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乱歩を知る! 珠玉の傑作短編集「江戸川乱歩傑作選」


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2015年で没後50周年を迎えた江戸川乱歩は、推理小説、幻想小説、怪奇小説、児童小説など様々な作品を生み出してきました。

『江戸川乱歩傑作選』は、そんな江戸川乱歩の傑作短編小説を集めた作品です。本作は江戸川乱歩という作家を知るためにはこれ以上ない作品であり、江戸川乱歩を読んだことのない方に、お勧めしたい一作となっています。

 

『江戸川乱歩傑作選』とは

江戸川乱歩傑作選』 / 江戸川乱歩(著)、新潮文庫

この小説には九編の短編作品が収録されています。収録されている作品は、乱歩が得意とする推理小説から怪奇小説など様々です。

本作の短編は大きく分けて、三つに分類することができます。一つは江戸川乱歩が生みだした名探偵明智小五郎が登場する作品。一つは推理作家江戸川乱歩の才能を伺い知ることのできる推理小説。そしてもう一つは、怪奇小説と呼ばれるような不気味な作品です。

 

明智小五郎が登場する作品三編

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本作には明智小五郎が登場する作品が三編収録されています。

・強盗殺人事件を心理テストによって解明し、犯人の自白を促す『心理試験』
・明智小五郎が古書店で起きた殺人事件の犯人だと疑われる『D坂の殺人事件』
・天井裏から他人の生活を覗き見する男の話『天井裏の散歩者』

これら三つはそれぞれ読み味が違い、『心理試験』は、犯人視点から語られるいわゆる倒叙物ミステリーで、真相は序盤から明らかです。それを明智がどのように解決するのかという点が楽しい作品となっています。

『D坂の殺人事件』は、とある殺人事件の真相を推理する「私」の話です。「私」の推理では、明智が犯人だという説がどんどん濃厚になっていきます。そして明らかになる意外な真相。そこが面白い作品です。

最後に『天井裏の散歩者』ですが、これは乱歩が得意とする怪奇小説の趣が混ざった作品となっています。天井裏から他人の生活を覗き、ほくそ笑む犯人がある日、とある殺人計画を思いつく話です。そしてそこに同じ下宿に住む明智が絡んできて、話は展開していきます。この話は、天井裏を散歩する男の心情が面白い作品となっています。

明智小五郎の初登場作品は『D坂の殺人事件』です。ちなみに『心理試験』も『天井裏の散歩者』も初期の作品ですので、明智という探偵を知るためには押さえておきたい、おすすめの三篇です。

 

二編の推理小説

本作には、明智小五郎作品以外で二編の推理小説『二銭銅貨』と『二廃人』が収録されています。『二銭銅貨』は、盗まれた給料袋の行方を追う話となっていて、『二廃人』は、二人の老人の告白から、過去のとある真実が浮かび上がってくる物語です。

『二銭銅貨』は、乱歩のデビュー作品でもあり、乱歩の原点です。暗号ありどんでん返しありのオーソドックスな推理小説といった趣の作品です。

一方『二廃人』は、廃人となってしまった二人の老人が過去にあった出来事を語り、それが意外な結末に繋がる話となっています。こちらの作品はミステリー的な部分よりも、老人二人の哀愁溢れる語りが面白い作品です。

乱歩作品の特徴の一つには、人間の普遍的な感情が魅力的に描かれているという点があります。『二廃人』はそういった魅力が随所に溢れている作品です。

 

恐ろしさと生々しさが描かれた四編

江戸川乱歩は、明智小五郎作品少年探偵団シリーズなど大衆向けの推理小説や児童小説を数多く発表していますが、一方で、怪奇小説と呼ばれるような不気味で生々しい作品も数多く執筆しています。本作にもそういった趣の作品が四編収録されています。

・壁や机など部屋一面が深紅に染まった部屋に集まった七人の奇妙な会合を描いた『赤い部屋』
・女性作家の元に送られてくる手紙と椅子の話『人間椅子』
・鏡に魅入られた男の話『鏡地獄』
・戦争によって四肢を失い、五感の多くを失った男とその嫁の物語『芋虫』

『赤い部屋』は、自分が直接手を使わずに人を殺す人間の話で、『人間椅子』は女性作家の熱烈なファンの行き過ぎた行動がおぞましい話となっています。この二編はどちらもどんでん返しが用意されていて、エンタメ性が高い物語です。

一方、『鏡地獄』と『芋虫』はどちらかといえば、エンタメ性よりも文学性が強く、異様な生活を送る登場人物にスポットが当たった物語です。病的なまでに鏡に魅入られた男と、一人では何もできなくなってしまった男。彼らの話は奇妙で生々しく、思わず眉をひそめてしまう話となっています。

 

まとめ

以上が江戸川乱歩傑作選です。
江戸川乱歩という名前を聞いたことはあるけれど、小説を手にとったことはないという方も多いのではないでしょうか。そういった方は是非この記事を参考にしてみてください。

乱歩の書く文章は心情描写が豊かで非常に読みやすいため、普段本を読み慣れていないという方にもお勧めです。ちなみに、わたしのイチオシは『人間椅子』と『芋虫』です。

ご紹介した書籍
江戸川乱歩傑作選』 / 江戸川乱歩(著)、新潮文庫

江戸川乱歩をはじめ、「わかっているのに読みたくなる……」そんな本を集めました。

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ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。