太宰治作品ベスト3から見る!太宰治作品の魅力とは?
昭和の時代を代表する作家、太宰治の作品を読んだことがありますか?
教科書に載っている作品もあり、一度は触れたことがあるのではないでしょうか。
今回は、太宰治の作品ベスト3をご紹介します。
今回ご紹介するのはこの3作
1.人間失格
生田斗真さん主演で映画化された『人間失格』は、新潮社文庫版の累計発行部数で夏目漱石の『こころ』とトップを争う作品。
2.走れメロス
国語の教科書でおなじみの『走れメロス』は、実は走っていなかったという検証結果が出ています。
あなたなら、最後の5行は必要ですか?それとも不要でしょうか?
3.斜陽
今なら流行語大賞に選ばれそうな言葉「斜陽族」を生み出した『斜陽』は、佐藤江梨子さん主演で映画化された作品です。
いずれも、太宰治の代表作です。
太宰を読んだことがある方も、これから読む方も、太宰ワールドを楽しんでみてください!
夏目漱石とトップを争う
『人間失格』
『人間失格』
集英社
『人間失格』は太宰治の代表作であり、遺書とも言われています。
1948年の3月~5月に書かれ、同年の6月13日には太宰が玉川上水で入水自殺したからです。
戦後の本作の売り上げは、新潮社の文庫版のみで累計発行部数が約670万部(2014年時点)という驚異的な数字で、同文庫の夏目漱石の『こころ』とトップ争いをしています。いかにファンが多いかわかりますね。
太宰治生誕100年の2009年に公開された映画「人間失格」では、主人公の大庭葉蔵を生田斗真さんが演じました。
原作では、主人公は自意識過剰なため人間関係がうまくいかない男として描かれていますが、映画では原作とは違ったイメージの人物像になっています。比べてみるのも、面白そうです。
芥川龍之介への心酔から、芥川賞を切望した太宰治。当時選考委員だった太宰の師・佐藤春夫の自宅まで何度もお願いに訪れて、最後には師を怒らせてしまいました。佐藤宛に連日送った懇願の手紙が、現在も残っています。
結局は、芥川賞の候補までいっても受賞には至らなかった太宰ですが、『人間失格』が今、芥川賞候補になったとしたら受賞するでしょうか。今の選考委員の方々に、ちょっと聞いてみたいですね。
ラスト5行は必要か否か
『走れメロス』
『走れメロス』
新潮社
太宰は、最初の妻・小山初代と離婚した後、29歳の時に二番目の妻・石原美知子との縁談が持ち上がり、作風を明るくする転機となりました。
『走れメロス』は31歳の時に書かれた作品で、子どもにもわかりやすい正義と友情の物語です。日本で子ども時代を過ごした人なら、きっと国語の教科書で本作と出会っているでしょう。
タイトルどおり、本作はメロスが親友セリヌンティウスとの約束を果たすため、そして邪智暴虐の王に正義を示すために走ります。実は、メロスがどれぐらいの速度で走ったのかを検証した人がいます。
2013年に、理数教育研究所主催の算数・数学の自由研究のコンクールで最優秀賞を受賞した、当時 中学2年生の村田君のレポート『メロスの全力を検証』の中で、太宰の記述の矛盾が指摘されています。
メロスが走った往路の10里は、約39km。往路は10時間ほどかかったと仮定して、時速3.9kmと推定。一般男性の歩行速度が時速4kmであることから、往路は走っておらず歩いたのだと、村田君はレポートで言っています。さらに「妹の結婚式のために色々買いこんだものを持っていたので、遅くなったのではないか」との考察をしています。
復路はもっと遅く、時速2.7kmと推定。往路よりもさらに速度が落ちています。
小説を読むとメロスは一生懸命走っているように思えるのですが、検証してみると、歩くか、もしくは早歩き程度の速度だったわけです。
メロスの全力を検証するという発想はなかったです。面白い研究ですよね。
大団円と言える『走れメロス』のエンディングは、すっきりと爽やかな読後感があり、駆け引きの多い現実世界に疲れた大人にもおすすめです。
最後の5行は不要という人もいれば、この5行が好きという人もいて、最後の最後まで楽しめる作品です。
生まれた以上は強く生きなくては
『斜陽』
『斜陽』
新潮社
この『斜陽』で、太宰治は流行作家と呼ばれるようになります。
初版の1万部から何版も重ねてベストセラーとなった本作は、当時人気が高く「斜陽族」という言葉が生まれたほどでした。
後に、太宰の津軽の生家も「斜陽館」と名付けられ、現在は記念館になっています。
とはいえ、太宰は『斜陽』を書いた1年後には亡くなります。自分の成功を全く知らずに亡くなった画家・ゴッホなどと比べると、自分の成功を知ってから亡くなった太宰は、幸せだったと言えるでしょうか。
太宰の代表作である本作には、斜陽族=没落貴族の一家が落ちぶれていく過程が描かれています。
映画「斜陽」は、ヒロインの和子を佐藤江梨子さんが演じました。「人間失格」と同じ2009年に公開されています。
何度となく起こした自殺未遂事件やパビナール中毒に苦しむ中で太宰が執筆した『二十世紀旗手』の副題「生れて、すみません」。これは、太宰が生涯抱えていた思いでしたが、本作では、ラストの和子のたくましさに、それでも生まれた以上は強く生きていかなければというメッセージが込められています。
あなたも太宰治の魅力を見つけてみよう!
『人間失格』で、主人公が自意識過剰なため人間関係がうまくいかないという設定は、太宰治自身のことでしょう。
そのせいか、3回の心中事件と2回の自殺未遂、パビナール中毒と波乱万丈の人生だった太宰。
『斜陽』で太宰が描いた和子のように、太宰にもたくましく生きてほしかったと、思わずにはいられません。
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