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宮沢賢治のおすすめ作品|『注文の多い料理店』の次はこれ!


更新日:2018/3/19

宮沢賢治のおすすめ作品

みなさん、宮沢賢治『注文の多い料理店』はもう読みましたか? 宮沢賢治はあんまり読んだことないけど『注文の多い料理店』なら読んだ!という方もいらっしゃるかもしれません。

今回は宮沢賢治作品大好きなわたしが『注文の多い料理店』が好きなら、きっとこれも好き!という賢治の作品を厳選しました!
『注文の多い料理店』のように、かわいらしい作風とファンタジーの中に、教訓と風刺が詰まった賢治の作品を選んでいます。

宮沢賢治作品で、次は何を読もう? と迷ったら、これがおすすめです!

 

猫の世界のいじめを描く
猫の事務所

『猫の事務所』表紙

猫の事務所

猫の歴史と地理を調べる事務所で働く、擬人化された猫たちの物語。

猫の事務所に、黒猫の事務長と4匹の猫の書記がおりました。
4番書記の竃猫(かまねこ)は、体がすすで汚れているから皆から嫌がられ、「仕事ができる」からと嫉妬され、いつも仲間はずれに。

ある日、竃猫は風邪で仕事を休んでしまい、その隙に3匹の書記は黒猫事務長に、竃猫に関する嘘を吹き込み……

 

14ページしかない短編で、4番書記である竃猫が職場で「差別といじめにあう」お話です。
猫の事務所で起こるできごとは、100年近く前に書かれた作品とは思えないほど、現代の社会に通じています。逆に言うと、100年経っても、人間の本質は変わらない、といえます。

仕事に限らず、一生懸命やればやるほど嫉妬をされ、「他と違う」というだけで仲間はずれにされてしまう。物語中の「竃猫」と同じようなひとがあなたの近くにもいませんか? もしくはあなた自身が、竃猫のようであった時期があるかもしれません。悲しいことですがそれも人生。生きているとそういうことも起こりうるのです。

猫を通して、人間の弱さや恐ろしさ、愚かさを伝える、風刺のきいた1作。かわいらしさの中に、賢治の教訓がちくりと胸に刺さります。

でも、物語には竃猫の頑張りを知っている者もいます。あなたが頑張っていることは、必ず誰かが見ていてくれる。そんな希望も持てるようなお話ですよ!

 

人生に悩んだらこの1冊!
セロ弾きのゴーシュ

『セロ弾きのゴーシュ』表紙

セロ弾きのゴーシュ

ゴーシュは楽団のセロ弾きで、音楽会へ出るために練習をしていた。しかしゴーシュはセロが下手で、楽長に叱られてばかり。
そんなゴーシュのもとに、夜ごとあらゆる動物が訪ねてくるようになる。ゴーシュは毎晩動物のためにセロを弾くことになり……。

 

賢治の代表作のひとつで、絵本で読めるほどの短い物語です。ゴーシュが動物たちにセロを弾いてあげて、動物たちが救われていく……という、魔法のような物語。

ファンタジーなのですが、この『セロ弾きのゴーシュ』大人になってから読むと、こんなお話だったんだ! とびっくりしました。

いくら練習してもセロがうまくならず、みんなの前で叱られて自尊心を傷付けられていくゴーシュ。ゴーシュの苦悩は、子どもの頃読んだ時には深く理解することができませんでした。
しかし大人になって、社会に出て、改めて読みなおすと、ゴーシュの苦悩には涙が出そうになります。

動物たちが沢山出てきて、ほっこりかわいらしいお話だよね……と思いきや、その裏にはゴーシュの劣等感、葛藤、そして成長が描かれており、ゴーシュに起きるすべての出来事が綺麗に繋がっていく見事な作品なんです。

仕事や勉強に行き詰っている人にも、ぜひおすすめしたい1冊です。

 

子どもにしか見えない不思議な世界
どんぐりと山猫

『どんぐりと山猫』表紙

どんぐりと山猫

主人公の少年・一郎が、山ねこが手を焼いている裁判の手伝いをする、というファンタジックな物語。

ある土曜日、一郎は山ねこから、おかしなハガキを受け取る。
ハガキには「めんどうなさいばん」があるから来てほしいと書いてあった。一郎が出かけていった先では、どんぐりたちによる「どのどんぐりが一番偉いか」を決める裁判が始まっていた。

 

主人公の一郎は、小学生。山ねこから届いたおかしなハガキを見ても、ちっとも不思議に思わず、むしろ嬉しくて跳ね回ってしまうような純粋な心を持った子どもです。

一郎が招かれた裁判では、どんぐりたちが、「誰が一番偉いか」でもめています。
頭が丸い者が偉いのか、頭がとがってる者が偉いのか……まさに「どんぐりの背比べだなぁ」と思ってしまう裁判なんですが、かれこれ3日も決着がつかないでいるんです。
さて、一郎はどうやって裁判に決着をつけるのでしょうか?

