9,609,000文字数にのぼる大作。
その量の多さに、あの村上春樹さんも途中で挫折したといいます。

ボリュームの多さがとにかく取り上げられる『失われた時を求めて』ですが、「20世紀を代表する小説」「文学史上最も偉大な小説」として世界的に評価が高い作品です。
長期休みがあれば、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。

 

テーマは「無意志的記憶」

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『失われた時を求めて』といえば、“マドレーヌ”のシーンが有名でしょう。

帰宅した主人公(中年の男性を想像してください)が寒そうにしているのを見て、お母さんがお茶とマドレーヌをすすめてくれます。
そして、マドレーヌとお茶が口に触れた瞬間、主人公は身震いします。なんとも言えぬ快感が湧き出し、溢れんばかりの幸せが込み上げてきたからです。

この喜びは、マドレーヌとお茶の味や香りから来たのか?! と考えた主人公は、二口目・三口目と口に運びますが、その喜びは劣っていくばかり。

では、あの未知の体験は何だったのでしょうか?

 

主人公は、ふと思い当たります。この味は、日曜の朝にレオニ叔母さんがすすめてくれたものだと。
真実は、主人公の内部にあったのです。

古い過去から、人間の死後、事物の破壊後、何一つ残るものがなくなるときも、ただ匂いと味だけは、もっともごくか弱くはあるが、それだけ根強く、非物質的に、執拗に、忠実に、なお長い間かわることなく、魂のように残っていて、あの追憶の膨大な建築を、他のすべてのものの廃墟のうえに、喚起し、期待し、希望し、匂いと味の極微の雫のうえに、しっかと支えるのだ。
(『失われた時を求めて(1)第一篇スワン家の方へ1 』マルセル・プルースト著、鈴木道彦役訳版(集英社)p48)

 

これは「無意志的記憶」のエピソードの一例です。

「無意志的記憶」とは、自身の意志とは関係なく、昔の記憶が蘇ること。
たとえば、香水の匂いで昔の恋人を思い出す、おふくろの味で幼い頃を思い出す……など、似た体験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

私たちはその記憶をつかんだ時、時空を超え「失われた時」を再び生きることができるというわけです。

この「無意志的記憶」は本書のテーマであり、本書を語る上で欠かせないポイントなのです。

 

「名作」と評価される理由

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「円環的時間」という実験的な試み

物語の中では、主人公が「無意志的記憶」によって過去を思い出すなど、過去・現在・未来が交錯する手法が取られています。

今では珍しい手法ではありませんが、幾つもの時間の流れが同時に進行しているかのような表現方法や「円環的時間」的な思考は、当時の文学界では衝撃的なものだったと言われています。

また、本書は劇的な展開が起きるわけでもないのが特徴でもあり、それ故に時間的な流れを愉しむ作品であると言えそうです。

 

「非日常」の極みといえる独特な世界観

プルーストの文章は本当に個性的です。一文が長いですし、言い回しも独特です。冒頭部分で挫折してしまう人は少なくないでしょう。

でも、少し頑張ってみてください。毎日じっくりと読み進めていくと……
この独特な世界観、雰囲気にずっと浸っていたい、終わってほしくない…とプルーストの文体にハマっている自分に気づくことでしょう。(私がそうでした)

そう、非日常の極みです。小説は非日常を愉しむことができる手段ですが、本書はまるで夢の中にいるような気持ちにさせてくれます。

 

「失われた時を求めて」のおすすめ入門書

『失われた時を求めて 全一冊』表紙

失われた時を求めて 全一冊
マルセル・プルースト(著)、角田光代(訳)
新潮社

あまり知られていませんが、『失われた時を求めて』には、人気作家の角田光代さんが翻訳したものがあります。

長編を1冊にギュッと詰め込んだ作品なので、角田さんがあとがきで「興味のない人、興味はあるが読むつもりのない人にこそ、入門編として手にとってほしい」と書かれているように、世界観を簡潔に楽しみたい読者にはもってこいです。

 

『プルーストを読む「失われた時を求めて」の世界』表紙

プルーストを読む「失われた時を求めて」の世界
鈴木道彦(著)、集英社

また、入門書として『プルーストを読む『失われた時を求めて』の世界』という作品もおすすめです。

『失われた時を求めて』の翻訳者である鈴木道彦さんの作品であり、この1冊を先に読むだけで、本家本元の『失われた時を求めて』への理解が格段に上がりますよ。

 

『まんがで読破 失われた時を求めて』表紙

まんがで読破 失われた時を求めて
バラエティ・アートワークス(著)、イースト・プレス

『まんがで読破 失われた時を求めて』は、その名の通り、漫画化されたもの。1時間以内で読むことができるので、あらすじを知りたい人にはおすすめです。

ただ、先に漫画を読んでしまうと、そのイメージが強く残ってしまうこともあるので、その点はお気をつけくださいね。

 

冬休みに「失われた時を求めて」を読んでみよう

「失われた時を求めて」のような超長編作品は、長期休暇だからこそ挑戦できるもの。ぜひこの年末年始に挑戦し、周りの人に自慢してくださいね!

【おすすめ記事】世界一長い小説と日本一長い小説とは?

 

今回ご紹介した書籍

失われた時を求めて
マルセル・プルースト(著)、鈴木道彦(訳)、集英社

失われた時を求めて 全一冊
角田光代(訳)、新潮社

プルーストを読む「失われた時を求めて」の世界
鈴木道彦(著)、集英社

まんがで読破 失われた時を求めて
バラエティ・アートワークス(著)、イースト・プレス

 

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