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過去に映画化された村上春樹おすすめ小説


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「世界のムラカミ」と呼ばれ、世界中にファンを持つ日本人作家、村上春樹さん。あの名作「ノルウェイの森」が映画化された時は大変話題になりましたが、実はその他にも映画化されている作品があることをご存知でしょうか?

今回は、映画化された村上さんの小説から、おすすめの作品をご紹介します。

 

パン屋襲撃(『夢で会いましょう』に収録)

0015580879L『夢で会いましょう』
講談社文庫

1986年に発行された糸井重里さんとのショートショート集。

『夢で会いましょう』に収録されている「パン」が映画化されています。

「パン」はもともと他の文芸雑誌に「パン屋襲撃」というタイトルで掲載されたものであり、映画のタイトルは「パン屋襲撃」に戻っています。

この作品は村上さんの初期作品の中でも特に人気があり、のちほど「パン屋再襲撃」という続編が執筆されたほど。ちなみに「パン屋再襲撃」はメキシコとアメリカの合作でも映画化されています。

 

「パン屋襲撃」は、うだるような暑い夏の日、まる2日間何も食べておらず、水しか飲んでいない男性2人の話です。

神もマルクスもジョン・レノンも、みんな死んだ。とにかく我々は腹を減らせていて、その結果、悪に走ろうとしていた。空腹感が我々をして悪に走らせるのではなく、悪が空腹感をして我々に走らせたのである。なんだかよくわからないけど実存主義みたいだ。

(『夢で会いましょう』p158)

2人は空腹に耐え切れず、包丁を持ってパン屋を襲撃することになったのですが……?

また「パン屋再襲撃」は、「パン屋襲撃」の男性2人のうち1人が結婚し、妻にパン屋襲撃の話をしたことから物語が始まります。

この夫婦はのちに、村上さんの長編作「ねじまき鳥クロニクル」にも登場します。村上さんファンであればぜひ読んでおきたい一冊です。

村上さんが、あとがきで「どうしてこんな変な話を思いついたのか、今となっては記憶が辿れない」と記しているほど、一度読んだら忘れられないユニークな設定に、つい感心させられることでしょう。

 

4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて
(『カンガルー日和』に収録)

0015163051L『カンガルー日和』
講談社文庫

1983年に単行本が発行された短編集。

『カンガルー日和』に収録されている18作品のうち「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」が映画化されました。

本作は、4月の晴れた朝、歩いていると100%の女の子とすれ違った男性の話です。村上さんが、山手線の車中で、広告ポスターのモデルの女の子に惹かれた経験をきっかけに、執筆されました。

四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う。

たいして綺麗な女の子ではない。素敵な服を着ているわけでもない。髪の後ろの方には寝ぐせがついたままだし、歳だっておそらくもう三十に近いはずだ。しかし五十メートルも先から僕にはちゃんとわかっていた。

 

彼女は僕にとっての100パーセントの女の子なのだ。彼女の姿を目にした瞬間から僕の胸は不規則に震え、口の中は砂漠みたいにカラカラに乾いてしまう。

(『カンガルー日和』p19)

今となっては懐かしい話ですが、十代の頃、わたしも本作に影響され「100パーセント」の相手に出会えることを心待ちにしていました。

いくつになっても心を動かされる、とてもロマンティックな短編小説ですよ。

 

 

トニー滝谷(『レキシントンの幽霊』に収録)

0012882905L『レキシントンの幽霊』
文春文庫

1996年に単行本が発行された短編集。

『レキシントンの幽霊』に収録されている7作品のうち「トニー滝谷」が2005年に映画化されました。

ある日、村上さんは古着屋で面白いTシャツを見つけたといいます。レモンイエローの派手な色のTシャツに、白地で胸に書いてあったのは「Tony Takitani House」。値段はたったの1ドル。

Tony Takitaniとは誰なのか、そもそもこのTシャツは何なのか……?村上さんは、このTシャツからインスピレーションを得て、イマジネーションをふくらませ、「トニー滝谷」という人物を創り上げました。

本作は、トニー滝谷の一生を描いた話です。トロンボーンのプレーヤーである父とは、2年か3年に一度顔をあわせるだけ。母はトニー滝谷を出産して数日後に亡くなっており、孤独に生きてきたトニー滝谷でしたが、ある日、運命の女性に出会い結婚します。彼女は15も歳下であったものの、優秀な女性でした。たった ひとつの”癖”を除いては。

それは妻があまりにも多く服を買いすぎることだった。洋服を目の前にすると、彼女はまったくと言っていいくらい抑制がきか なくなってしまった。一瞬にして顔つきが変わり、声まで変わってしまった。

(中略)

一度妻のいないときに、その服の数を勘定してみた。彼の計算によれば、毎日二回着替えをしても、全部の服を着こなすのに二年近くかかった。それはいくら何でも数として多すぎる。どこかで歯止めをかけなくてはならない。

(『レキシントンの幽霊』p130-132)

そう、妻はあまりにも多くの服を買いすぎるのでした。それから2人の関係は変わっていきます……。

また、本書では触れられていませんが、「トニー滝谷さんは、実際に存在する人間だった」とのちほど村上さんは語っています。古着屋で売られていたTシャツは、トニー滝谷さんが衆院選に立候補したときのキャンペーンTシャツだったのだそうです。

 

村上春樹のルーツを探ろう

今回紹介した作品は村上さんの初期作品として名高いものばかり。村上さんのルーツを探るのにいかがでしょうか?気になったものがあればぜひ読んでみてくださいね。

今回ご紹介した本

■パン屋襲撃
⇒『夢で会いましょう』(講談社文庫)に収録
■4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて
⇒『カンガルー日和』(講談社文庫)に収録
■トニー滝谷
⇒『レキシントンの幽霊』(文春文庫)に収録

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。