 

山ねこからハガキがくるなんて、ファンタジー好きとしてはそこからもうワクワクしちゃいます。子どもの時にだけ見える「精霊」みたいなものが、確かにいるのかもしれないと思わせてくれる作品です。

山ねこからのハガキを不思議に思ったり、いたずらだと思ってしまうような大人は、裁判には招かれません。
でも、本作ならどんな大人でも、一郎と一緒に山ねこやどんぐりなど、山に住む者たちのやりとりを楽しむことができますよ!

不思議な世界に迷い込んだような、ファンタジックでかわいらしいお話。ワクワクしながらも、一郎の成長と、大人に近づくことの切なさが垣間見える素敵な物語です。

 

牛飼いが語るオツベルと象の結末は?
オツベルと象

『オツベルと象』表紙

オツベルと象

稲扱きの小屋を管理している地主・オツベルと村の百姓たちが働く仕事場に、突然大きくて白い象がやってくる。

オツベルは、言葉巧みに象を取込み、自分のものにして働かせることにした。
最初は象も喜んで働いていたが、やがてオツベルは、象のエサを減らして、象に過酷な労働をさせていき……。

 

この物語は、ある牛飼いが「オツベルと象の話を語る」という形式で書かれた作品。

童話調のやさしい言葉の中に、人間の傲慢さがゆっくりと浮かび上がってくるストーリーが見事な1作。
そればかりではなく「その傲慢さは、かならず自分に返ってくる」という教訓も童話の中にきちんと描かれている作品なんです。

オツベルと、奴隷のように働かされ続ける象の行く末はどうなるのか……あっと驚くような衝撃的なラストが待っています。

 

ちなみにもうひとつ、わたしのおすすめポイントは、「言葉のリズムが面白い」というところ。たとえば冒頭は、

オツベルときたら大したもんだ。稲扱器械の六台もえつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。

と、文章にリズムがあるんです。この他にも擬音がたくさん使われていたり、リズミカルでやさしい言葉で書かれていたりする本書。すらすらと読めてしまいますよ!

声に出して読んでみると、まるで音楽を聴いているような気持ちにもなれます。賢治の造語や、言葉の面白さに興味がある方もおすすめです。

 

ある青年の「自己犠牲」の物語
グスコーブドリの伝記

『グスコーブドリの伝記』表紙

グスコーブドリの伝記

グスコーブドリはイーハトーヴのキコリの息子。
ある日、ブドリの住む森が飢饉にあい、両親は失踪、妹とも生き別れてしまう。ブドリはやがて、火山局の技師となり、人々を助ける仕事につく。しかしある年、またイーハトーヴに冷害が起こり……。

 

本作のテーマは「自己犠牲」。物語中のブドリのある行動に、賛否両論分かれるお話です。

ブドリはとても立派な青年で、たくさん働き、たくさん学び、たくさんの人々を助けていきます。そしてみんなの幸せのために、ブドリはある行動に出るのですが……

ネタバレになってしまうので、その行動について詳しいことは書けませんが、わたしはこの作品を読み終わったあと、これ以外の道はなかったのか、じゃあどうしたらよかったのか……と悶々と考えてしまいました。

「イーハトーヴ」とは、賢治の作品に登場する理想郷のこと。
賢治の出身地、岩手県がモチーフになっています。少し長めのお話ですが、賢治の描く優しいイーハトーヴの世界と、さわやかな読後と共に、ブドリの存在が深く心に残るでしょう。

「幸せとはなにか」を深く考えさせられる物語です。

 

次はこれを読もう!

宮沢賢治の作品は、『注文の多い料理店』のようにファンタジーの中に教訓や風刺を混ぜた作品がとても多いんです。

どの作品もおすすめなので、ぜひ気になった作品から読んでみてくださいね。

 

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