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西加奈子さんのおすすめ作品5選|『サラバ』など又吉さんの帯と共にご紹介


こんにちは!本屋さんを何軒もハシゴしてしまうアオノです。

最近、ピース又吉さんが本の帯を沢山書いているのはご存知ですか?
何か面白そうな本はないかな?と本屋さんを渡り歩いていると、かなりの確率で又吉さんの帯に出会います。

又吉さんといえば、先日二冊目の小説『劇場』が出版されましたね。読書芸人で、自身も執筆をされていて、帯にも引っ張りだこの又吉さんが帯を書いているとなれば、なんだかおもしろそうだと思わず手に取ってしまいます。

そこで、今回は又吉さんが帯を書いている沢山の小説の中から、私が今一番注目している作家、西加奈子さんの小説5作品を、又吉さんの帯と共にご紹介します!

西加奈子さんは、イランのテヘラン生まれ、エジプトのカイロ・大阪育ち。
著書の表紙は鮮やかで個性的なデザインが多く、一度見たら忘れられないほど印象的なものが多数あります。
小説家であり、美術家でもある西加奈子さんは、自身の小説の表紙を数多く手掛けています。

本屋さんで一度は目にしたことがあるだろうあの作品から、一風変わったミステリー風の作品まで。

西加奈子さんの作品をまだ読んだことがない人も、西加奈子さんワールドに少し足を踏み入れてみませんか?

 

絶望する前に読んでほしい『炎上する君』

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『炎上する君』
角川文庫

散歩中に拾った、自分と同じ機種の携帯電話。その携帯に届いたメールに何の気もなしに返信した私は、返ってきた温かいメールに励まされ、やがて毎日やりとりを始める――(「空を待つ」)我々は足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて――(炎上する君)何かにとらわれて動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化。奔放な想像力がつむぎだす愛らしい物語。(文庫表紙裏より)

表題の『炎上する君』を含めた8作の短編集です。

『炎上する君』は、高校時代の同級生である梨田と浜中、ふたりの女性が銭湯で、足が炎上している男の噂話をしているシーンから始まります。学生時代から個性的で、心無いあだなをつけられていたふたり。お互いしか信用できず、立ち止まっていたふたりの前に、足が炎上している男が現れて……。

大丈夫、君は素敵だよ。そう言われているような、力強さを持った本作。

又吉さんも帯で

「絶望するな。俺達には西加奈子がいる。」

と書いています。

足が炎上しているなんて、発想の奇抜さは秀逸です。文体も主人公ふたりの喋り方も個性的ですし、何より「炎上」しているのは、なんと足だけではないのです。
炎上の正体と、ふたりの結末を見届けてください!

他7作も「トロフィーワイフ」や「私のお尻」など、タイトルから気になる作品ばかり。

この物語の主人公は、自分かもしれない……そう思える作品が詰まった一冊です。

 

現実を受け止め生きる愛おしい人たち『地下の鳩』

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『地下の鳩』
文春文庫

大阪最大の繁華街、ミナミのキャバレーで働く「吉田」は、素人臭さの残るスナックのチーママ「みさを」に出会い、惹かれていく。(文庫表紙裏より)

「地下の鳩」と「タイムカプセル」の2編収録。表題の「地下の鳩」はプライドの高いキャバレーの客引きの吉田と、チーママのみさをが出会い惹かれあう。「タイムカプセル」は表題作に登場するオカマバーのママ、ミミィが起こしたある事件について描かれます。

西加奈子さんの小説の中では、他の作品とはテイストが異なる作品です。情けないヒモの吉田、食べては吐いてを繰り返す、右目と左目の大きさが違うみさを。大阪の繁華街ミナミを舞台に、必死に生きる人たちの描写がリアルで、現実を受け止めることがどういうことなのか、教えられるようです。

又吉さんは帯で

「鬱屈とした世界の中で一生懸命に生きようとする登場人物達は、僕にとってとてもまぶしい存在です。まっすぐで、不器用で、でも品があるんです。とても愛しく感じるんです。」

と書いていました。

わたしは、自分の中にある感情を、過去の出来事を、見透かされているようでドキリとしました。
だからこそ、彼らに共感できる部分があり、愛おしく思えるのでしょうね。

吉田とみさをは、現代を生きる『夫婦善哉』(織田作之助著)の蝶子と柳吉のよう。最後の一文を読んだ時、その意味がわかりますよ!

