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読書術のあれこれ


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読書のやり方にはそれぞれやり方があることと思います。
私もがむしゃらに本を読み散らかしているうちに、いくつか我流の読み方を取得してきました。このコラムでは、幾多の失敗を重ねた末に行き着いた、読書についての私の経験則や工夫をまとめてみました。個人的な意見ですので、批判的な目で読んでいただければ幸いです。

 

1.読書環境

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読書をするにはまず環境から。

・ベッドで読書はダメ!

昔から、眠れないときには羊を数えるか、難しい本を読む、というのが定跡となっています。つまり、ベッドで本を読もうとするのは、人間の睡眠本能に逆らった無茶な行為です。本を読むときはやはり、座って読むのが一番です。

・あまり雑音にこだわらない

読書の環境は、静かなところがベストですが、たとえうるさい場所でも、人間の脳は視覚的に集中すると雑音をカットできるようにできています。(という内容の論文がロンドンの大学から提出されました。)ですから、外出先で時間があったら、決して満足のいかない環境であっても、あえて読書をするべきです。筆者は電車では必ず本を読みますが、慣れてくると雑音があるほうが、むしろ集中できるように感じます。リビングのほうが勉強に集中できる、というのと似ているかもしれません。

・読書時間を確保するために多少の犠牲は覚悟する

読書というのはコストのかかる営みです。読書に時間を費やすのであれば、TVや映画、メールチェック、人付き合い、ネットサーフィンなどに使う時間を削り、読書時間に転化しなければなりません。読書よりもTVや映画、人付き合いのほうが有益であると考えるならば、話は別ですが、人間、たいてい読書よりかは無駄なことに時間を費やしているものです。

・本選びは慎重に

多読、濫読に警鐘を鳴らしたヴィトゲンシュタインの意見として「読まずにすます技術が重要」というものがあります。先ほど述べたように、読書は、TVや映画などのほかの潜在的に有益な活動を犠牲にしますから、質の悪い読書は有害です。

有益な読書をするには、いかに良い本を選ぶかが重要です。まだ読んでもいない本を選ぶわけですから、本選びには困難がつきまとうわけですが、現代は幸いなことに、本の判断基準となる情報はたくさんあります。筆者がよく参考にするのは、月並みですが書店サイトのレビューです。もちろんネットの性、玉石混交、トンデモレビューもありますが、真摯に書かれた大変参考になるレビューも多いです。(このあたりネットリテラシーが問われます。)もちろんTwitterや書評サイトも見ておいて損はありません。

複数の出版社が出版している古典の場合、使用テキスト、翻訳の質、活字サイズ、紙質といったことが判断基準となります。翻訳は基本的に新訳のほうが正確度は増しますが、必ずしも読みやすく達者な訳とは限らないので、何ページか読み比べて相性のよい訳を選ぶ必要があります。

また、選ぶ本は興味のある本がよいと思います。私も、背伸びした本(岩波文庫の白帯本とか)を一生懸命読んできましたが、やはり記憶への定着が悪く、実りのある読書とはなりませんでした。あせらず、今自分にとって意義のある本から読んでいくべきでしょう。

 

2.読書の技法

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実際に読み進めるにあたってのtips(小技)を紹介します。

・一度に複数の本を並行して読む

いわゆる並行読書というものです。一つの本が読み終わるまで次の本に移らない、という姿勢とは対照をなす、常に複数の本を読み進める読書法を言います。並行読書を実践していた人物として有名なのが小林秀雄。小林秀雄は学生時代、学校の行き帰りに電車の中で読む本、教室でひそかに読む本、家で読む本を区別し、並行して読み進めたと書いています。

並行読書の利点は、気分転換の時間も読書に費やすことができることにあります。仮に、1冊しか読んでいなかった場合、その1冊が煮詰まった場合、読書以外のことに気分転換を求めることになりますが、これでは読書が習慣にはなりません。
一方、複数の本を読み進めていれば、片方の本が飽きたら別の本を、といった塩梅に、読書を続けることができます。さらには、複数の本の内容を自然と覚えられるようになり、脳トレにもなります。

