ブックオフオンラインコラム
ブックオフオンライントップへ
ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > 小説(テーマ別) > 現実逃避するならフィクションの世界へ。おすすめ幻想小説3選

現実逃避するならフィクションの世界へ。おすすめ幻想小説3選


20160614-genjitutouhi-fantasynoveltop

「こんな現実にはうんざりだ!」

なんて誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。そしてそう思ったとき、あなたはどうしますか?

わたしは本を読み、フィクションの世界に浸ります。もっと言うと、非日常を描いた幻想的な作品を読みます。それというのも、現実を想起させるような作品より、現実離れした話を読んだほうが現実を忘れることができるからです。

そこでここでは、現実逃避マスターであるわたしが選書した現実を忘れさせてくれるだろう幻想的な小説を三作紹介していきます。

一時的に現実から目をそらしたい方、現実にうんざりしてしまった方、よろしければ参考にしてみてください。

 

『夜市』 / 恒川光太郎(著)

20160614-genjitutouhi-fantasynovel1

~あらすじ~

妖怪たちが不思議な品を売る市場「夜市」。ここでは望んだものが何でも手に入ります。それは何も「目に見える物」に限りません。例えば「若さ」。例えば「才能」。そういったものが「夜市」では手に入れることができます。

大学生のいずみは、高校時代の同級生である祐司に連れられ、「夜市」へやってきます。そこで祐司から、以前にも夜市にやってきたことがあると告白されます。その時、祐司が夜市で買ったものは「野球の才能」。そして対価として払ったのは弟でした。

祐司が今日、夜市を訪れたのは、弟を買い戻すため。そして弟を買い戻すために使う対価は――。


ファンタジーホラーの傑作――

本作は、日本ホラー小説大賞受賞作である「夜市」の他に、「風の古道」という中編小説も収録されています。

「夜市」は、妖怪たちが店をかまえる市場での話。おどろおどろしい導入からは想像もつかない感動的で切ない結末が待っています。

「風の古道」は、小学生が異界へつながる不可思議な道に迷い込み、その道から抜け出すために冒険する話です。

幻想的で美しい文体で綴られる二つの作品。どちらも映像を強く喚起するようなそんな物語となっています。

現実とは違う異界での話。読むと日常から飛翔することができるような、そんな話です。

■『夜市』 / 恒川光太郎(著)、角川ホラー文庫

 

『オーデュボンの祈り』 / 伊坂幸太郎(著)

isakakoutarou-pickup5

~あらすじ~

『カカシが喋るなんて事実を受け入れろと言われても難しかった。しかも未来を知っているなどと言われて、うなずけるのは、能天気な子供くらいだ。(p33)』

悪魔のような警察に追われていた伊藤は、その逃走中、轟という中年に助けられ、「荻島」という地図にない島へ連れてこられます。「荻島」は外界と交流のない孤島。

そこにはあらゆる不思議が満ちていて、「未来予知をする喋るカカシ」、「殺人を許されている男」、「思ったことと反対のことしか言わない男」などなど、普通では考えられない物や人が当たり前のように存在しています。

そんな折、未来予知するカカシが何者かに“殺され”ます。島民にとっての指針だったカカシ。それがいなくなり、島民の誰もが困惑し、そして何より悲しみます。なぜカカシは殺されてしまったのか。カカシは自らの死を予知することができなかったのか。伊藤は、その謎を追っていきます。


荻島という不可思議な島での話――

本作は、新潮ミステリー倶楽部賞受賞作で、伊坂幸太郎さんのデビュー作でもあります。話の設定だけを見るとファンタジーですが、本作はミステリー作品としての側面を持っています。「不思議な島民たちの謎」や「カカシがバラバラにされた理由」など、魅力的な謎が話を牽引していきます。

ただ、本作の魅力はそういった謎の他に不可思議な島が放つ独特の雰囲気にあると思います。

一般人が迷い込んだ不思議な島の物語。読んでいると現実世界を忘れさせてくれるようなそんな作品となっています。

■『オーデュボンの祈り』 / 伊坂幸太郎(著)、新潮文庫

 

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 / 村上春樹(著)

20160614-genjitutouhi-fantasynovel2

~あらすじ~

並行して語られる二つ物語。生物学者である老人から、とある依頼を受けた「私」が語る「ハードボイルド・ワンダーランド」。高い壁に囲まれた街で暮らす「僕」の物語、「世界の終わり」。二つの世界の話が交互に語られ、物語は展開していきます。

・ハードボイルド・ワンダーランド
計算士という暗号を取り扱う仕事に従事している「私」は、ある日、生物学者の「老博士」から一つの依頼を受けます。家に戻り、仕事にとりかかったその翌日、一本の電話がかかってきます。相手は「老博士」の娘。なんでも「老博士」が「やみくろ」に襲われたとのこと。

そんな折、「私」の前に現れる二人の男。「私」はその男たちから理由も告げられず、部屋を荒らされ、腹部を刃物でえぐられてしまいます。いったい男たちは何者なのか。

男たちから襲われたその夜、「老博士」の娘が「私」の家を訪ねてきます。そして「私」とその娘の冒険がはじまります。

・世界の終わり
外界から隔絶され、高い壁に囲まれた「街」。記憶を失った「僕」は、その街で、「夢読み」という仕事が与えられます。「夢読み」とは、一角獣の頭骨から、古い夢を読みとく仕事。その仕事をこなす傍ら、「僕」は街の地図を作り、また、街の謎を追っていきます。


難解でありながら、すらすらと読み進めることのできる不思議な作品――

本作は村上春樹さんの初書き下ろし長編作品です。村上春樹作品特有の幻想的で退廃的な雰囲気は本作でも漂っています。特に「世界の終わり」の話はファンタジーの趣が強く、幻想的な雰囲気がより色濃くなっています。

本作は非常に難解な小説であるのが特徴で、一度読んで全てを理解することは困難です。ただ内容は難解でありながらも、文体は平易。そのため、読み進めていきやすい作品となっています。

さらにその適度な難解さ故か、一度読むと理解するためにまた読み返したくなってくるようなそんな小説となっています。

村上春樹さんが自伝的な作品と位置付けている本作。これから村上春樹作品を読もうと思っている方に強くお勧めしたい一作です。

■『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 / 村上春樹(著)、新潮文庫

 

まとめ

三作はどれも非日常を描いた不思議な読み味の作品となっています。現実にうんざりしてしまった方は、これら作品を読んで、心を癒し、また現実に戻っていくことをお勧めします。

そしてまたうんざりしてしまったら、フィクションの世界に戻ってくればいいのです。わたしはそうします!

【おすすめ関連記事】

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。 先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。