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『カラマーゾフの兄弟』あらすじと魅力|ドストエフスキーの未完の傑作に迫る


更新日:2019/12/13

『カラマーゾフの兄弟』あらすじと魅力

世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ。

これは、村上春樹さんが翻訳した作品『ペット・サウンズ』のあとがきで書かれた一言です。あなたはどちらでしょうか?

“人類文学の最高傑作”と評されることも多い『カラマーゾフの兄弟』。

本書は、ドストエフスキーが亡くなる80日前に完成した作品で、続編が予定されていたものの未完で終わっています。未完にも関わらず、なぜここまで評価されているのか気になる人は多いのではないでしょうか。

難解な小説ではありますが、ぜひ挑戦してその理由を確かめてみてください。

 

 

『カラマーゾフの兄弟』あらすじ

『カラマーゾフの兄弟』表紙

カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキー(著)、光文社ほか

『カラマーゾフの兄弟』あらすじ

街で有名なカラマーゾフ家の主フョードルには、息子が4人いる。なかでも長男のドミートリィは、父のフョードルと折り合いが合わず、常に喧嘩ばかりしていた。

そしてついに、ドミートリィはフョードルの殺害を計画。
召使いのグリゴーリイによって止められるものの、翌日フョードルのが何者かに殺され、さらに大金が盗まれていた。当然のようにドミートリィが疑われるが――。

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『カラマーゾフの兄弟』登場人物

フョードル・カラマーゾフ
カラマーゾフ家の父。強欲で好色な地主。

ドミートリィ(ミーチャ)
長男。フョードルと前妻の子。直情的でキレやすい放蕩息子。

イワン
次男。フョードルと後妻の子。知的なインテリで無神論者。

アレクセイ(アリョーシャ)
三男。イワンと同じく、フョードルと後妻の子。心優しく真面目な修道僧。本作の主人公にあたる。

スメルジャコフ
フョードルの私生児。カラマーゾフ家の使用人で料理番。てんかんの発作を抱えている。

グリゴーリイ、マルファ
フョードルの召使い夫婦。

 

同じ人物でもあだ名が多く登場するため読みにくさを感じるかもしれませんが、
ドミートリィ=ミーチャ、アレクセイ=アリョーシャ
と覚えておけば大丈夫です!

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『カラマーゾフの兄弟』が最高傑作であるゆえんとは?

本

では、『カラマーゾフの兄弟』が最高傑作と評される理由は何なのでしょうか。

「ミステリー、恋愛、宗教、家族など、あらゆるジャンルの小説エッセンスが織り交ぜられているところ」
「深い人間洞察からキャラクターが創造されているところ」
「カラマーゾフ家の家庭の物語の裏側に、世界史が隠されているところ」

など、いろいろと意見があると思います。

 

でも、一番の理由は、“人類に共通な永遠の悩み”を問題提起し、答えを出しているところだと思います。

お前は個人たると全人類たるとを問わず、すべての人間に共通する永遠の悩みに答えることになったはずだった。

その悩みとは《だれの前にひれ伏すべきか?》ということにほかならない。

(略)

人間という哀れな生き物の苦労は、わしなり他のだれかなりがひれ伏すべき対象を探しだすことだけではなく、すべての人間が心から信じてひれ伏すことのできるような、それも必ずみんながいっしょにひれ伏せるような対象を探しだすことでもあるからだ。まさにこの跪拝の統一性という欲求こそ、有史以来、個人たると人類たるとを問わず人間一人ひとりの最大の苦しみにほかならない。統一的な跪拝のために人間は剣で互いに滅ぼし合ってきたのだ。

(略)

この世界から神が消え去るときでさえ、同じことだろう。どうせ人間どもは偶像の前にひれ伏すのだからな。(新潮文庫版 上巻 p639-640)

 

本書では、世界中の人々が思い悩んでいる「神はいるのか?」「神がいるなら、なぜ悪が存在するのか?」などテーマを一つ一つ問題提起し、明確な答えを出してくれているのです。

哲学的な記述が続きますが、自分では到底辿り着くことができない答えを提言してくれているので、どんどん引き込まれていきます。
本書で価値観が変わったという人が多いのも理解できますね。

 

また、登場人物はそれぞれ悩みを抱えています。誰に一番共感できるか、自身の深層心理に照らし合わせて読むと、さらに自分のことを理解できるかもしれません。

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日本人作家たちが語る『カラマーゾフの兄弟』のすばらしさ

本の上に男性の腕

もちろん本書に影響を受けた日本人作家は多く、その数は数え切れないほどです。
その中には、ドストエフスキーにとことん心酔した作家や、影響を受けてしまったがゆえ自らの才能に絶望した作家も……。

今回は、3人の作家をピックアップし、『カラマーゾフの兄弟』について言及している文章を引用したいと思います。

 

◆村上春樹

もし「これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を三冊あげろ」と言われたら、考えるまでもなく答えは決まっている。

この『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』である。

『グレート・ギャツビー』(p333)

 

◆坂口安吾

僕がドストエフスキイに一番感心したのは「カラマーゾフの兄弟」ね、最高のものだと思った。 アリョーシャなんていう人間を創作するところ……。

 

アリョーシャは人間の最高だよ。涙を流したよ。ほんとうの涙というものはあそこにしかないよ。

『小林秀雄対話集』(p31~p33)

 

◆遠藤周作

『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』のような根源的な観念をまるで核の分裂のように吐きだせる人物を今の私の力倆ではとても、創作できるとは思えない。

 

小説技術的にも何とすごい作家だと思った。

その時はいつか、自分もドストエーフスキイのような小説を書くべしと思った。しかし、思えばそれは、こわいもの知らずであった。以来二十年、私ができたのは、結局、私の理想的人物を描いた作品に『白痴』からヒントをえた『おバカさん』という題名を与えたぐらいであった。

『遠藤周作文学全集13』(p54~55)

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『カラマーゾフの兄弟』を読破し達成感を感じよう

本を読む老人

村上春樹さんの言葉にあるように、世の中には『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人がいるなら、読破した側に行きたいと思う読書家のみなさん。

第1部を乗り切れば、第2部、第3部と徐々に面白くなっていきます。

いったい誰がフョードルを殺したのか? 謎が解き明かされていきます。ぜひ読破して達成感を感じてみてください。

【おすすめ記事】未読の人は要チェック!『罪と罰』を読まないで語り合う本

 

今回ご紹介した書籍

カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキー(著)、光文社ほか

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