同時に読み進める本は、ジャンルの異なる本でもいいですが、なんらかの関連のある本をチョイスすると、読み進めやすいだけではなく、一つの話題に関して色々な見方を有機的に学べる、というメリットがあります。難しい本と気楽な本、硬軟入り交ぜて、気分転換ができるようにしておくのがコツです。

並行読書法と同じような意味で「積ん読」は決して悪い習慣ではありません。「積ん読」していれば、「読みどき」が来た本をすぐに読むことができますからね。

・わからなかったら遠慮なく寝かす

読む本、読む本すべて理解できるならば、読書は必要ありません。読書の目的はわからない本に出会うことにもあります。わからなかったらその本は潔く諦めて、「積ん読」リストに追加して、機が熟するまで寝かしておきます。大丈夫、本はいつまでもあなたを待っていますよ。

・メモをとる

読書で気をつけなくてはならないのが、受動的読書に陥ることです。積極的に読書に関わる最善の方法は、メモを取ること。知らない語彙があったら辞書を引く、人物関係の略図を書く、キーワードをチェックするといったことです。私は本に書き込みできないたちですが、気にならなければ書き込むのがベストだと思います。

・ちょっとずつ読む

人間の集中力などたかが知れているものです。個人的な意見ですが、一気に読みきるよりも、章ごと、30分ごとといったように、細かく分けて読むのがオススメです。ただし、一冊を読みきるのに1ヶ月以上かかると、読書の一貫性が失われ、全体の筋を見失ってしまうのでほどほどに。

・色んな読み方を駆使する

本を読む時には、どうしても一字一句漏らさず読みたくなるものですが、場合によっては大雑把なリーディングは必要です。たとえば、本の内容をマクロ的に掴みたい時にはいわゆるスキミングや読み飛ばしは有効です。有名どころでは、サマセット・モームが、読み飛ばしをして自分に興味のある場所だけを読むという読書スタイルを取っていました。

私は、速読はできませんし、速読の効果に対しても懐疑的です。実際、読書スピードと理解度に負の相関関係がある、という研究もあるようです。しかし、たとえ理解度が落ちても速読ができる、ということはアドバンテージになると思います。というのも、本のなかには精読する必要のないパッセージもあるわけで、そういった場所に出くわした時に、速読でさらっと読み進められるという技術が必要になるからです。メルヴィルの『白鯨』などは、速読が大活躍する本の一例でしょうか。

 

3.読後編

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読み終わったら、読書体験を定着させるためにいくつかコツがあります。

・再読が必要か評価する

読み終わったら理解度に応じて再読が必要か評価します。再読の評価は理解度の評価、すなわち「無知の知」に属するため難しいですが、自分の言葉で本を要約し、人に伝えられるか、が目安になります。私は再読が必要だと判断した場合、その本は本棚の再読コーナーに置いています。一方でもう読まないだろう、と思った場合は「売却棚」行きです。

年間読書数をスポーツの記録のように掲げる風潮のなか、再読はあまり顧みられませんが、やはり重要なことだと考えています。名著ほど、一度の通読では汲みつくせぬ含蓄を持っているものです。私の経験上、再読すると全体構造と細部の関係がわかり、本のエッセンスがつかめることが多いです。

・アウトプットする

読んだ内容は、外に出さないとすぐに忘れていきます。アウトプットの手段はたくさんありますが、SNSが便利です。たとえばTwitterで感想をつぶやくのです。他人に伝えるとなると、本の内容を自分の言葉に咀嚼する必要がありますし、Twitterなら、読書ログの代わりにもなります。ほかにも、読書管理サイト、書店サイトのレビュー、友人、日記など、アウトプットの手段はたくさんあります。

 

おわりに

読書のやり方は人それぞれです。色々な人が紹介している読書術を総合勘案して、自分にぴったりのやり方を見つけるのが一番です。最後にエッカーマン『ゲーテとの対話』からゲーテの言葉を。

「気のいい人たちは、読むことを学ぶのにどれくらい時間と骨折りがいるものか、知らない。私はそれに八十年を費やしたが、今でもまだ目ざすところに達したとは言えない。」(高橋健二訳)