 

“アイ”のアイデンティティ『i(アイ)』

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『i(アイ)』
ポプラ社

「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる、ある「奇跡」が起こるまでは―。(単行本帯より)

主人公は、ワイルド曽田アイ。生まれはシリア、育ちはアメリカと日本。アメリカ人の父と日本人の母がいるけれど、アイは両親のどちらにも似ていません。なぜならアイは養子だから。

自分の存在について問い続けるアイ。しかし人には誰しも、想ってくれる人がいるものです。親友、家族、恋人、遠い国の誰か……たとえ自分は気づかなくても、この世界には誰かの「想い」が溢れていると感じる作品です。

又吉さんは帯でこのように書いています。

「残酷な現実に対抗する力を、この優しくて強靭な物語が与えてくれました。」

セクシュアリティやアイデンティティの問題も多く盛り込まれており、多様性の大切さを改めて考えさせられます。

私は本屋さんで1ページ開いて、冒頭の立ち読みをしてすぐ『i(アイ)』をレジに持っていきました。読む手を止める自信がなかったからです。

『i(アイ)』に出会ったら是非1ページ、めくってみてください。

 

謎が謎を呼ぶミステリー風『窓の魚』

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『窓の魚』
新潮文庫

温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。裸の体で、秘密の心を抱える彼らはそれぞれに深刻な欠陥を隠し合っていた。決して交わることなく、お互いを求め合う4人。そして翌朝、宿には一体の死体が残される――恋という得体の知れない感情を、これまでにないほど奥深く、冷静な筆致でとらえた、新たな恋愛小説の臨界点。(文庫裏表紙より)

2015年5月に行われた新潮文庫フェア「ピース又吉が愛してやまない20冊!」にも選出された一冊。

一般的に言われている「ミステリー」とは少し違いますが、ミステリーのエッセンスが盛り込まれた作品です。新しいミステリーといえるかもしれませんね。

又吉さんはこの作品を、帯で次のように書いています。

「静かに人の心の奥底を描き、読者の想像力を呼び起こしてくれる物語。」

温泉宿で起きた一夜の出来事を、4人それぞれの視点で、丁寧にじっくりと描いていきます。読んでいくうちに、同じ出来事を体験している4人の見え方がどれだけ違うのかということに驚くはずです。
自分が見えているものと、他人が見えているものは、同じだとは限りません。

多くの謎を宿した本書、「窓の魚」が意味するものとは……。
西加奈子さんの描く、水の中にいるような不思議な感覚に、どっぷり吞まれていきますよ。

 

西加奈子の全部が詰まった『サラバ』

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『サラバ』
(上下巻)
小学館

ひとりの男の人生は、やがて見たことのない軌跡を描いて、地に堕ちていく。だが、いまはまだ、その少し手前。サラバとは何か。その地下の途轍もなさにまだ少しも気づいてはいなかった。(上巻帯より)

2014年第152回直木賞を受賞、さらに2015年本屋大賞を受賞しました。
本屋に行ったなら、この表紙を一度は目にしたことがあるはずです。

主人公、圷歩(あくつあゆむ)の半生を描いた作品。
林真理子さん、角田光代さん、椎名林檎さん、朝井リョウさんも絶賛のコメントを寄せています。

主人公の圷歩はイランで生まれ、大阪に住んだのち、家族でエジプトに住むことになります。西加奈子さん自身、イランで生まれ、小学1年生から5年生までをカイロで過ごし、その後大阪で暮らしており、その経験が存分に生かされている作品といえます。
また、西加奈子さん初の長編小説であり、作家生活10周年記念作でもあります。

「西加奈子の全部がここにある。」

という又吉さんの帯はまさに『サラバ』を表した一言と言えます。

上下巻の目を引くカバーデザインは、なんと西加奈子さんが描いた16枚のイラストをコラージュしたものなんです!

自分の信じるものが何なのか、ちゃんと自分で決めてきたのか、と読んでいてはっとしました。
「出会えて良かった」「頑張ろうと思えた」との声が絶えない本書。

圧倒的な言葉の力を感じてみてください!

 

西加奈子さんの世界に触れてみる

独特の感性で綴られた言葉とリズム、そして人の内面を恐れることなく描き尽くす西加奈子さんの作品の登場人物に、自分を重ねる人も多いのではないでしょうか。
まだ読んだことのない方も、是非読んでみてくださいね。
立ち止まり足踏みしていた世界が、少し明るく見えるかもしれません。

この記事でご紹介した書籍
■『炎上する君』 角川文庫
■『地下の鳩』 文春文庫
■『 i(アイ)』 ポプラ社(単行本)
■『窓の魚』 新潮文庫
■『サラバ』(上下巻) 小学館(単行本)

西加奈子さんはこの10年で沢山の小説、エッセイなどを執筆しています。
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