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覚えてる? 今読んでも衝撃的な、教科書に載っていたあの名作


読者のみなさまは、「懐かしい作品を読みたい」という欲に駆られることはありませんか?

私はときどき、無性に「懐かしい作品を読みたい」という気持ちになります。そこで、久しぶりに「教科書に掲載されていた作品」を大人になって読み返してみました。

するとその面白さたるや! 大人になってから気づく視点があったり、記憶にはない結末に驚愕したりと、大変楽しめました。

 

今回のコラムでは、何十・何百と存在する作品のなか、特に印象的で、衝撃的だった作品をピックアップしました。

みなさまもぜひ、「懐かしい!!」と興奮しながら、読んでみてくださいね。

 

「戦争」というものの恐ろしさとは……。
『夏の葬列』

『夏の葬列』
山川方夫(著)、集英社

~あらすじ~

疎開児童の「僕」と、2つ年上で僕にいつも優しい「ヒロ子さん」の物語。

太平洋戦争末期の夏の日、二人が住む小さな海辺の街に艦載機が現れます。
「白い服は絶好の目標になる!」という大人の声を聞いた僕は、白い服を着て僕を助けにきた「ヒロ子さん」を思わず突き飛ばしてしまいます。

そして年月は経ち、僕は再びその思い出の地を訪れるのですが……

 

約10ページというボリュームにもかかわらず、これほどまでに強烈な印象を与える作品はなかなかないでしょう。

大人になってから読むと、本作品が中学校の教科書に掲載されていたなんて……信じられないほど衝撃的な内容です。まさしく、異彩を放つ名作だと思います。

人間の残酷さと悲しさ、浅ましさ。救いのなさ。戦争の恐ろしさ。

小学生の「僕」が取り乱してヒロ子さんを突き飛ばしてしまったこと。死を目前にすれば誰もが正気ではいられないことが理解できるぶん、読んでいて苦しいです。でも、「僕」の罪はそれだけではありませんでした…。

ネタバレになるので多くは語りませんが、結末には言葉を失いますよ……。

 

大人になったからこそもう一度読んでほしい。
『少年の日の思い出』 

『少年の日の思い出』
ヘルマン・ヘッセ(著)、草思社

~あらすじ~

主人公の少年は、蝶の採集に夢中の日々を過ごしていました。

ある日、見たことのない蝶を捕まえた少年は、その蝶を、隣家に住む優等生・エーミールに見せるも、価値を否定され落ち込んでしまいます。
その後、少年は、エーミールが珍しい蝶を捕まえた噂を聞きつけます。どのような蝶か、一目見たいと考えた少年は、エーミールの部屋に忍び込み……?

 

こちらも10ページほどの短編です。重い空気を纏った独特な作品ですので、記憶の片隅にある人もいるかもしれません。

優等生のエーミールに対して、少年はいつも劣等感を感じていました。だから、珍しい蝶を見つけた時も最初に見せに行ったのです。(結果、すべて否定され、少年は傷ついてしまうのですが……。)

結末がまた切ないです。中学時代は分からなかった「主人公の行動の意図」も、今読み直すと理解できるはず。自分が成長していることを改めて感じるのも楽しいものですよ。

 

プライドの高さゆえに李徴はあるものに……。
『山月記』

『山月記』
中島敦(著)、新潮社

~あらすじ~

若くして官僚の試験に合格した博学・俊才の李徴。しかし、自身の仕事に不満を抱いたこと、頑固で他人に心を開こうとしない性格、プライドの高さから、詩人として名を遺そうと退職します。

だが、生活は苦しく、妻子のために再び官吏の職に就くことに。昔は歯牙にもかけなかったかつての同輩は、すでに高位に進んでおり、屈辱的な生活を強いられた李徴は……?

 

約10ページの短編ながら、格調高く、一度読めば忘れられない名作。

描かれている時代は西暦700年代なのに、こんなにも心に響くのは……李徴の生き方は決して特殊ではなく、現代を生きる私たちにも通ずるところがあるからではないでしょうか。

自分に自信があって、プライドが高く、自分は夢を叶えられる一握りの人間だと思い込んでしまう未熟さ。努力をしても報われず、夢破れた時の絶望感。自分の周りは先に進んでいると知った時に感じる焦燥感。

みなさまの中にも、そのような経験のある方がいらっしゃるかもしれません。結末は何度読んでも涙が出そうになります。

 

狂気すら感じる作品
『セメント樽の中の手紙』

『セメント樽の中の手紙』
葉山嘉樹(著)、角川書店

~あらすじ~

ダム建設現場で働く男がセメント樽の中から見つけたのは、セメント会社で働いているという女工からの手紙でした。そこに書かれていた悲痛な叫びとは……?

 

プロレタリア文学における金字塔的作品。

10ページにも満たない掌編です。なので、あまり詳しく内容を書けないのですが、一言でいうと「読後感がゾワっとする、狂気すら感じる作品」です。

初めて読んだ時、「この作品って教科書に掲載して大丈夫なんだろうか?」という疑問が頭の中によぎってしまったほど。

現代であればあり得ないような事件ですが、当時は労働者の命が軽視されていたのでしょう。その悲哀がぐっと伝わってくる名作と言えるでしょう。

 

ノスタルジー溢れる作品たち

今回のコラムでは、「懐かしい」作品たちを集めてみました。いろんな視点から楽しんでみてくださいね。

今回ご紹介した書籍

夏の葬列
山川方夫(著)、集英社

少年の日の思い出
ヘルマン・ヘッセ(著)、草思社

山月記
中島敦(著)、新潮社

セメント樽の中の手紙
葉山嘉樹(著)、角川書店

 

教科書に載っていた、泣ける名作も。読んだことがあるでしょうか?