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芸能界きっての読書家・黒木瞳が惚れ込んだ「嫌な女」


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吉田羊さん&木村佳乃さんがW主演の映画「嫌な女」。女優の黒木瞳さんが初監督を務めた作品ということで話題となりました。また、2016年の3月〜4月に、黒木瞳さん主演で、NHK BSプレミアムのドラマとして放送された作品でもあります。

黒木瞳さんは、読書家として知られていますが、桂望実さんが描いた本書「嫌な女」を読んで衝撃を受けたといいます。その内容に惚れ込み、映画化を強く希望したのだとか。その強い思いから、映画権を取得し、監督のメガホンを取ったといいます。(「嫌な女」公式ホームページより)

黒木瞳さんは記者会見でこのような言葉を残しています。

「監督をするのが目的ではなく、この作品が映画になって多くの方に喜んでいただきたい」
「ずっと映画作品に出演させていただいている私が、監督をしようと決めたのはいうまでもない。この小説に出会ったから。監督をさせていただくことは身に余る光栄」

黒木瞳さんがそれほどまでに惚れ込んだ「嫌な女」。いったいどのような作品なのでしょうか。

 原作『嫌な女』 / 桂望実(著)、 光文社文庫

 

「嫌な女」~あらすじ~

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本書の主人公・石田徹子は、女性弁護士。真面目にこつこつと勉強をしてきて、ストレートで司法試験に合格した才媛です。結婚して、人も羨む幸せな人生を送っているように見えて、仕事も結婚生活も上手くいかず、心に空白と孤独を抱え、虚しい毎日を過ごしています。

ある日、一人の女性が徹子に弁護を頼みたいと訪ねてきます。女性の名前は小谷夏子。徹子の親戚でした。「人と同じなんて絶対に嫌!死んでも嫌!」が口癖で、派手で目立ちたがり屋の夏子が昔から苦手だった徹子。幼少時代のトラブルがキッカケで夏子とは随分長いこと会っていませんでしたが、これを機に二人の間に交流が生まれます。

夏子は男性をその気にさせる天才、生まれながらにしての詐欺師でした。どんな人でも夏子の手にかかれば、初対面でもたちまち気を許してしまい、彼女との未来を夢見た男性はいつの間にか自らお金を出してしまうのです。

夏子は結婚詐欺を繰り返しますが、ツメが甘く、色んな人に訴えられるように。トラブルが絶えず、夏子はそのたびに徹子のもとへ来るようになるのですが……。

 

「嫌な女」で描かれる二人の女性

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「嫌な女」。このタイトルを見て、あなたはどのような印象を持ったでしょうか。
悪女が描かれた作品?昼ドラのようなドロドロとした作品?女の醜い諍いが描かれた作品?
あなたの想像は、良い意味で裏切られることでしょう。

本書は、8つの短編で構成されています。本書の主人公・徹子が弁護士になった24歳から始まり、29歳、36歳、40歳、47歳、56歳、65歳、71歳と、順を追って話が進んでいきます。

 

心の中はいつも空虚で友達も少なく、ただただ平凡であることを望む徹子。会話上手で誰からも愛されるけれど、嘘つきで平凡を忌み嫌い、結婚詐欺を繰り返す夏子。

生まれながらにして周囲を惹きつける夏子ですが、夏子 の「愛されテクニック」には思わず唸らされます。「宝くじで百万円当たったらどうするか?」「自分の今までの人生で楽しかったベストテンは?」といったような雑談を広げていき、いつしか相手の心をつかんでいるのです。

そんな夏子が理解できず、夏子が来るたびに辟易する徹子。まさに正反対の二人。
しかし、徹子は年齢を重ねるごとに夏子を面白いと思っている自分に気づきます。夏子の訪問を心待ちにしていることも……。

長い年月が徹子の価値観を少しずつ変えていく様は、私たちに教えてくれます。年齢を重ねることは決して悪いことじゃないということを。

 

「嫌な女」で考えさせられる“人生いろいろ”

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タイトルの「嫌な女」。本書を読んでいると、つい「嫌な女=夏子」という方程式を当てはめがちです。しかし、忘れてはいけないのが「誰にとって、嫌な女?」という視点。

結婚詐欺を繰り返す夏子は、たびたび訴えられますが、男性は皆「夏子にもう一度会いたい」から訴えを起こしていたのでした。不思議なことに夏子に騙された男性たちは、決して夏子を恨んではいません。むしろ夏子といると、なんだか自分に希望を持てたんだ、と感謝さえしていたのです。

夏子に騙された男性たちにとって、夏子は「嫌な女」ではありませんでした。むしろ「良い女」だったのです。

この事実に私は、衝撃を受けました。受け手によって、嫌な女にも良い女にもなりうる。結婚詐欺が男性に夢を与えることもある。(けっして許されることではありませんが)人生いろいろということ。

自分の価値観を壊すことの面白さ。当たり前かもしれないけれど、色んな人がいるから、人の数だけ人生があるから、世の中は楽しい。そんなことを改めて思い出させてくれる一冊です。

 

「嫌な女」を読んでみよう

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読書家として知られる黒木瞳さんが惚れ込んだ「嫌な女」。

約50年という月日を経た女性の一生涯を描いた、スケールの大きい作品となっており、読み応えは十分。読んだ後は深い余韻が残る一冊です。非常に面白いので、映画の上映を機に、一度読んでみるのはいかがでしょうか?

ご紹介書籍
■『嫌な女』 / 桂望実(著)、 光文社文庫

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。