ブックオフオンラインコラム
ブックオフオンライントップへ
ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > 文学小説 > 『カラマーゾフの兄弟』あらすじとその魅力を解説/ドストエフスキーの未完の傑作に迫る

『カラマーゾフの兄弟』あらすじとその魅力を解説/ドストエフスキーの未完の傑作に迫る


brothers_karamazov

世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ。

これは、村上春樹さんが翻訳した作品『ペット・サウンズ』のあとがきで書かれた一言です。あなたはどちらでしょうか?

“人類文学の最高傑作”と評されることも多い『カラマーゾフの兄弟』。

本書は、ドストエフスキーが亡くなる80日前に完成した作品で、続編が予定されていたものの未完で終わっています。未完にも関わらず、なぜここまで評価されているのか気になる人は多いのではないでしょうか。

難解な小説ではありますが、ぜひ挑戦してその理由を確かめてみてください。

■ご紹介書籍
カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫版)
著:ドストエフスキー

 

カラマーゾフ家の兄弟たちとあらすじ

brothers_karamazov1

フョードル・カラマーゾフ(父):強欲で好色な地主。
ドミートリィ(長男):直情的な放蕩息子。
イワン(次男):知的なインテリ。無神論者。
アリョーシャ(三男):心優しく真面目な修道僧。
スメルジャコフ(フョードルの私生児):カラマーゾフ家の使用人で料理番。

ある夜、父・フョードルが何者かに殺され、大金が盗まれる。そこで、フョードルと不仲だった長男・ドミートリィが疑われるが、いったい誰が殺したのか?謎が解き明かされていきます……。

 

『カラマーゾフの兄弟』が最高傑作であるゆえんとは?

brothers_karamazov2

では、『カラマーゾフの兄弟』が最高傑作と評される理由は何なのでしょうか。

「ミステリー、恋愛、宗教、家族など、あらゆるジャンルの小説エッセンスが織り交ぜられているところ」
「深い人間洞察からキャラクターが創造されているところ」
「カラマーゾフ家の家庭の物語の裏側に、世界史が隠されているところ」

など、いろいろと意見があると思います。

でも、一番の理由は、“人類に共通な永遠の悩み”を問題提起し、答えを出しているところだと思います。

お前は個人たると全人類たるとを問わず、すべての人間に共通する永遠の悩みに答えることになったはずだった。

その悩みとは《だれの前にひれ伏すべきか?》ということにほかならない。

(略)

人間という哀れな生き物の苦労は、わしなり他のだれかなりがひれ伏すべき対象を探しだすことだけではなく、すべての人間が心から信じてひれ伏すことのできるような、それも必ずみんながいっしょにひれ伏せるような対象を探しだすことでもあるからだ。まさにこの跪拝の統一性という欲求こそ、有史以来、個人たると人類たるとを問わず人間一人ひとりの最大の苦しみにほかならない。統一的な跪拝のために人間は剣で互いに滅ぼし合ってきたのだ。

(略)

この世界から神が消え去るときでさえ、同じことだろう。どうせ人間どもは偶像の前にひれ伏すのだからな。(新潮文庫版 上巻 p639-640)

本書では、世界中の人々が思い悩んでいるテーマ(「神はいるのか?」「神がいるなら、なぜ悪が存在するのか?」など )を、一つ一つ問題提起し、明確な答えを出してくれているのです。

哲学的な記述が続きますが、自分では到底辿り着くことができない答えを提言してくれているので、どんどん引き込まれていきます。本書で価値観が変わったという人が多いのも理解できますね。

また、登場人物はそれぞれ悩みを抱えています。誰に一番共感できるか、自身の深層心理に照らし合わせて読むと、さらに自分のことを理解できるかもしれません。

 

日本人作家たちが語る『カラマーゾフの兄弟』のすばらしさ

brothers_karamazov4

もちろん本書に影響を受けた日本人作家は多く、その数は数え切れないほどです。その中には、ドストエフスキーにとことん心酔した作家や、影響を受けてしまったがゆえ自らの才能に絶望した作家も……。

今回は、3人の作家をピックアップし、「カラマーゾフの兄弟」について言及している文章を引用したいと思います。

◆村上春樹

もし「これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を三冊あげろ」と言われたら、考えるまでもなく答えは決まっている。

この『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』である。

『グレート・ギャツビー』(p333)

◆坂口安吾

僕がドストエフスキイに一番感心したのは「カラマーゾフの兄弟」ね、最高のものだと思った。 アリョーシャなんていう人間を創作するところ……。

 

アリョーシャは人間の最高だよ。涙を流したよ。ほんとうの涙というものはあそこにしかないよ。

『小林秀雄対話集』(p31~p33)

◆遠藤周作

『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』のような根源的な観念をまるで核の分裂のように吐きだせる人物を今の私の力倆ではとても、創作できるとは思えない。

 

小説技術的にも何とすごい作家だと思った。

その時はいつか、自分もドストエーフスキイのような小説を書くべしと思った。しかし、思えばそれは、こわいもの知らずであった。以来二十年、私ができたのは、結局、私の理想的人物を描いた作品に『白痴』からヒントをえた『おバカさん』という題名を与えたぐらいであった。

『遠藤周作文学全集13』(p54~55)

 

『カラマーゾフの兄弟』を読破し達成感を感じよう

brothers_karamazov3

村上春樹さんの言葉にあるように、世の中には『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人がいるなら、読破した側に行きたいと思う読書家のみなさん。

第一部を乗り切れば、第二部・第三部と徐々に面白くなっていきます。

ぜひ読破して達成感を感じてみてください。

■ご紹介書籍
カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫版)
著:ドストエフスキー

 

【おすすめの記事】
ドストエフスキー『罪と罰』を読んでいないのに読書会を開催!?三浦しをんさんら4人の「読まない読書会」をご紹介。

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。