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【2017年】今年の私のオススメNo.1!『WONDER(ワンダー)』少しだけ余分に親切になろう


こんにちは。文学が大好きなアオノです。

2017年、今年もあとわずかとなりました。

今年もいろいろな小説を読みました。その中から、わたしが今年読んだ本で「2017年今年の1冊はこれだ!」と迷わずおすすめできる本を1冊ご紹介します!

2015年に発売された本ですので、既に読んだ方もたくさんいらっしゃると思いますが、わたしの大好きな1冊です。

 

『WONDER(ワンダー)』

『WONDER(ワンダー)』
R・J・Palacio(著)、中井はるの(訳)
ほるぷ出版

オーガスト・ブルマンは
ふつうの男の子。
ただし、顔以外は――。
(表紙カバーそでより)

 

『WONDER(ワンダー)』はどんなおはなし?

オーガスト・ブルマンは、生まれつき顔に障害のある10歳の男の子。
10歳になり、初めて学校に通うことになった。しかし学校の生徒たちは、オーガストの顔を見て怖がったり、顔をじろじろ見たり「病気がうつる」と避けるばかり。そんな中、オーガストに、だんだんと友達ができていく。しかし、学校の野外授業のキャンプに行ったオーガストたちに、ある事件が起こり……。

 

子どもたちの悩みや葛藤を描く

 

『WONDER(ワンダー)』は、2016年に「第62回青少年読書感想文全国コンクール・小学校高学年の部」の課題図書になった作品です。2017年11月には、アメリカで実写映画の公開が始まりました。

章によって、オーガストの姉、オーガストの友達、と視点がどんどん変わっていき、すべて一人称の口語で書かれているので読みやすく、キャラクターの心情に寄り添い読むことができます。
またすべて子どもからの視点で描かれている為、子どもが読むと、まるで自分たちのことのように感じられるのでないでしょうか。学校で起こる友達同士のいざこざや、家庭での悩み、子ども時代のあらゆる悩みや問題に直面し、考え、立ち向かっていく『WONDER(ワンダー)』は、どこにでもいる子ども達の物語なのです。

 

この『WONDER(ワンダー)』には、大切なキーワードが3つあります。

それは「友達」「家族」そして「親切であること」です。

まずは最初のキーワード「友達」のお話から。

 

何を友達というのだろう?「ジャックの章」

もし、壁の前にずらりと並んだ五年生全員のなかから、いっしょにいたいやつを一人だけ選べって言われたら、ぼくはオーガストを選ぶだろう。(195ページより)

オーガストの友達に「ジャック」という男の子がいます。

オーガストが入学する時に、先生から頼まれてオーガストと一緒にいることになったジャック。仲良く見えていたふたりですが、ある日、ジャックがオーガストを傷付ける発言をしてしまいます。

 

ふたりからみた「事件」

なぜジャックは、ひどいことを言ったのか。オーガストとジャック、一度離れてしまったふたりの友情がどうなっていくのか。オーガストの章とジャックの章を読むと、事件の真相が見えてきます。

オーガストから見たこの「事件」と、ジャックから見た「事件」、両方の視点から一つの事件について語られていくのもこの本の面白さのひとつ。
「ひとつの出来事は、片方の側面からだけではわからないこともある」ということを実感するエピソードです。

 

オーガストと出会った公園でのできごと

また、ジャックの章では、ジャックが公園で、初めてオーガストと会った時のエピソードが登場します。これは、パラシオさんが息子と公園に行った時に実際に体験したできごとが元になっています。

パラシオさんは「自分はどうすればよかったのか、子どもたちにどう教えれば次により良い対応ができるのか」と一日考え続けたそうです。 そんな体験から『WONDER(ワンダー)』が生まれました。

あらゆることに対して「あなたならどうする?」と問いかけてくる本書。そのたびに、自分ならどうするだろう、と沢山考えながら読むことができるところも、おすすめしたい理由のひとつです。

 

次に、もう一つの大切なキーワード「家族」について。

 

家族だから感じること。「ヴィアの章」

 ほかの人がするようにオーガストを見たことは、ぜんぜんなかった。たしかにふつうの外見ではないけど、はじめてオーガストを見た人が、あんなにぎょっとする理由がわからなかった。驚愕、嫌悪、恐怖――その人たちの表情からいろんな思いが伝わってくる。(115ページより)

オーガストの姉オリヴィア(通称ヴィア)は、オーガストが悪口を言われたりすると、大人相手にも怒ってくれる姉です。しかし、ヴィアの章では、ヴィアが弟を心から愛していながら、初めて弟に「驚愕、嫌悪、恐怖」を抱いてしまった時のことが語られます。

高校生になったヴィアは、弟の存在を隠そうとし、そんな自分に傷ついていきます。また、それまで仲良しだった友達とも、距離が離れてきます。

 

姉としての自分と「オリヴィア」としての自分がいる

オーガストを愛している姉としての自分と、オリヴィアという一人の人間としての自分の間で揺れ動く、彼女の葛藤や戸惑いには、わたしも心が揺さぶられました。

家族間の問題に限らず、誰にだって、誰にも言えない気持ちがあるものです。
誰もが一度は体験したことがあるだろう悩み、これから子どもたちが体験するだろう悩みや変化を、ヴィアはどう受け止め、どう乗り越えていくのでしょうか。

「ヴィアの章」は、学生時代を思い出し感情移入してしまう人も多いと思います。

 

そして、作者のパラシオさんが本書に込めたのは「親切であることを選択してほしい」という想いだそうです。

 

「少しだけ余分に親切にする」ということ

 

オーガストの学校の校長先生が、子ども達に向かって行うスピーチの中でこんな言葉が出てきます。

「ジェームズ・バリーによる別の作品『小さな白い鳥』のなかに、こんな文章があります……」

「『人生の新しい規則を作ろうか……いつも、必要だと思うより、少しだけ余分に人に親切にしてみよう』(402ページより)

ジェームズ・バリーとは、あの有名な『ピーターパン』の作者です。

わたしは『WONDER(ワンダー)』と、子どもの時に出会いたかったと思いました。人に親切にしていなかったわけではないと思うけれど、この本と出会っていたなら、きっとこの言葉を胸に、オーガストのように強い心を持って、姉のヴィア、友達のジャック、そしてオーガストの他の友達たちのように親切な心を持って、子ども時代を駆け抜けられたのではないかと思うのです。

大人になった今、子どもの頃には戻れませんが、ぜひ沢山の子ども達がオーガスト達の物語と出会って、人に少しだけ余分に親切になろうと思ってくれたら嬉しい。また、友達同士の悩みを抱えている子がいたら、ぜひ読んでみて欲しい。

そして、大人のみなさんにも、子どもの世界のあらゆる悩みから目をそらさずに、見つめていてほしい。

そう思って、この本を今年の1冊に選びました。

 

『WONDER(ワンダー)』に込められた想いを感じて欲しい

ワンダーは「いじめ」に対する様々な問題が描かれており、「親切」や「優しさ」、「友達」「家族」について考えるきっかけを沢山くれる、優しい一冊です。

また、続編として、オーガストをいじめる子、同級生、オーガストの幼なじみからの視点を描く『もうひとつのWONDER(ワンダー)』も出版されています。

ぜひ一度、読んでみてください。

 


今回ご紹介した書籍


『WONDER(ワンダー)』
R・J・Palacio(著)、中井はるの(訳)、ほるぷ出版


『もうひとつのWONDER(ワンダー)』
R・J・Palacio(著)、中井はるの(訳)、ほるぷ出版